2026年02月14日

RC造/ひび割れ誘発目地を設けてはならない箇所

 RC造の外壁や土間コンクリートには、ひび割れ誘発目地を設けます。しかし、スラブや木造の基礎などにはひび割れ誘発目地を設けません。この理由を解説します。
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ひび割れ誘発目地の目的


 RC造の外壁や土間コンクリートに設けるひび割れ誘発目地の目的はRC造ではコンクリートの材料としての特性上、避けることのできない乾燥収縮、温度変化によるひび割れを目地部分に集中させることで他の部分へのひび割れを防止するものです。
 外壁は外気や日射に晒されており、ひび割れが発生しやすい状況です。土間コンクリートは梁に囲まれている構造スラブと比較し、1枚の面積が大きくなるので乾燥収縮、温度変化の影響が大きくなることでひび割れが発生しやすい状況にあります。

ひび割れ誘発目地の弱点


 このひび割れ誘発目地ですが良いことだけでなく、以下の弱点もあります。
  • 構造断面を欠損させることになるので強度が低下する。
  • 目地の厚み分、鉄筋のかぶり厚が少なくなり、耐久性が低下する。
  • ひび割れ箇所で水が浸入すると鉄筋のサビが発生し、強度の低下、コンクリートの剥離の懸念がある。

  •  よって、外壁のひび割れ目地は増打ち部分や内側の鉄筋位置に目地を設け、目地部分はシーリングを行うことで水が浸入しないようにします。但し、シーリングは定期的に補修が必要となります。
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     土間コンクリートについては部材断面の強度ではなく、地盤の強度で床を支持します。鉄筋もひび割れ防止のためのシングル配筋であることが多いので目地を設けてもかぶり厚も確保でき、強度の低下はありません。但し、外部の土間コンクリートではコンクリート打設後にカッターで目地を設けるのではなく、エラスタイトにより、鉄筋も切断することがサビの発生によるコンクリートの剥離を防止するのに望ましい方法です。



    スラブや木造の基礎に誘発目地を設けない理由


     スラブにひび割れ誘発目地を設けない理由は上記の弱点によるものになります。
  • 鉛直面である壁に対し、水平面となるスラブでは雨水侵入による鉄筋のサビ発生(強度低下)の懸念がある。
  • 鉄筋のかぶり厚の確保、断面欠損を避けるためには増し打ちが必要になるが建物重量、地震力の増加となり、耐震性を低下させることになる。

  •  木造の基礎においても常時湿潤状態にある地中にあるため、水の侵入による鉄筋のサビ発生(強度低下)の懸念があるのでひび割れ誘発目地は設けません。



    構造スラブ、木造基礎のひび割れ対策


     構造スラブ、木造基礎においてもひび割れが発生することがあります。上記の理由により、「ひび割れ誘発目地を設けられないので、ひび割れが発生しても仕方ない」とはなりません。構造スラブ、木造基礎のひび割れ対策を解説します。
     構造スラブ、木造基礎において、ひび割れが発生しやすい場所は外気や日射に晒されており、乾燥収縮、温度変化の影響が顕著となる外部です。木造基礎であれば外周部、RC造の構造スラブであれば外部の片持ちスラブです。そして、乾燥収縮、温度変化は部材の長さ方向に影響が大きくなります。つまり、木造基礎であれば、ひび割れは縦方向、RC造片持ちスラブであれば長さの直角方向となることが多いと思います。

     コンクリートがひび割れるとはひび割れ方向と直交方向に力が作用したことになります。片持ちスラブであれば配力筋、木造基礎であれば主筋・腹筋方向です。これらの鉄筋を十分に配筋することが対策となります。詳細については日本建築学会「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針・同解説」を参照して下さい。




    タグ:RC造
    posted by 建築構造設計べんりねっと at 14:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 構造設計メモ

    2026年02月01日

    施工不具合対応マニュアル/鉄筋継手の不具合

     鉄筋の継手は通常、D16以下は重ね継手、D19以上は圧接とします。D35以上は重ね継手は禁止されています。RC造における鉄筋の継手に関する施工不具合の対応方法を解説します。
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    重ね継手の差筋位置がずれている


     重ね継手は通常、鉄筋どうしを束ね、結束線で結びます。壁やスラブなどのコンクリート打ち継ぎ位置で重ね継手のための差筋が本来の位置よりも部材の長さ方法でずれている場合があります。
     この時、差筋の台無しを行い、鉄筋どうしを束ねる方法もありますが、下図のように空き重ね継手と呼ばれる方法も日本建築学会「配筋指針」で認められています。
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     この場合、鉄筋どうしの間隔が0.2・L1かつ150mm以下である必要があります。また、空き継手と出来るのは壁、スラブなどで鉄筋が部材の長さ方法にずれている場合のみで部材断面の内部側に鉄筋ずれている場合は採用出来ません。もちろん、断面の外側にずれている場合はかぶり厚さが確保できなくなるので採用出来ません。




    鉄筋の空きが確保出来ない


     小梁などの主筋でD16以下の場合は重ね継手とするのが一般的であり、通常は鉄筋を横に並べて、束ねます。鉄筋を横に並べると隣の鉄筋との空きが取れない場合、継手鉄筋を上下(縦)に並べる方法も日本建築学会「配筋指針」で認められています。
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     尚、継手鉄筋は継手範囲から外れる位置より緩やかに正規の位置に戻します。

    圧接が出来ない


     施工の仮設計画で大梁部分にコンクリートの打ち継ぎを作り、中央部分を後打ちとする場合があります。このような時、梁主筋の圧接が出来なくなります。圧接は継手部分の鉄筋をガスで加熱し、圧力を掛け、一体化しますが、両側のコンクリートが打設済であると鉄筋を引っ張り、圧力をかけることが出来なります。
     このような時の対応ですが、まず、鉄筋の空きが確保出来るのであれば重ね継手でも構いません。しかし、通常は重ね継手で納まる断面、鉄筋本数となっていないでしょう。鉄筋の継手には溶接(突合せ)や機械式継手も認められていますので、これらを検討しましょう。



    重ね継手長さが足りない


     コンクリートの打ち継ぎ位置からの差筋が重ね継手長さL1に不足している場合の対応方法です。
     このような時の対処方法としては圧接、溶接(突合せ)、機械式継手が考えられますが、その他の方法としてはフレア溶接があります。フレア溶接の場合、溶接長さは片面10d又は両面5dのいずれかになります。しかし、異形鉄筋はリブがあり、現場での溶接となると溶接品質を確保するのが難しいので、余りオススメ出来ません。





     構造計算による再検討が必要ですが以下の方法もあります。重ね継手長さL1はコンクリート強度ごとに鉄筋径(呼び径)の40倍などと定められています。これは鉄筋に作用する力とコンクリートの周面付着強度から決定されています。しかし、部位ごと、コンクリート強度ごと、鉄筋径ごとに重ね継手長さを設定するのは設計側も施工側も作業が煩雑になるので、鉄筋のフル強度に対し、計算したものを丸めて定めています。つまり、個別に計算すれば、若干は短く出来ます。
     もう一つはイレギュラーですが鉄筋径を変えてしまう方法です。異なる径の鉄筋を重ね継手とする場合、重ね継手長さは小さい方の径で決定します。つまり、鉄筋径を下げれば重ね継手長さを短く出来ます。この場合、元の鉄筋断面積と同等になるように本数を増やす必要があります。これは空き重ね継手とします。

    posted by 建築構造設計べんりねっと at 18:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 構造設計メモ

    2026年01月17日

    AI後の構造設計者には大きな格差が生じます。

     GoogleのAI「NotebookLM」を使ってみて、思ったことがあります。構造設計AIが出来たら、構造設計者はどのような行動をするだろうか。これについて、記事にしました。




    AIで動画を作成してみた


     『建築構造設計べんりねっと』の記事をGoogleのAI「NotebookLM」で動画にしてみました。作業は簡単で記事のURLを指定し、動画生成のボタンを押すだけ。数分すると以下の動画が出来ました。

    元の記事「スマホだけで建物まるごと構造設計をしてみた。」
    https://arc-structure.sakura.ne.jp/report13.htm


    元の記事「住宅メーカーの耐震技術をジャッジ!本当に技術力が高いのは何処?」
    https://arc-structure.sakura.ne.jp/report38.htm

     出来上がった動画は記事の文章をそのまま読み上げるだけでなく、ネットからの情報でAIが学習したものも加えられています。一部、間違った情報もありますが、クオリティはそれなりに高い動画が出来ました。
    しかし、この動画は『建築構造設計べんりねっと』のテイストとやや違うものになりました。高い動画作成スキルとそのための時間がある人であればAIを利用せずに自分が満足する作品を作り上げるでしょう。
     これで十分と思う人も多いと思いますが私としてはやや不満な部分もありました。ただ、AIの進歩は大きく感じました。

    構造設計AIが出来たら


     完全に自動で構造設計が出来るAIが完成したとします。建築計画(意匠図、建築地などの情報)と設計クライテリアを与えるとAIが自動で構造設計を行い、構造図(CADデータ)と構造計算書(構造計算プログラムデータ、構造計算書一式)を生成します。
     建築士法による構造設計者はこれをチェック、採用するかどうかの判断をすることになります。




     この時の構造設計者の対応を考える上で現状もある以下のケースを考えます。

     構造設計者Aが行った構造設計を別の構造設計者Bが変更を行うことになりました。この建物は一度、構造設計が完了、建築確認も許可となっており、構造図(CADデータ)、構造計算書(一貫構造計算プログラムデータも含む)があります。
     この時に構造設計者Bは一貫構造計算プログラムデータを変更箇所だけ修正するのではなく、一から入力し直しました。
     このような構造設計者は少なくないと思います。構造計算プログラムの入力は誰がやっても同じになるものではありません。設計思想もそれぞれ違います。他の人が入力したデータをチェック、理解し、そして、その結果に対し、設計者として責任ある対応をするには自分で一から入力した方が速いと思うのでしょう。
    ChatGPT Image 2026年1月18日 07_32_58.png
     これを構造設計AIに置き換えた時、私が動画生成AIに感じたように「ちょっと違うな。自分ならそうしない。」と思い、AIの構造設計を修正する人も少なくないと思います。
     このように構造設計AIが完成しても、構造設計者が修正を行い、構造設計を完了させることになるでしょう。
    では構造設計AIは使いものにならない?かと言うとそうではありません。途中の作業が効率化されるのはメリットです。イメージとしては部下に行わせた構造設計を上司、先輩がチェックするような使用方法です。

    AI後も構造設計スキルは必要とされます


     中にはAIの結果をそのまま採用する構造設計者も出てきます。簡易な形状の建物であれば十分かもしれません。しかし、複雑な形状の建物であるとAIだけでは十分な品質を確保出来ないでしょう。
     これにより、構造設計者、構造設計事務所の将来は以下になります。

  • 簡易な形状の建物は完全にAIによる対応となります。意匠設計者が使用するケースも増えます。これにより、この種の建物の構造設計料は大幅に下がります。
  • 複数の構造設計者で対応していた大規模な建物の構造設計において、若手設計者が対応していた補助業務はAIに置き換わります。これにより、スキルの少ない構造設計者は淘汰されます。

  •  AI後はむしろ高いスキルを持った構造設計者のみが残る形になります。

     既にプログラムエンジニアの世界ではこのような事が起きています。AIはプログラムコードの生成も出来ます。大規模なシステムは複数人で作成しますが若手エンジニアが行っていた簡易な部分はAIで対応できるようになっています。それも迅速に。
     AIにより優秀なエンジニアは今まで以上の成果を上げ、普通以下のエンジニアはAIに取って変わり、大きな格差が生じる言われています。
     構造設計業界も同じです。AIにより構造設計者の格差は広がります。AI後に生き残るには今以上に高いスキルが必要とされます。



    タグ:ai
    posted by 建築構造設計べんりねっと at 14:02| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム