2020年05月22日

斜め壁の耐力評価がcosθではなく、cosθの二乗を掛ける理由

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 木造や壁式鉄筋コンクリート造で平面的に斜めの壁(A-B)がある場合、座標軸方向(加力方向)に対する
その壁の耐力評価方法 P'は以下となる。
P' = P・cos^2θである。
P:壁の耐力、θ:座標軸(加力方向)となす角度

単純に水平投影長さ(A-B')であるcosθではなく、cosθの二乗である。
斜め壁@.png





cosθの二乗を掛ける理由を考える。
斜め壁A.png

 上図のように斜め壁A-Bがある。この壁の加力方向(X方向)の水平投影長さは、L・cosθである。この壁に対し、X方向に加力した場合、δの変位がしたとする。(C-Dに移動)しかし、壁は材軸方向の耐力であるので材軸方向の変位δ’はδ・cosθになる。よって、X方向加力時の壁耐力は壁実長Lに対し、cosθの二乗で評価する。

 この説明は正しいのか?



単純なモデルで検証してみる。
 下図のように1辺が1mの壁がある正方形の建物が45度傾いた場合を考える。
斜め壁B.png

 水平投影長さで考えた場合、X方向では、cos45°で評価すると1/√2の4枚分なので以下となる。
 壁長さ:1/1.414×4 = 2.82m

 45度方向で考えた場合の壁長さは、もちろん、2m。これでは多く評価してしまう事になる。
 cosθの二乗を掛けると以下となる。
 壁長さ:1/1.414^2 ×4 = 2m
 これなら、問題ない。

 やはり、cosθの二乗を掛けるのが正しいのか?

座標軸に対し、平行方向と斜め方向の壁が混在する場合を考える。
 この場合の有効な壁耐力は前述の通りである。しかし、剛性は正しく評価されているのだろうか?
 このcosθの二乗を掛ける考え方は、剛性は耐力に比例するとの仮定の上、手計算で行う簡易は構造計算方法の場合のものと考える。

 やはり、cosθの二乗ではなく、加力方向に対し、XY方向に分解した剛性で評価すべきと考える。そして、
上記のように45°傾いた建物では加力方向を変えて、検討する必要がある。剛性評価を考えた場合、cosθの二乗で評価する事は必ずしも安全とは限らない。

 結論としては斜め方向に剛性を持つ部材として、立体解析で計算を行い、加力方向を変えた場合も検討すべきと考える。

 アークデータ研究所のASTIMであれば、この検討が可能か。この検討が出来ないプログラムの場合は手計算で追加の検討を行うべきである。
 
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2020年03月20日

RC柱頭配筋の不思議C〜正しい配筋の考え方はコレ。

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 RC造の最上階柱の柱頭配筋について、考えてきたが、正しい配筋の考え方、私なりに考えた望ましい納まりをまとめる。




柱頭部における柱主筋末端のフックについて
・梁や壁が取り付く部分は出隅にはならず、フック不要。
・拘束帯筋を設けることにより、柱四隅の主筋末端のフック不要。
・「配筋指針」解説図のカゴ筋納まりの場合はカゴ筋末端はフック不要。


(解説)
1.施行令第73条の「鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて」は令36条2項一号により、保有耐力計算(ルート3)を行うと除外される。また、日本建築学会「配筋指針」は建築基準法上の「特別な調査又は研究」にあたり、同じように除外される。
2.柱出隅部の鉄筋末端にフックを付ける理由は柱の角のコンクリートが割れた場合、鉄筋の付着力が低下するのを防止するためである。しかし、このような事を言い出したら、きりがなく、この目的でのフックは不要と考える。
3.「配筋指針」では各種指針の四隅フックは、通例として、行われているものと書かれており、工学的根拠は多くない。
柱頭部の柱主筋の定着長
・柱主筋は梁に直線L2又はフック付きL2hの定着長が必要である。
・カゴ筋納まりの場合もL2hの定着長を確保する。
・定着長は仕様規定(**d)ではなく、計算により、確認する事で短くする事が出来る

(解説)
1.どの納まりでも柱主筋が抜け出ないようにする仕様とする必要がある。付けアンカーのような事をする場合も同様である。
2.配筋指針などの定着長L2は施工管理が煩雑にならないようにまとめられ、又は丸められている。柱頭部においては定着長を計算で決定する事をすすめる。鉄筋とコンクリートの種類のみで決定するものなので、この部分のみであれば、それほど煩雑にはならない。
柱頭の無筋状態部分の改善
・カゴ筋納まり又は柱内拘束筋の設置を推奨する。
(解説)
柱主筋四隅フックで無筋状態の部分が発生することは、やはり、問題である。各種標準図でこれが改善されていないことも通例なのだろうか。特にセットバックをしており、下層階でこのようになる部分については要注意である。
推奨する柱頭の納まり



以上から考えると日本建築学会「配筋指針」備考図9.9 右側の納まりの最善と考えます。

柱頭配筋.png


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2020年03月16日

RC柱頭配筋の不思議B〜柱主筋の定着は必要?

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 最上階の柱頭のみではなく、RC部材の仕口部は鉄筋により、緊結、一体化しないとならない。柱の最上階の柱頭については柱主筋が抜け出ないようにL2の定着長を確保しなければならない。

 柱主筋の定着について、考えてみる。
昔は柱主筋の定着長に関する基準はなかった。
 「昔は、こうだった。」だから、不要と言う訳ではありませんが、昔は柱主筋のL2定着との基準はありませんでした。柱主筋L2定着の基準は日本建築学会「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」2003年版からです。東京都建築士事務所協会等の配筋標準図等でも柱主筋L2定着の記載はありませんでした。
 RC規準における付着、定着に関する基準が改定された事を受け、配筋指針も改定されました。現行の配筋指針2010年版においても同様の基準です。
 今、考えれば、この基準が無かった事は指針、標準図の不備としか思えません。




カゴ筋納まりは柱主筋の定着は不要?
 2003年以降の配筋指針では最上階柱頭の納まりは柱主筋を梁にL2定着、L2定着確保のために柱を立上る、カゴ筋納まりの3通りがありますが、この3通りの使い分けを考えると以下のように読めます。

・基本は柱主筋を梁にL2定着(又はフック付きL2h定着)
・定着長が確保できない場合は柱立上げ又はカゴ筋納まり
※カゴ筋納まりには柱主筋の定着長に関する記載はない。

カゴ筋納まりは柱主筋の定着は不要?

 梁せい、柱幅、柱主筋の種類にも寄りますが、考えなくとも良いはいかないでしょう。この件についてはRC規準2010年版のQ&Aに記載されており、カゴ筋納まりについても柱主筋の定着は必要です。
 どこの長さで定着長を考えるかですが、まあ、直線L2hが確保出来れば、問題はないと考えます。
隅柱では柱主筋の定着は不要?
 隅柱におけるL型接合部においては梁の主筋を立ち下げた部分で定着長L2を確保する事となっています。この部分においても柱主筋の定着は必要でしょうか?
L型接合部.png
 柱主筋の定着が必要な理由は柱と梁を一体化する、柱主筋が抜け出ないようにする事です。梁の定着長を
L1とし、重ね継手とすれば柱主筋の梁への定着長は不要と考えます。
最上階柱梁仕口部における無筋部分の問題について
 最上階柱の柱頭部における配筋の問題点として、柱主筋をフック付きとした場合、柱主筋が梁上端筋の下で
止まる事により、無筋状態の部分が発生する事です。
 これは仕方ない部分もあるかも知れませんが、胸を張って、問題ないとは言えない。やはり、カゴ筋や日本建設業連合会の標準図にある柱内拘束筋などが望ましいでしょう。






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