2022年09月23日

オンライン会議、在宅勤務で構造設計者の生産性が下がった!

 新しい働き方として、オンライン会議、在宅勤務が増えました。私達、構造設計者の生産性は上がったのでしょうか?
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無駄なオンライン会議が増えた


 打合せ、会議のための移動時間が無くなるのは良いことです。会議室、打合せスペースが不要になることもメリットです。

 しかし、気が付いてみると打合せ、会議が増えた。





 今までは「今回の打合せは構造に関係する話は少ないし、わざわざ来てもらうのは申し訳ないから、参加しなくて結構です。」と言った打合せにも、「オンライン会議だから、取り敢えず呼んでおこう」となり、打合せ、会議が増えています。

 結局、1時間の打合せで一言しか話さなかったと言うことも少なくありません。

 カメラをオフにして、別の仕事をする事も出来なくありませんが、集中できず、業務効率は上がりません。中には「カメラをオンにして、お互いの顔が見える形で打合せしましょう」などと余計なことを言う人も。。。

 元々、クライアント、意匠、構造、設備が集まって行う打合せでは構造に関する話は少なく、聞いているだけの時間が長いものでした。そのような会議がオンライン会議により、増えました。オンライン会議によりにより、気が付けば、作業をする時間が減り、生産性が下がっています。

 オンライン会議のメリットとして、資料、図面を画面に共有できることがあります。その図面に書き込むことも出来ます。しかし、だいたいは一方が書き込むだけ。ペンタブレットを使ったもスムーズにスケッチは描けません。やはり、対面で紙の図面を置き、打合せを行った方が精度があがります。

 また、最悪なのは対面の打合せに自分だけオンラインで参加する打合せです。対面で集まっているメンバーは図面を広げ、「ここが。。。」と図面を指で指して、打合せをします。オンラインで参加している自分は全くわかりません。オンラインで参加している一人のために全てを画面上で行うのも遣りづらい。





在宅勤務で電話が増えた


 在宅勤務により電話が増えました。メールやチャットでも良いのですが、どうしてもタイムラグがあり、早く結論を出したい場合はそれぞれの携帯電話でのやり取りとなります。
 今まで、ちょっとした社内の会話なら、業務をしながら、行えば良かったものが、いちいち、手が止まることになっています。
 たちの悪い上司だとちゃんと仕事をしているかの確認のために多くの電話をしてくる人も居ます。だったら、会社に行くよとなってしまいます。

 在宅勤務の一番のメリットは通勤時間がなくなることです。ではこれが生産性向上に繋がるかと言うと関係ないでしょう。通勤時間を業務時間に充てれば一日に仕事が出来る時間は増えます。しかし、企業側、雇う側からすると業務は進むが残業時間(人件費)も増えることになります。

 単位時間当たりの生産性では、やはり、業務環境の良い事務所の方が上でしょう。

有料のオンライン講習は。。。


 各種の講習会もオンラインが増えました。打合せ、会議とは違い、一方的に聞いているだけの講習はオンラインの方が良いでしょう。
 しかし、普段、無料でYouTubeを見ている私達からするとオンラインで費用がかかる事にやや抵抗感も。。。
 また、事務所又は自宅でのオンライン講習となるとどうしても他の仕事をしながらとなってしまう事があります。このようなやり方は一見、効率が良いようで講習をほとんど聞いていないとの事になっています。

構造設計者は対面の打合せ、事務所業務を重要視すべき!


 オンライン会議では打合せがやりづらいと感じている意匠設計者も多いでしょう。私達、構造設計者は意匠設計者から仕事を請けます。対面の打合せを拒むようでは仕事がなくなってしまうでしょう。良い建物を作るには積極的に対面での打合せを心掛けましょう。
 また、打合せテーブルに付いているアクリル板はもう不要ではないですか?せっかくの対面打合せなのに一枚の図面を共有出来ません。

 在宅勤務も減らし、会社・事務所に行くようにしましょう。通勤時間に様々な建物を見たり、建設現場を覗いたりするのは設計者にとって、大事なことです。通勤時間の無駄ではありません。
 もちろん、オンライン会議、在宅勤務にもメリットはあります。対面、出勤を基本とし、上手くオンライン会議、在宅勤務(テレワーク)を使うことが良いでしょう。








posted by 建築構造設計べんりねっと at 10:39| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム

2022年08月19日

『サザエさん』磯野家を最新耐震基準で構造設計をしてみた。B〜構造計算プログラムに入力する

 いよいよ、磯野家を構造計算プログラムで構造計算します。使用するプログラムはKIZUKURIです。

偏心率がNG!


 平屋建てで間崩れもないので入力は簡単です。もちろん、建築主は磯野浪平様。
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 入力が完了し、計算を流してみたら、偏心率がNG!水平構面がアウト!のメッセージが。
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 Y方向偏心率が0.474となっており、このままでは建築基準法上、木造は不可となってしまいます。西側に耐力壁が偏在していることの影響です。水平構面がアウトになっているのも、この耐力壁の影響です。
 まずは偏心率と水平構面の調整を行うこととします。

プランの改善提案を行う。


 壁量については十分に余裕があるので西側外壁の合板耐力壁を一部、耐力に見込まないとの方法もありますが、数字のお遊びになってしまうので別の方法を考えます。重心位置は建物形状に依存するため、調整は出来ません。となると建物東側に耐力壁を増やすしかありませんが、全体的に壁量が増え、不経済です。

 そこで以下の提案を行い、改善を行う事とします。

・浴室の北側の開口を西側に移動する。
 この部分の開口は台所の勝手口の隣にあります。この勝手口は三河屋のサブちゃんも利用するのです。ワカメちゃんがお風呂に入っている時に覗かれてしまう恐れがあります。意匠的にも浴室の開口は西側にあった方が良いでしょう。

・トイレに開口を追加する。
 トイレも換気のための開口があった方が良いでしょう。


 結果はY方向偏心率が0.299とギリギリですがクリアしました。水平構面についてはまだ、Y方向がアウトです。また、北面に耐力壁を増やしたことでX方向もアウトになってしまいました。

 これは内部に耐力壁を追加し、調整する事とします。
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磯野家、上部構造設計完了!


 残りはKIZUKURIの自動計算で構造計算完了です。

【屋根伏図】
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【梁伏図】
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※梁幅は105mm

 柱は全て105×105(ホワイトウッド集成材 E95-F315)、金物はコチラになります。

 これで上部構造の設計が完了です。必要な耐震性に対し、1.4倍の余裕がありますので、これでサザエさん一家も安心です。

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posted by 建築構造設計べんりねっと at 07:53| Comment(0) | TrackBack(0) | レポート

2022年08月18日

『サザエさん』磯野家を最新耐震基準で構造設計をしてみた。A〜略伏図、壁量計算

では早速、構造計算の作業に入ります。まずは略伏図の作成と壁量計算です。




略伏図の作成


 磯野家は平屋なので上下階の形状を考慮しなくて済むので簡単です。

≪梁伏図≫
梁伏図サザエ.png

≪屋根伏図≫
屋根伏図サザエ.png

 私が入手した平面図によると南側の縁側部分は7,280mmの開口となっています。7,280mmを梁で飛ばすか、1,365mmの片持ちで受けるか。。。サザエさんの映像を探すとこの部分には柱がある画像を見つけましたので柱を建てる事としました。

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 浪平・舟の部屋と客間の間も4本引きの襖となっているので柱を建てられません。屋根梁はX方向に流す形になるので、この部分の梁も若干、きつくなるでしょう。

【POINT】
・モジュールに合わせ、建物の角、壁の交差部及び端部及び開口部の際には柱を配置する。
・壁内においては柱を1820mm以内で配置をする。
・壁位置に合わせ、梁を配置する。
・屋根形状を考え、小屋束の位置に梁を配置する。


壁量計算


 次に(46条)壁量計算を行います。最終的には構造計算で決定しますが、構造計算プログラム入力の仮定として、壁配置を仮に決めます。

床面積 :108.1u
見付面積:X方向 23.25u
     Y方向 49.45u

 屋根は瓦葺(重い屋根)ですので、床面積に対する壁率は15cm/u、東京都世田谷区は暴風地域ではないので見付面積に対する壁率は50m/uであり、必要壁量は以下になります。

(必要壁量)
X方向:16.21m
Y方向:24.73m

必要壁量計算書



 外壁は合板耐力壁(2.5倍)としますので、まず、耐力壁となる外壁部分の壁量を計算します。壁量を合計すると以下になります。外壁部分だけで壁量が足りてしまう結果になってしまいました。平屋だとこんなものでしょう。
 Y方向については耐力壁壁線間隔がやや大きいので内部に筋交い耐力壁(4.0倍)を1箇所配置しました。

(存在壁量)
X方向:22.75m
Y方向:43.68m

≪耐力壁配置≫
耐力壁配置サザエ.png

 磯野家は玄関が東側であり、西側に耐力壁が偏っている状態になっています。平面的バランスについては構造計算で確認することとします。

【POINT】
・外壁の開口以外の部分はモジュールに合わせ、原則全て構造用合板による耐力壁を設ける。
・建物内部の耐力壁は筋交いを使用し、構造用合板による耐力壁は設けないものとする。
・耐力壁線が8m以内となるように耐力壁を配置する。



 次回からはいよいよ構造計算プログラムKIZUKURIによる構造計算となります。
タグ:木造
posted by 建築構造設計べんりねっと at 10:20| Comment(0) | TrackBack(0) | レポート