2023年10月28日

構造設計者も40代が不足。。。どうなる構造設計業界、どうする若手構造設計者!

 9月14日、日経クロステック/日経アーキテクチュアで「設計事務所の年齢構成分析、高齢化や40代不足が課題」との記事がありました。



 所員数が100人を超える設計事務所を対象に所員の年齢構成を分析した結果、50代が多く、高齢化や若手、中堅の不足が問題となっているとのことです。50代は高齢ではないですが、高齢化は日本社会全体の問題であり、数年後には更に高齢化が進むことは明らかです。
 ここで問題は仕事を一番バリバリ行い、若手の指導も担う中堅の不足です。つまり、現状、仕事の処理に支障が出ており、若手の育成もできず、今後は更に生産性が下がることが予想されるのです。

 これは構造設計者、構造設計業界にとっても同じでしょう。

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なぜ、40代が少ない?


 そもそも、なぜ、40代が少ないのでしょうか。現在の40代は昭和49年(1974年)から昭和58年(1983年)に生まれています。1971年から〜1974年は第2次ベビーブームとして出生数の山があり、以降は減少していますが、この年代が特別少ない訳ではありません。
 現在の40代が就職活動を行う大学4年生時は1996年から2005年となりますが、この時代は日本経済も下落傾向であり、採用する人数も減っています。これが影響しています。
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 現在の50代後半の就職時期はバブル経済期であり、第2次ベビーブームの世代であることから就職人口も多く、各社とも大量に採用を行いました。この反動による調整もあります。

 建築業界も大きな影響を受けた業種の一つです。確かに自分の廻りを見ても40代が少なく、多くの会社が同じ問題を抱えています。この年代を補充しようにも居ないのです。
 そのため、この年代には多くの負担がかかっています。40代と言えば、管理職になる人も多い年代ですが上が詰まっているため、上がれない。人も少ないので仕事が多い。若手の育成も出来なく、負のスパイラルです。




従業員エンゲージメント、働き方改革により、更に悪化。


 以降は建築業界も人が増えているものの、人が育っていません。現在、日本は慢性的な人手不足であり、従業員の確保は企業にとって、大きな課題です。時代も変わり、転職も当たり前となっています。会社は社員のつなぎ止めに必死です。従業員エンゲージメント(満足度)など言う社員への迎合の風潮もあり、若手には厳しいことも言えず、人材が育っていません。働き方改革による業務時間の減少も人材育成に悪影響を与えています。

どうする若手構造設計者!


 数年すると現在の50代が抜け、現在の40代がトップとなることになります。この年代は十分な指導も受けており、実力もあります。人数も少ないので多くが上層部となります。しかし、現在の30代以降が業務の中心となると生産性は下り、企業、事務所の業績は厳しいものになるでしょう。これは多くの企業で認識され、若手育成が重要経営課題となっています。

 しかし、若手の育成が重要課題などと言っている現在の50代の言葉などを間に受けてはいけません。
 この問題が顕在化する時は現在の50代は居ません。一種の流行りとして、このような事を言っているだけで本気で対応しようとは思っていません。

 自分の身は自分で守るしかありません。自分で確かな技術力を身に付ける取り組みが必要です。業務時間に制限のある中、会社、事務所での勉強では限界があります。業務時間外で知識、技術力を高める取り組みを行う必要があります。そして、その知識、技術力は使ってこそ、身に付きます。仕事が多いのは嫌、在宅勤務の方が楽で良いなどと思っていてはダメです。
 このような取り組みを行った人が残します。このような風土がある会社が生き残ります。意識高い系の若手は既に動いています。

posted by 建築構造設計べんりねっと at 20:26| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム

2023年10月21日

杭の打ち止め管理を考える@

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 2015年、横浜市のマンションで旭化成建材が杭施工データを偽装した事件が発覚しました。杭が支持層に到達しておらず、このマンションは傾斜、建て替え、仮住まい、その他も含めて、合計約460億円をかけて、建替える事になりました。

 データの偽装は論外ですが、同時に杭工事において適切な施工管理・監理が行われていない事が少なからず、起きている事も明らかになりました。2005年の耐震偽装事件の時と同じですが、偽装の調査をにより、不適切な対応が存在する事が発覚した構図です。

 これを受け、国土交通省では「基礎ぐい工事における工事監理ガイドライン」を出しました。同じ時期に日本建設業連合会らも「既製コンクリート杭施工管理指針」が出されました。

 では以降、杭工事において、適切な管理・監理が行われているかと言うと。。。

 杭工事の管理(監理)において、最も重要なのは支持層に確実に杭を到達させることです。この杭打ち止め管理について、「基礎ぐい工事における工事監理ガイドライン」においても、具体的な判断方法、判断基準は十分に示されていません。

 そこで、杭の打ち止め管理方法について、私なりの考えを解説します。

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設計図書に記載された杭長を施工するだけでは不十分


 杭工事は建築工事の中でも管理が最も難しい工種です。杭は敷地内の地盤調査結果により、設計されますが、全ての杭位置での地盤調査を行うことも出来ません。地盤の状態も敷地内で一定ではなく、支持層が傾斜、不陸がある事もあります。つまり、設計図書に記載された杭長を施工するだけでは不十分であり、現場での調整が必要となることがあるのです。しかも、目で見えない土中の状態を判断しないとなりません。




杭の支持力機構の種類と杭の打ち止め管理


 杭の打ち止め管理を考える上でまず、杭の支持力機構の種類を理解する必要があります。
杭の支持力は杭先端地盤の強度によるもの(先端支持力)と杭周面地盤との摩擦力(周面摩擦力)によるものがあります。先端支持力と周面摩擦力の両方を考慮したものもあります。
 先端支持力を期待している杭の場合は確実に設計で想定している支持地盤まで杭を到達させる必要があります。周面摩擦力を期待している杭の場合は設計杭長以上を確保する必要があります。先端支持力と周面摩擦力の両方を期待している杭の場合は支持地盤への到達と設計杭長確保の両方の管理が必要です。



 構造図では周面摩擦力を考慮しているのか、考慮していないのかが不明である杭工法も多くあります。まずは設計杭長を打設することは杭工事の基本です。
 周面摩擦力を考慮していないことが明らかな場合は支持層到達確認で杭を高止まりさせる事も可能な場合もありますが杭の水平耐力にも影響しますので慎重に対応する必要があります。

支持層到達の判断方法


 さて、杭工事の管理(監理)で最も難しいのが支持層到達の確認です。これはトルク値、電流値などの掘削抵抗値により、判断します。

 しかし、これが難しい。
 
 それは、この掘削抵抗値がいくつなら支持層に到達した事になるとの基準値が無い為です。
 
 杭の設計には杭先端付近のN値が使われますが、このN値と掘削抵抗値(トルク値、電流値)との定量的に確立された関係性がないためです。掘削抵抗値は地盤の状態、杭種、杭径、施工方法、施工機械などにより、変わることが起因しています。

 よって、現場ごとに支持層到達の判断基準となる管理値を定める必要があるのです。この管理値を確認することで支持層到達を判断しますが、この管理値の決め方について、国土交通省からの「基礎ぐい工事における工事監理ガイドライン」、日本建設業連合会らの「既製コンクリート杭施工管理指針」でも明確に示されていません。






posted by 建築構造設計べんりねっと at 19:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 構造設計メモ

2023年09月01日

2025年 4号特例縮小が骨抜き?

 8月7日、改正建築物省エネ法・建築基準法の円滑施行に関する連絡会議が開催され、議事が公開されました。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000168.html

 議題の中には「確認審査対象の見直しに伴う提出図書等の合理化」が入っています。

国土交通省_画像.jpg

 2階建300u以下、平屋建て200〜300uの木造建物は建築確認での構造審査対象となり、構造図一式と壁量計算、金物N値計算、4分割法計算、その他仕様規定の確認が必要となる見通しでした。

しかし、連絡会議の資料によると『各階床伏図等の提出を求めない代わりに、必要事項を仕様書に記載する形をとる』となっています。





仕様書とはチェックリスト的なものなのだろうか。設計者(申請者)が「○○は□□の仕様とします。」と記載し、それを審査機関が確認するのだろうか。この文言は「建築基準法を準拠します。」との宣言するのと同じようなものであり、これを確認出来るのが構造図であり、それを確認するのが確認審査である。

 現状の4号特例(審査省略制度)も設計者の性善説、責任に基づき、構造審査を省略する制度であるが、これと全く変わらない。

 合理化とは聞こえが良いが、4号特例縮小が骨抜きにされたのと同じである。

 2020年、建築士法改正(建築士事務所の図書保存の見直し)により、確認申請に必要な構造図書は全て揃っている事になっている事になっていますが、不完全なものであり、確認審査には耐えられないものと認めたのと同じである。

 尚、この資料では右上に未確定と記載されたページとされていないページがある。提出書類の合理化については記載がない。つまり、決定である可能性が高い。




posted by 建築構造設計べんりねっと at 19:21| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース