Z世代の若者はタイパを意識していると言われています。仕事、構造設計に対して、考えると効率良く設計作業を行うことになるので非常に良いことです。ある建物を構造設計するのにかかる時間が半分になれば、設計事務所であれば2倍の売上となります。
タイパの良い構造設計のやり方を考えます。
Z世代の仕事振りから学ぶ
タイパの良い構造設計を考えるにあたり、まず、タイパを意識すると言われているZ世代の仕事振りを参考にします。
Z世代とは一般に1996〜2015年生まれで年齢は29歳以下です。構造設計業務の効率には技術力、経験が不可欠ですが、さすがにベテラン社員よりもレベルが高いとは言えません。Z世代の特徴としては以下が言われています。
- インターネット、スマートフォンが普及した環境で育っているのでデジタル技術に精通している。
- 個々人の「自分らしさ」を大切にし、多様性を受け入れる。
- SNSなどのデジタルツールを活用して情報収集するのが日常的である。
この特徴を踏まえて、考えます。
@メール、チャットによるコミュニケーション
仕事上のコミュニケーションで電話や直接の会話ではなく、メールやチャットを多様する傾向があると思います。直接、話したほうが結論が速く出るとも思いますが相手や自分の作業を止めることなく、コミュニケーションすると言う意味ではタイパが良いのでしょう。
また、打合せについてもオンライン(teams、Zoom)が多い。同じ社内でも自席でオンラインの打合せをしてる。資料の共有が便利なようだ。私的には同じテーブルで図面を広げ、スケッチしながら打合せをした方が伝わるかと思うが。
A分からないことがあったらネット検索
仕事で分からないことがあったら、学会指針などを調べるのではなく、まず、ネットで検索してる。さすがにX(旧Twitter)で構造設計に関する情報はない。
もちろん、ネットの情報には間違っているものも少なくない。しかし、彼ら彼女らもそんなことは知っている。何故なら、その事を学校で習っている世代だからです。私達よりもネットから正しい情報を収集する術を知っているのです。
B何でもツール化する
構造計算の効率を上げるのにExcelを使い、部分計算などのツール化を多くします。例えば二次部材の検討で荷重拾い部分までツール化するなどです。
本当にタイパの良い構造設計
さて、このタイパですが、建築設計には欠かすことのできないものです。同じ品質の設計であれば掛かる時間が少ない方が利益が増えるからです。私達にとって、構造設計は仕事、ビジネスです。
ベテラン構造設計者による本当にタイパの良い構造設計とは以下です。
@より正解に近い断面を仮定できる能力
説明するでもなく、構造計算は断面を仮定し、応力計算、断面設計を行い、NGであれば補強、余裕がありすぎた場合は断面・配筋を下げる作業を繰返します。この仮定がより正解に近いほど繰返し回数は減り、速く設計が出来ます。
ではベテランの構造設計者がどのように断面の仮定を行うかと言うと以下によります。
- まず過去の経験より、この建物(スパン、階数、荷重条件)であれば、この程度のサイズの部材になるだろうとの感覚があります。
- 断面が変われば剛性が変わり、応力が変わります。断面を変更する時はこれを見越して、断面を考えています。つまり、力学計算、応力計算に対する理解が高いのです。複雑な形状の建物に対しても建物の各部までの影響を即座に判断できます。
- 断面の仮定ですが、単なる経験による勘ではなく、簡易計算を行い、決めています。
A各種設計基準に精通している
私達、構造設計者は構造設計を行う上で非常に多くの指針、文献を参考にして判断します。ベテランの構造設計者でも全ての基準、数値を暗記している訳ではなく、指針、文献を開き、確認することがあります。ベテラン構造設計者とそうでない構造設計者の違いは覚えている量、調べたいことが何処に書いてあるかを把握している量が違うのです。よって、この作業にかかる時間も大きく違います。
B意匠、設備設計についての知識もある
一つの建物を設計するには意匠、構造、設備の設計が関わり、設計段階では多くの調整があります。構造だけを優先しても良い建物にはなりませんし、無理のある意匠計画ではコストが増えてしまいます。ベテラン構造設計者はこのような調整が必要となった時、意匠計画も含めた提案が出来ます。よって、意匠設計者も満足し、設計が円滑に進みます。
やはり、タイパの良い構造設計をするには経験と確かな知識が必要です。
若手構造設計者がタイパを良くするには
では経験の少ない若手構造者がタイパを良くするための方法を考えます。
@過去の設計をデータベース化
“より正解に近い断面を仮定できる能力”を補うために自社における構造設計をデータベース化するのはどうでしょう。建物用途、階数、スパン長、スパン数、柱の負担面積、そして、柱・大梁のサイズを紐づけます。これにより、経験の少ない若手構造設計者でも適切な断面仮定に近くになります。
デジタル技術に精通しているZ世代構造設計者であれば、難しくなく出来るでしょう。
A建築学会指針のウェブ閲覧サービスを利用する。
2025年8月、日本建築学会が主要指針のウェブ閲覧サービスを開始しました。
https://www.aij.or.jp/websrvbook/orderproducts.html
「近年のオフィス環境の変化やテレワークの普及を踏まえ」との説明がありますが、一番効果があるのはワード検索ができることです。これにより、必要な事項を迅速に探すことが出来ます。
B対面での打合せをしましょう。
メールも便利ですが、対面で直接、話すほうが絶対的に情報量が多くなります。これにより、お互いの勘違い、打合せ(確認)不足などによる手戻りが減るでしょう。
また、直接、顔を合わせれば親しくもなれるでしょう。これって、仕事を円滑に進めるために最も必要なものです。
