前回、大梁の経済的な断面算定方法の解説をしました。次は柱の断面算定及び経済的な設計手順について説明します。
柱の断面算定ですが、基本は梁と同じです。断面サイズを上げるよりも鉄筋本数を増やすことを優先します。引張力が大きい場合は特にそうです。

構造設計の参考書では、一次設計は二次設計(保有水平耐力検討)を見越して行うとあります。確かに柱が弱く、保有耐力で塑性ヒンジが発生する状態では耐力も出ません。一次設計では柱耐力(断面、配筋)に余裕を持った設計が必要です。
ですが、
あえて、二次設計(保有耐力計算)は考えずに一次設計(許容応力計算)をまとめることを勧めます。
二次設計の状態を完璧に把握し、最適な設計が出来る突出した能力を持っている構造設計者なら、良いでしょう。しかし、普通の構造設計者では設計作業の効率は上がっても、コストに対して、最適な断面、配筋を設計するのは、この方法では困難です。
まずは一次設計で最小限の断面、配筋を設定します。その為には一次設計がまとまるまで、一貫構造計算プログラムの保有耐力計算を行わないことです。
次に一次設計における主架構の検討手順です。多くの構造設計者は以下順番で設計します。
@大梁の断面設定及び主筋の算定
A大梁のせん断設計(スタータップ算定、コンクリート強度設定)
B柱の断面設定及び主筋の算定
C柱のせん断設計(フープ算定、コンクリート強度設定)
D柱梁仕口部の検討(柱断面、コンクリート強度設定)
E耐震壁の設計
私は経済的に構造設計するために以下の検討手順を勧めます。
@大梁の断面設定及び主筋の算定
A柱の断面設定及び主筋の算定
B柱梁仕口部の検討(柱断面、コンクリート強度設定)
C柱のせん断設計(フープ算定、コンクリート強度設定)
D大梁のせん断設計(スタータップ算定)
E耐震壁の設計
理由はせん断設計(スターラップ、フープ、コンクリート強度)を無駄なく経済的に行うためです。コンクリート強度を上げることは、その層全体に影響を与えます。Fc24とFc27の材料差額は450円/㎥程度であり、面積当たりにすると0.23%のコストアップです。尚、Fc30からは高性能AE減水材の使用により、Fc27との差額は1,100円/㎥になり、面積当たりで0.57%のアップです。金額にすると先にあげた建物例では数十万円違う事になり、慎重に行うべきです。
せん断設計が一番厳しいのは柱梁仕口部、次に柱です。コンクリート強度を上げる判断をするのは、ほとんどがこの段階です。先に大梁のスターラップを決め、後でコンクリート強度を上げるとなると無駄な配筋となってしまうのです。柱フープも同様です。
最後に柱設計の補足です。各階同じ間取りのマンションなどで柱断面を上階に向かって、絞っていったが、PS、MBとの納まりで結局、増し打ちしていると言う事があります。断面を絞るためにコンクリート強度を上げている事があれば、逆に不経済です。よく意匠と打ち合わせを行い、断面設定をする事が重要です。
≪まとめ≫ ●●柱も基本、鉄筋本数を増やすことを優先する。但し、意匠との納まりをよく確認し、不要な増し打ちがないように断面設定を行う。 ●せん断設計は、大梁、柱の曲げ設計、柱梁仕口部の検討の後に行う。 ●コンクリート強度を上げる判断は慎重に。特にFc27とFc30は大きく違う。 |
P投げ銭!