RC柱頭配筋に関する問題点、様々な仕様を紹介したが、やはり、問題は柱主筋のフックの必要性だ。
フックが必要となる根拠は建築基準法施行令第73条による。まずは基準法を解読してみる。
施行令第73条によるフックの必要性
令第七十三条(鉄筋の継手及び定着)
鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、コンクリートから抜け出ないように定着しなければならない。ただし、次の各号に掲げる部分以外の部分に使用する異形鉄筋にあつては、その末端を折り曲げないことができる。
一 柱及びはり(基礎ばりを除く。)の出すみ部分
二 煙突
「鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、...次の各号に掲げる部分(柱の出すみ部分)以外の部分に使用する異形鉄筋にあつては、その末端を折り曲げないことができる。」
つまり、柱の出隅部分の鉄筋はフックが必要であるという事です。
もう少し、注意して読んでみます。
・部材の端部ではなく、鉄筋の末端。
・柱の四隅ではなく、出隅。
つまり、柱の出隅部分は最上階の柱頭部のみでなく、主筋の重ね継手部など、鉄筋の末端となる部分は全て、かぎ状に折り曲げる必要があると言う事です。
尚、フック、かぎ状に折り曲げる理由としては技術基準解説書によると「柱、梁の出隅部分や煙突の鉄筋はかぶりコンクリートが割れやすいこと、熱を受け、付着強度が低下することにより、フックを義務付けている」となっています。建築学会の配筋指針では、「柱・梁の出隅部分の鉄筋ではコンクリートのかぶり厚さが2方向となり、かぶり部分のコンクリートが割れやすく、また、煙突の鉄筋ではコンクリートが熱を受けて、付着が低下するおそれがあるためである。」となっています。
つまり、柱については“コンクリートが割れやすい”と言う点を考慮すれば良いのである。
柱の出隅部分ってどこ?四隅ではなく、出隅?
施行令第73条では、四隅ではなく、出隅となっています。技術基準解説書、配筋指針の記載では出隅とはここです。

壁が取付いている部分は出隅ではありません。配筋指針の通り、梁が取付く部分も出隅ではありません。
一つ、注意が必要なのは、梁・壁の寄りによって、出隅になったり、出隅でなくなったりすると言う事です。まあ、梁との取り合いがない部分であればフックも邪魔にはなりません。
さて、東京都建築士事務所協会他の配筋標準図ではフックの位置が柱の四隅となっています。四隅と言うと梁、壁の取付き方に係らず、柱の角の主筋四か所です。
と言う事は、やっぱり、四隅全てにフックが必要になるのか?東京都建築士事務所協会のカゴ筋にはフックが付いていない。やはり、矛盾が多い。。。
施行令第73条を回避する方法
施行令第73条による柱主筋のフックを法的に回避する方法があります。それは、令三十六条2項一号に規定されており、保有耐力計算(ルート3)を行うと施行令第73条の準拠は除外されます。建築学会の配筋指針にも、その旨が記載されています。
もう一つの方法は、建築基準法で規定されている「特別な調査研究」で安全性を確認する方法です。建築学会の配筋指針によると配筋指針が特別な調査研究にあたるそうです。
柱出隅部のフックは、かぶりコンクリートが割れやすいためであるが、「保有耐力計算でその検討を行った?}建築学会は、「かぶりコンクリートが割れないかの研究を行ったのか?」と思うでしょうが、法的には、このようになっているのです。
柱主筋のフックについて、疑問、矛盾は解決していない。
さて、柱主筋のフックの必要性について、まとめましたが、疑問は解決していない。
@東京都建築士事務所協会他の標準図では四隅にフックが必要としている。
A東京都建築士事務所協会のカゴ筋納まりのカゴ筋の末端にはフックが記載されていないが、出隅部は必要なのでは?この納まりは建築学会「配筋指針」の備考9.5の解説図9.9にも記載されている。
B建築学会「配筋指針」では、フックの代わりに拘束帯筋があるが、これで柱主筋の付着力を向上させているとは思えない。
C建築学会「配筋指針」のカゴ筋納まりではフックが付いているが、出隅部でない場合はフックを省略して良いのか?
D建築学会「配筋指針」の柱を立ち上げる納まりでは、柱主筋は出隅部になる。二重帯筋で付着力が改善できるのであろうか?拘束帯筋との違いは?
E建築学会「配筋指針」では四隅にフックを付けることを「通例として」と書かれてる。技術的な根拠はないと言うことか?