2022年12月31日

構造設計、ゆく年くる年。2023年はどうなる!?

 今日は大晦日です。2022年も終わりです。構造設計者の皆様において、2022年はどのような年だったでしょうか。また、2023年はどのようになるのでしょうか。
ゆく年くる年.png

2022年に起きた出来事


●インターネットによる建築士定期講習修了考査が開始
 1月、確認サービス社がインターネットによる建築士定期講習修了考査が開始しました。これで構造設計一級建築士を含む建築定期講習が講習から修了考査まで全て、ネットで完了するようになりました。世界中、どこからでも受講可能となりました。建築技術教育普及センターもこれに続き、オンライン講習を開始しました。

●ロシアによるウクライナ侵攻、木材不足
 2月、ロシア軍がウクライナに侵攻しました。前年のウッドショックに続き、更に木材不足となりました。特にLVL材の不足が顕著でした。構造設計においても材料の変更が少なからず発生しました。






●4号特例縮小法案が成立、6月17日公布
「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」の関連法案ととして、4号特例縮小法案が成立が成立しました。施行が2025年4月予定とまだ先であるので大きな動きは出ていませんが、構造設計業界に大きな影響を与える建築基準法改正となりました。

●円安、建築資材高騰
 年初、1ドル115円であった為替相場が10月には1ドル150円を超えました。これにより、燃料価格、原材料価格が高騰し、建築資材も大きく高騰しました。この建築資材高騰は建設会社に大きな影響を与え、構造設計者も今まで以上にコストダウン設計を求められるようになりました。

●金利上昇
 12月20日、日銀が長期金利の変動幅の上限をこれまでの0.25%程度から0.5%程度に引き上げると発表しました。これにより、円高に振れたものの、メガバンク3行が30日、10年固定型住宅ローン金利を0.18%〜0.30%幅引き上げる発表をしました。建築業界にも大きな影響となることが予想されます。




2023年はどうなるでしょうか?

2023年は構造設計の仕事が減る


 2022年、建設業界は増収となっているものの、原材料高騰の影響により、減収となっています。原材料高騰は2023年も続くものと思われます。2022年は原材料高騰分を建設会社が負担する形でありましたが、今後は選別受注を行い、不動産会社、クライアントに負担を求める事となります。また、金利も上昇することにより、建設投資は減るのではないかと思われます。当然、構造設計の仕事も減ることになります。

2023年、構造設計料は横ばい


 さて、2023年、私達の給料の基となる構造設計料はどのようになるでしょうか。様々な物価が高騰するなか、政府も企業に給料を増やすことを要請しています。しかし、2023年、構造設計料は横ばいです。建設資材の価格が高騰するなか、少しでも経費を抑えたいと考え、構造設計料が上がることはないでしょう。

2023年、構造設計者は売手市場、転職のチャンス!


 今年、成立した改正建築基準法の関連法案が秋ごろに公布予定となっています。この頃になると一般企業でも改正建築基準法の対応を考えるようになり、構造設計者の奪い合いが始まると思われます。既に確認検査機関は構造設計担当者の募集を増やしています。当然、収入も上がります。転職を考えている構造設計者は2023年がチャンスです。



posted by 建築構造設計べんりねっと at 16:19| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム

2022年12月11日

構造計算を修得するには木造がオススメ!

 構造計算を修得するにはどのような取組みが有効でしょうか。




 私達、構造設計者は構造計算に一貫構造計算プログラムを使用します。構造計算プログラムに入力し、OK、NGの結果だけを見ながら、部材や配筋、材料強度をあれこれ変えれば 、何となく構造計算が出来てしまうこともあります。
 しかし、それでは適切な解になるのに多くの時間がかかってしまいます。そもそも、構造計算結果の妥当性の判断が出来ないと安全性の確保も怪しいものとなります。
“構造計算を修得する”が、“構造計算プログラムの使用方法を修得する”になってしまっている人も少なくはありません。


 構造計算プログラムを使用するには、その計算内容を理解していることが必要です。計算内容を理解し、適切な対応が出来ることが構造計算を修得したとなるのです。





 多くのベテラン構造設計者は構造計算を修得するために手計算を行うことを薦めます。しかし、一つの建物を手計算で構造設計を行うとなると非常に多くの時間を要します。

 そこで、構造計算を修得する方法として、構造計算プログラムを使用して計算した建物の計算内容を手計算で確認する取組みを行うことを薦めます。
 応力計算では複数の通り(フレーム)がありますが構造計算内容を理解することが目的なので1ヶ所で構いません。また、断面算定においても各部材(柱、大梁、小梁、スラブ)1ヶ所ずつで良いです。
 重要なのは重要なのは構造計算の各項目、段階において、計算結果が手計算と合致すること、どの基準に従っているかを曖昧にせず、取り組むことです。

 そして、構造種別としては木造を薦めます。
計算書.png

 RC造、鉄骨造となると一貫構造計算プログラムで計算することになり、応力解析を変位マトリクス法となります。これは手計算で合致させることは不可能です。木造は構造計算プログラムの内容も手計算で完全に追うことが出来ます。
 複雑な計算だから、手計算で合致させることは出来ないとすると全ての項目、段階で曖昧になってしまい、効果はありません。
 木造と他の構造で違うのは応力解析方法と断面算定方法のみです。これを行えば構造計算全体を理解することが出来ます。
 もちろん、木造はルート1なので保有耐力計算はありませんが、まず最初は1次設計をしっかりと修得することが重要です。



posted by 建築構造設計べんりねっと at 18:35| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム

2022年11月03日

建築基準法改正で木造の必要壁量が2倍になる!?

 10月28日、国交省より、施行令第46条の改定案が出されました。

木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準(案)の概要

補足資料





 昨年12月に出されましたパブリックコメントでも「断熱材や省エネ設備の設置といった省エネ化に伴って、建築物が重量化している。壁量が実態に合わなくなってきており、地震時に倒壊リスクがある。」との内容が出されており、この事に対する改定案です。

 国交省の資料によると以下の三つの方法が示されています。

方法@:個々の建築物の荷重の実態に応じて現行規定より精緻に検証する方法

方法A:現行規定と同様に簡易に確認する方法

方法B:構造計算により安全性を確認する方法






 方法@とは建物の実状に応じた地震力を算定し、必要壁率を求める方法です。地震力を算出するのであれば、あえて壁率に置き換える意味が分かりませんが。。。
 方法Bは構造計算によるため、壁量検討については基本、方法@と同じです。尚、この場合は壁量の仕様規定は除外されます。

必要壁量が今までの2倍程度になる?!


 方法Aによる必要壁率は以下は示されています。
必要壁率.png

 一般地域における通常の木造住宅の場合、2階が2.07倍、1階は1.83倍の壁量となってしまいます。
 通常の木造住宅では、2階部分は壁量に余裕があるかとは思いますが、1階は必要最低限の壁量しか確保されていないのが殆どと思います。これが1.83倍になるとプランにも大きく影響する事になるでしょう。

 様々な仕上げに対する国交省の試算がありますが、この壁率は瓦屋根(重い屋根)、土塗り壁(重い壁)の場合となっています。よって、住宅で一般的なスレート屋根(軽い屋根)、サイディング貼り(軽い壁)に対してはかなり過剰な数値となっています。
 元々、施行令46条では重い屋根と軽い屋根で壁率が違っていますので少なくとも2区分に分ける事が必要ではないかと思います。

設計者はどう対応する?


 この壁量検討は方法@、Bにある実状に応じた地震力を直接、算出する方法もあります。既に公布されている改正建築基準法では多くの木造2階建て住宅は300uを超える事はないため、仕様規定の確認(壁量計算)となっています。

 ここには今まで通り、構造設計者が関与することはなく、意匠設計者による対応となります。よって、地震力の算出が出来るかどうは疑問です。
 大手ハウスメーカーによる建売住宅以外はかなりプランに制約が出る事なるのではないでしょうか。






 この施行令の改定案は今後、パブリックコメントを経て、令和5年秋頃に交付予定となっています。尚、施行日については令和7年4月予定となっています。


posted by 建築構造設計べんりねっと at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース