2020年03月13日

RC柱頭配筋の不思議A〜柱主筋のフックの必要性

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RC柱頭配筋に関する問題点、様々な仕様を紹介したが、やはり、問題は柱主筋のフックの必要性だ。

フックが必要となる根拠は建築基準法施行令第73条による。まずは基準法を解読してみる。



施行令第73条によるフックの必要性
令第七十三条(鉄筋の継手及び定着)
 鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、コンクリートから抜け出ないように定着しなければならない。ただし、次の各号に掲げる部分以外の部分に使用する異形鉄筋にあつては、その末端を折り曲げないことができる。
一  柱及びはり(基礎ばりを除く。)の出すみ部分
二  煙突


「鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、...次の各号に掲げる部分(柱の出すみ部分)以外の部分に使用する異形鉄筋にあつては、その末端を折り曲げないことができる。」
 つまり、柱の出隅部分の鉄筋はフックが必要であるという事です。

 もう少し、注意して読んでみます。
・部材の端部ではなく、鉄筋の末端。
・柱の四隅ではなく、出隅。


 つまり、柱の出隅部分は最上階の柱頭部のみでなく、主筋の重ね継手部など、鉄筋の末端となる部分は全て、かぎ状に折り曲げる必要があると言う事です。
 尚、フック、かぎ状に折り曲げる理由としては技術基準解説書によると「柱、梁の出隅部分や煙突の鉄筋はかぶりコンクリートが割れやすいこと、熱を受け、付着強度が低下することにより、フックを義務付けている」となっています。建築学会の配筋指針では、「柱・梁の出隅部分の鉄筋ではコンクリートのかぶり厚さが2方向となり、かぶり部分のコンクリートが割れやすく、また、煙突の鉄筋ではコンクリートが熱を受けて、付着が低下するおそれがあるためである。」となっています。
 つまり、柱については“コンクリートが割れやすい”と言う点を考慮すれば良いのである。

柱の出隅部分ってどこ?四隅ではなく、出隅?
 施行令第73条では、四隅ではなく、出隅となっています。技術基準解説書、配筋指針の記載では出隅とはここです。
出隅.png
 壁が取付いている部分は出隅ではありません。配筋指針の通り、梁が取付く部分も出隅ではありません。




 一つ、注意が必要なのは、梁・壁の寄りによって、出隅になったり、出隅でなくなったりすると言う事です。まあ、梁との取り合いがない部分であればフックも邪魔にはなりません。

 さて、東京都建築士事務所協会他の配筋標準図ではフックの位置が柱の四隅となっています。四隅と言うと梁、壁の取付き方に係らず、柱の角の主筋四か所です。
 と言う事は、やっぱり、四隅全てにフックが必要になるのか?東京都建築士事務所協会のカゴ筋にはフックが付いていない。やはり、矛盾が多い。。。

施行令第73条を回避する方法
 施行令第73条による柱主筋のフックを法的に回避する方法があります。それは、令三十六条2項一号に規定されており、保有耐力計算(ルート3)を行うと施行令第73条の準拠は除外されます。建築学会の配筋指針にも、その旨が記載されています。

 もう一つの方法は、建築基準法で規定されている「特別な調査研究」で安全性を確認する方法です。建築学会の配筋指針によると配筋指針が特別な調査研究にあたるそうです。

 柱出隅部のフックは、かぶりコンクリートが割れやすいためであるが、「保有耐力計算でその検討を行った?}建築学会は、「かぶりコンクリートが割れないかの研究を行ったのか?」と思うでしょうが、法的には、このようになっているのです。

柱主筋のフックについて、疑問、矛盾は解決していない。
 さて、柱主筋のフックの必要性について、まとめましたが、疑問は解決していない。

@東京都建築士事務所協会他の標準図では四隅にフックが必要としている。

A東京都建築士事務所協会のカゴ筋納まりのカゴ筋の末端にはフックが記載されていないが、出隅部は必要なのでは?この納まりは建築学会「配筋指針」の備考9.5の解説図9.9にも記載されている。

B建築学会「配筋指針」では、フックの代わりに拘束帯筋があるが、これで柱主筋の付着力を向上させているとは思えない。

C建築学会「配筋指針」のカゴ筋納まりではフックが付いているが、出隅部でない場合はフックを省略して良いのか?

D建築学会「配筋指針」の柱を立ち上げる納まりでは、柱主筋は出隅部になる。二重帯筋で付着力が改善できるのであろうか?拘束帯筋との違いは?

E建築学会「配筋指針」では四隅にフックを付けることを「通例として」と書かれてる。技術的な根拠はないと言うことか?





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2020年03月11日

RC柱頭配筋の不思議@

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 最上階なので、そんなに大きな問題にはならないような気がするが、仕様がハッキリとせず、施工も困難で現場からも多くの要望が来るのがRC造の最上階柱の柱頭配筋。
eg_il001.gif

 RC柱頭配筋は、どのようにすべきか考えてみる。




RC柱頭配筋の基本
 RC柱頭配筋の最もオーソドックスな方法は、柱主筋を梁に直線でL2定着柱の四隅の主筋の末端に180°フックである。
柱頭配筋.png

 RC柱頭配筋に必要な性能としては以下になります。
・柱と梁を一体化する。(L2定着)
・柱主筋の付着強度を保つこと。(四隅のフック)

RC柱頭配筋に関する問題点
 まず、RC柱頭配筋における問題点をまとめる。

@主筋の末端にフックを付けることで梁配筋を行うのが困難になる。

A柱の主筋はフックのために梁上端筋の下で止まることになり、無筋状態の部分が発生する。

B一般的な柱の主筋径、梁せいからすると柱主筋の十分な定着長を確保するのが難しい。

C建築学会の配筋指針も仕様が不明確。

Dそもそも、フックが何故、必要か良く分からない。

各種指針、標準図の仕様
 各種指針、標準図におけるRC柱頭配筋の仕様を整理してみる。
【東京都建築士事務所協会】
 構造図に添付する構造標準図で最も多く使用されている東京都建築士事務所協会の配筋標準図では以下の2通りの納まりが載っています。

@柱主筋をL2定着、四隅の主筋に180°フック
柱頭配筋@.png

A仕口部内で重ね継手をするカゴ筋納まり
柱頭配筋A.png
 柱主筋を直線で頂部まで伸ばし、カゴ筋で重ね継手をする。カゴ筋にはフックは付いていない。
 フック無しとし、施工性を改善すると共に無筋部分を改善した納まりです。また、定着長不足も改善されます。



【日本建築学会(配筋指針)】
 建築学会の配筋指針には以下の3通りの納まりが載っています。
B柱主筋をL2定着、頂部に拘束帯筋
柱頭配筋B.png
 あれっ?フックがないぞ!拘束帯筋でフックの代わりになるのか?

C柱を立ち上げ、L2定着を確保
柱頭配筋C.png
 柱を立ち上げる事で定着長を確保すると共に仕口部でのフックと梁主筋の干渉を改善した納まりです。無筋部分も改善されます。
 但し、建物中央部の柱では防水工事が煩雑になります。
 頂部は二重帯筋となっているが、拘束帯筋と何が違うのだろうか。また、これで柱と梁は一体化が出来ているのだろうか?

⓹柱主筋を梁下で止め、カゴ筋で重ね継手
柱頭配筋⓹.png
 柱主筋を梁下で止め、上からU字形のカゴ筋をかぶせ、重ね継ぎ手する。四隅の鉄筋の末端は下からの主筋も上からのカゴ筋もフックを付ける。
 東京都建築士事務所協会のカゴ筋にはフックが付いていないが、こちらには付いている。
 フックを付けたカゴ筋を梁鉄筋を組んだ後に差し込むのは困難。。。

【関西建築構造設計事務所協会】
E柱主筋にフック+拘束帯筋
柱頭配筋E.png
 柱主筋のフックに加え、拘束帯筋が付いている。建築学会の仕様では拘束帯筋フック無しとなっているが、拘束帯筋はフックの代わりにはならないとの仕様だ。

【日本建設業連合会】
F柱主筋四隅180°フック+柱内拘束筋
柱頭配筋F.png
 日本建設業連合会の配筋標準図では柱主筋をL2定着、四隅の主筋に180°フックに加え、柱内拘束筋が必要となっている。


 その他の仕様としては、定着板を用いる方法や柱主筋を直線L2定着させ、フック付きの付けアンカーを行う方などがる。

様々な仕様があり、良くわからなくなったが、やはり、問題はフックの必要性だろう。







posted by 建築構造設計べんりねっと at 07:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 構造設計メモ

2020年02月07日

横架材間の垂直距離

横架材間の垂直距離とは何処?


 横架材間の垂直距離とは、ずばりここです。
横架材間の垂直距離.png




 横架材とは施行令第一条で「はり、けたその他これらに類するものをいう。」と定義されており、「横架材間の相互間の垂直距離」とは、その内法です。

 では、この「横架材間の垂直距離」が何に係るかと言うと施行令第四十三条 (柱の小径)で「横架材の相互間の垂直距離」に応じた木造柱の小径が規定されています。

 他に「横架材の垂直距離」による規定としては何があるかと言うと壁式鉄筋コンクリート造の最小壁長さがあります。耐力壁と出来る最小壁長さは開口高さの30%以上となっています。
 壁式鉄筋コンクリート造では開口の上下が梁になりますので開口高さが「横架材間の垂直距離」になります。
壁式.png

 横架材間の垂直距離による規定があるのは木造と壁式鉄筋コンクリート造などのいわゆる壁構造の構造物になります。

階高(意匠)、構造階高、横架材間の相互間の垂直距離の違い


 なぜ、横架材間の垂直距離で規定されているものがあるかを考える前に意匠上の階高、構造階高、横架材間の相互間の垂直距離の違いについて、説明します。下図に示す通り、意匠上の階高、構造階高は違います。横架材間の垂直距離は構造階高とも違います。
階高.png
 意匠上の階高は各階の床仕上げ間の高さです。そして、構造階高とは構造計算を行うための階高です。構造解析は大きさを持つ柱、梁を線材にモデル化します。梁芯間が構造階高になります。

なぜ、横架材間の垂直距離?


 では、なぜ、横架材間の垂直距離による規定があるかを考えてみます。

 施行令第四十三条 (木造柱の小径)の規定は、座屈に対する規定です。座屈長さは柱の実長である横架材間の垂直距離で決まるとの考えなのでしょう。

 壁式鉄筋コンクリート造の最小壁長さの規定は必要な剛性、強度が横架材間の垂直距離に影響されるとの考えです。

 座屈に対する仕様規定としては鉄骨造柱の細長比があります。これは横架材間の垂直距離ではなく、座屈長さで高さを考えます。通常は構造階高です。
 同じ座屈に対する仕様規定でも高さの取り方が違います。

 ここで不思議(矛盾?)なのは、壁式鉄筋コンクリート造、他の構造では構造計算は構造階高で行いますが、木造の構造計算は構造階高ではなく、横架材間の垂直距離で行う事となっています。
 柱の圧縮力や接合部に発生する引抜力に主眼を置けば、これも実態に近いとも言えますが。

 座屈の検討は横架材間の垂直距離か、構造階高か?
 
 部材の取付き方にもよるし、部材のサイズ(せい)も影響するでしょう。また、吹き抜きなどに面しているとその長さの取り方も変わりますので注意が必要です。







まとめ

・基準法上の横架材間の垂直距離による仕様規定の確認は上下の梁の内法でOK。
・但し、あくまで仕様規定。構造設計には工学的判断が必ず必要。


posted by 建築構造設計べんりねっと at 16:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 構造設計メモ