
このような施工不具合に対する対応方法をマニュアル化、基準化しようと考えた人、会社は少なくありません。しかし、このようなものを作成すると失敗を許容しているとの批判を受けてしまうこと、また、良心から作成を行ってきませんでした。考えようによっては、これらも技術です。建築構造設計べんりねっとでは構造躯体工事に絞り、施工不具合に対する対応マニュアルを作成しようと思います。
どのようなものを作成するかの事例として、第一弾、以下を作成します。
鉄骨造アンカーボルト高さが低くなってしまった場合
鉄骨造のアンカーボルトは通常、ダブルナットとします。そして、JASS6では「アンカーボルトの余長はねじ山が外に3山以上」となっています。
このアンカーボルトの高さが予定よりも低くなり、ダブルナットとするとねじ山が外に3山以上が確保できない場合の対応方法を解説します。
アンカーボルトの基準は施行令第66条で「構造耐力上主要な部分である柱の脚部は、国土交通大臣が定める基準に従つたアンカーボルトによる緊結その他の構造方法により基礎に緊結しなければならない。」と定められています。国土交通大臣が定める基準とは告示1456号であり、「(露出柱脚にあっては)アンカーボルトには座金を用い、ナット部分の溶接、ナットの二重使用その他これらと同等以上の効力を有する戻り止めを施したものであること。」となっています。
まず、柱脚の形式が根巻き形式柱脚、埋込み形式柱脚の場合はこの規定は対象外となります。これらの形式の柱脚の場合のアンカーボルトは建方用(コンクリート打設まで位置を保持する目的)なので、ダブルナットである必要はなく、3山以上確保の不要です。
対応方法としては以下の2通りの方法があります。
@ナットを溶接する
ダブルナット(ナットの二重使用)は告示にある通り、戻り止め(ナットの緩み止め)が目的です。そして、
告示ではナット部分の溶接も認められています。溶接する部分はナットと座金を溶接します。尚、溶接方法については明確な基準がありませんが、戻り止め(緩み止め)が目的ですので強固な溶接までは不要でしょう。
Aナットサイズを小さくする
二つ目のナットを高さが小さいものに変える方法もあります。これは建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)のホームページで紹介されています。
https://sasst.jp/qa/q6/q6-6.html
アンカーボルトとしての強度を確保するナットは一つ目のナットであり、二つ目(上側)のナットは戻り止め措置です。よって、高さいの小さいナットを使用することで「ねじ山を外に3山以上確保」が出来れば、この方法もあります。
Bアンカーボルトをベースプレートに溶接する
日本建築学会「鉄骨工事技術指針・工事現場施工編」ではアンカーボルトをベースプレートに溶接する方法も記載されています。ベースプレートに開先を取り、完全溶け込み溶接とする事になりますので現実的には難しいと考えます。
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