2023年12月09日

杭の打ち止め管理を考えるA〜支持層到達管理値の設定方法

 では支持層到達の判断基準となるトルク値、電流値など掘削抵抗値の管理値の設定方法を解説します。




管理掘削抵抗値設定の基本


 管理掘削抵抗値を設定するには試験杭が必要です。試験杭は地盤調査を行った位置の近傍の杭で実施します。その杭では地盤状態、支持層深度が把握出来ているためです。
 下図の地盤、杭計画例で説明します。掘削抵抗値はトルク値の例です。
杭打ちとめ@.png
 地盤調査結果では深度14mまでが弱いシルト層、以深は安定した砂礫層となっています。杭は砂礫層を支持層とし、設計杭先端深度が15mです。
 地盤調査結果(N値)と掘削抵抗値の定量的に確立された関係はありませんが、地盤が弱ければ掘削抵抗値も小さい値を示し、強ければ掘削抵抗値も大きな値を示します。この例では深度14mまでは15〜20kN・m、以深の砂礫層では128〜149kN・mとなっています。この砂礫層(支持層)の掘削抵抗値が管理値となります。

土質区分について


 管理値を判断するには土質区分について理解する必要があります。

 各地層が形成されるには何千年、何万年の時間が掛かっており、厳密には深さごとに状態は違います。しかし、それでは設計、工事が出来ませんので工学的に同じ性質と判断できる地層ごとに区分したものが土質区分です。これは地盤調査のボーリング柱状図に深さごとの土質区分が表記されています。まず、この事を理解して下さい。

地盤はバラツキがあることを理解する


 次に地盤はバラツキがあることを理解する必要があります。

 上記の地盤の例ですと深度14〜16mが強い、16〜18mがやや弱い、そして、また強くなると考えるのではなく、地盤強度のバラツキと理解する方が妥当であることが殆んどです。近傍で更に地盤調査を行えば、違ったバラツキが出るでしょう。掘削抵抗値にもバラツキが生じます。
 地盤については2倍程度は誤差、バラツキの範囲内です。また、地盤調査による誤差もあります。




管理掘削抵抗値の設定方法


 では上記の例で管理掘削抵抗値を設定します。

 まず、土質区分ごとに考えますので支持層の掘削抵抗値149、131、129kN・mです。地盤調査のN値にしても、掘削抵抗値にしても礫当たりなど、なんらかの要因により、大きくでることはあっても小さくでることは通常、ありません。
 2倍程度までは誤差、バラツキであるので比較的に安定した状態です。このような時は支持層の掘削抵抗値の最小値を管理値とする。この例では129kN・mとなります。以降の杭についてはこの管理値が出た時点で支持層到達を判断し、設計では支持層に1m貫入となっていますので更に1m打ち込み、終了となります。

 ここで試験杭での掘削抵抗値が当該現場の全ての杭位置における支持層の最小値となっているとは限らないということです。支持層到達判断は管理掘削値だけでなく、支持層前後の掘削抵抗値の変化や施工重機の振動、音なのでも判断出来ます。これらを含め、支持層に到達している事が判断でき、試験杭における最小値を若干、下回る値が出た場合は以降、その値を管理値として構いません。この若干は最大値の1/2以上であることが必要です。

 支持層によっては2倍を超える大きなバラツキを示す場合があります。この場合は平均値どうしを比較する方法もあります。





posted by 建築構造設計べんりねっと at 16:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 構造設計メモ

2023年11月23日

4号特例縮小は実施されない!だからこそ、木造住宅も構造計算をすべき!

 令和4年6月17日、4号特例縮小法案が公布されました。過去にも、4号特例については多くの議論があり、歴史的な法改正でした。。。



 令和5年11月1日より、第二回の法改正説明会が行われています。この中では>『各階床伏図等の提出を求めない代わりに、 必要事項を仕様書に記載する形をとる』となっており、仕様書の案も公開されました。

仕様表.png

 開示された仕様書は簡単に言うと「建築基準法を守ります!」との誓約書?のようなものです。建築確認の審査とは建築基準法で規定された仕様通りになっているか、図面・計算書で確認することですが、図面の添付が不要と言うことは実質審査なし、4号特例の継続です。

 なぜ、このようになってしまったのでしょうか。建築業界からの抵抗でしょうか、審査機関側が対応できないと判断したのでしょうか。それとも、物価高騰が続く状況の中、更に住宅価格が高騰するのと避けるためでしょうか。




 4号特例縮小に至った経緯としては以下とされています。
  • 断熱材や省エネ設備の設置といった省エネ化に伴って、建築物が重量化している。壁量が実態に合わなくなってきており、地震時に倒壊リスクがある。
  • 多様なニーズを背景として、大空間を有する建築物が増加しており、積雪時に倒壊リスク等が高まる恐れがある。
  • 審査省略制度(4号特例)を活用した多数の住宅で不適切な設計・工事監理が行われ、構造強度不足が明らかになる事案が断続的に発生している。


  •  耐震性に大きく影響する壁量規定は強化される事になりますが、構造の安全性はこれだけではありません。つまり、これらは改善されないことになります。大げさに言うと国民の安全は守られないことになります。

     4号特例とは建築確認における審査省略制度であり、建築士、設計者の性善説に基づく制度です。国民の安全を守るのは国土交通省ではなく、建築士・設計者です。
     心ある建築士・設計者に期待します。こんなタイミングだからこそ、木造住宅も構造計算を行い、設計するようにするべきではないでしょうか。



    posted by 建築構造設計べんりねっと at 20:04| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム

    2023年11月01日

    2025年建築基準法改正(4号特例縮小)説明会速報!

    本日11月1日より開催される建築基準法改正の制度説明会に行ってきましたので報告します。

    令和4年6月13日に公布された改正建築基準法は1年内施行、2年内施行、3年内施行に分かれており、それぞれの内容について順次、説明がありました。





    やはり、焦点は3年内施行となる4号特例の縮小です。

    しかし、4号特例縮小に関する新しい情報はなく、資料にも見込み事項と記載されており、決定事項ではありません。

    資料に記載がなく、口頭での説明だった新しい情報としては以下の2点です。

    1.開示済の壁量規定(令46条)の案ではZEH水準の建物に対する必要壁率が追加され、従来の壁率も残っていましたが、全ての建物について壁量を見直すことになった。

    2.壁量、柱の小径算定の設計支援ツール、早見表は11月上旬に公開、パブリックコメントを募る予定。
    ※資料は住宅木材センターHPに掲載される予定。


    全般的に新しい情報がなく、なぜ、この時期に説明会を行ったのかに疑問が残る内容でした。

    昨年に行われた第一回説明会では今年の秋に施行令が公布されるとなっていましたが、遅れています。法整備が遅れていることに対する批判を避けるためでしょうか。

    その他、4号特例縮小に関する情報は以下よりどうぞ。

    https://arc-structure.sakura.ne.jp/report36.htm#new
    posted by 建築構造設計べんりねっと at 14:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース