2019年10月28日

構造の経済設計「間違った経済設計手法」

一般に良く聞く構造の経済設計手法について、考えてみます。
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『躯体断面は揃えた方が型枠の転用が出来、コストが下がる?』
答えは×、間違いです。

柱、梁の断面は各階、同じ断面とする方が数量は上がっても、型枠の転用が出来、単価が安くなるのでコストが下がると言う人が居ます。確かに型枠が転用出来れば、型枠大工さんは加工も少なく楽です。
ですが、実際のところは単価は下がりません。型枠工事費は、1u当たりの単価の市場動向が他の工事費、材料と同じように出されています。
建設ナビ https://www.kensetu-navi.com/

もちろん、建物形状や技量によって、各会社の型枠工事費は変わりますが、この市場単価が基準となってしまいます。また、取引先ごとに単価もある程度決まっています。

誰だって、手間が通常よりも多い事をアピールして、単価を上げたいものです。競合になっていれば別ですが、敢えて、単価を下げる会社はありません。

コストは下がりません。

構造設計の設計料金もそうですよね。大変さをアピールして、設計料金を上げようとしますよね。

また、階数が少ないと型枠の転用もたいして出来ません。大工さんも断面が小さくなれば、同じ型枠をずらして、建て込むなどの工夫をします。手間もたいして変わりません。

各階で断面を変えた図面で見積りを取り、断面を揃えたら、単価を下げられるかと値交渉すれば下がるケースもありますが、構造計算をやり直す事になり、そこまでは出来ません。


『柱を減らすとコストが下がる?』
答えは×。間違いです。

「柱を減らすと杭が少なくなる。だから、安い。」と考える人が居ると思いますが、逆になる事が多いです。まず、柱を減らしても基本的には建物の重量は変わりませんので基礎、杭に対する負担は減りません。柱を減らしてスパンを大きくすると柱に係る数量以上に梁が大きくなり、重量が増えます。場合によっては梁が大きくなった分、階高が上がります。むしろ、建物重量は増えます。上部構造のコストは確実に上がります。
杭本数は減るかも知れませんが、杭径が大きくなるか、杭配置を分散させただけで安くはなりません。
また、地中梁には杭頭曲げモーメントが大きな影響を与えますが、杭箇所を集中させると地中梁の負担が増え、断面が大きくなります。それにより、根切り、山留が増える事がもっと大きなコスト増になります。
柱が少なくなると意匠屋さんは喜び、一見、コストが下がるようですが、逆です。

『部材符号は全て別符号とすれば、各部で必要最低限の断面、配筋が選定出来、経済出来る?』
答えは×、間違いです。

断面検定を行う部材が増え、頑張って感がありますが、このような設計をしていてもコストは下がりません。むしろ、上がります。

例えば、連続する大梁で柱の左右で主筋本数を変えても、引き通して、定着させる事になるので対して、数量は変わりません。また、全ての部材に別符号を付けても、結局、ほとんど同じ配筋になっていると言う事も多くあります。

何よりもこのような設計をする人は、応力をチェックする、調整するとの構造設計に必要な作業を放棄しているのです。一貫構造計算プログラムの解析結果で部材がNGの場合、配筋、断面を増やすだけが、OKにする方法ではありません。架構モデルや部材剛性を調整して、部材を納めるのが経済的な設計にもなるのです。
このような事をしていると不経済になるだけならまだしも、モデル化のミスも発見出来ません。

確実に増えているのは、図面の枚数、つまり、構造設計料金でしょう。


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2019年10月25日

構造の経済設計「高強度鉄筋の使用方法」

 柱や梁の断面算定で本数を増やすか、強度を上げるか、どちらにすべきかと考えることがあるかと思います。ここでは経済的な高強度鉄筋の使用方法について、説明します。

1.高強度フープ
 柱や大梁のせん断補強に高強度せん断補強筋(KSS785)を使用する事は良くある事と思いますが、材料単価は220,000円/tとSD295A(70,000円/t)に対し、3倍以上の金額となります。材工ではそれぞれ、271,000円/t、121,000円/tです。
 価格比2.24倍に対し、材料強度の比は2倍(590/295)ですのでコスト的には不利な材料です。

 以下に高強度フープを使用した場合とSD295Aを使用した場合の柱の短期許容せん断耐力、金額の比較を示します。
高強度フープ.png

 ケース@は片方向が耐震壁付きを想定した場合、ケースAは両方向とも耐震壁無しとした場合、SD295Aにおいて、Pwを上限まで増やした場合と高強度フープを使用し、同等のせん断耐力とした場合の比較です。
 ケース@では1.34倍、ケースAでは1.12倍の金額差があります。

 つまり、SD295Aで本数を増やして対応出来る範囲では、高強度フープは使用しない方が経済的なのです。梁についても同様です。

 尚、中子筋を増やすために主筋本数を増やすと逆転してしまう場合があるので注意が必要です。(D25:486円/m・本、D29:620円/m・本)また、せん断補強筋にSD345を使用する方法も考えられますが、現場での管理が煩雑になるので避けた方が良いでしょう。






2.柱梁の主筋
 柱、梁の主筋は通常、D22〜D32を使用し、D25以下はSD345、D29以上はSD390を使用します。この使い分けについて、説明します。
 材料単価はSD345:71,000円/t、SD390:72,000円です。強度の差は1.13倍(390/345)ですのでコストの上昇分以上に強度が上昇し、コスト的には有利な材料です。
 ただし、1本あたりの強度が大きくなるので、部材耐力を細かく調整する事が出来なくなります。では、どこから、切り替えるべきか。以下にD25(SD345)とD29(SD390)の鉄筋本数ごとの引張強度、単価をまとめました。
柱梁主筋.png

 7-D25と5-D29など、同じ色を付けた部分を比較してみて下さい。D29(SD390)の方が強度は上がり、コストが下がります。鉄筋本数が4本以下となると梁でカットオフにより、本数を減らす効果が減りますので、D25からD29に切り替えるのはD25で鉄筋本数が7本以上となる場合が経済的です。

 鉄筋本数を減らすと圧接コストも下がるでの更に有利になります。

≪まとめ≫
●高強度せん断補強筋は、SD295Aで本数を増やし、対応できない範囲では使用しない。
●柱、梁の主筋は7-D25以上となる場合は、D29(SD390)を使用する。





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2019年10月23日

構造の経済設計「配筋の増やし方を知る」

 次に簡単な構造の経済設計手法は「配筋の増やし方」です。

 柱や梁の主筋は径と本数の組み合わせになり、検定比を見ながら、1本づつ調整が出来ますので大きく変わることはありませんが、ピッチで指定するスラブや梁スターラップ等はその増やし方により、数量に与える影響は少なくありません。なんとなく決めている組合せをコストを算定してみれば、経済的な選定が出来ます。

1.スラブ配筋の組合せ、増し方

 スラブ配筋を決定するにあたり、クリティカルになるのは主筋方向の上端筋です。下端筋は計算外で決定されている事が多いと思います。また、施工性のために上下の配筋は同じピッチか倍ピッチとします。

 以下に各スラブ上端筋の鉄筋量、下端筋との組合せ、1uの金額の一覧を示します。尚、複筋比は0.40%以上となるようにしています。また、施工時のスラブ筋の乱れ防止のために最低配筋はD10,D13@200としています。
スラブ.png

 例えば、上端筋がD13@100となる場合、下端筋をD13とし倍ピッチ、D10で同ピッチが考えられますが、D13倍ピッチの方がコスト的に有利になります。また、D10,D13@125、はD10,D13@100の配筋は下端筋との組合せを考えると上端筋をもう1ランク上がてしまった方が経済的になります。
 その他、上端筋を125ピッチ、下端筋を倍の250ピッチとする組合せも使用しましょう。施工時にスラブの上を歩く時は主筋方向上端筋の上に乗るのが現場の基本です。下端筋はスラブ筋の施工時の乱れには影響しません。
 また、通常はD13@200で足りないとD13@150に上げるかと思いますが、鉄筋量ではその間にD10,D13@150があります。D13@150とは、175円/uの差がありますので積極的に使用しましょう。配筋の手間が気になりますが、D10,D13@200は普通に行いますのでそれほど手間は増えません。鉄筋屋さんも慣れたものです。

 以上をまとめると上記表の灰色の部分を除いて、順番に増やしていくと経済的なスラブ筋の選定が出来ます。

 尚、配力筋も最低配筋をD10@200ではなく、D10@250とすると1u当り、136円の差が出ます。コスト比較例の建物全体では577,722円の差が出ます。

136円/u×42.0m×14.5m×7層 = 577,722円

 こちらもスラブ筋の乱れを気にする方も居るかと思いますが、上で説明しましたように施工時に乗るのは上端筋ですし、養生のために通路にはメッシュが引いてあります。特に問題はありません。




2.梁スターラップの増やし方

 次に梁スターラップの増やし方を考えてみましょう。通常は200ピッチ、150ピッチ、125ピッチ、100ピッチと増やし、100ピッチで足りない場合は3-D13@100、4-D13@100と中子筋を増やしていく方が多いと思います。

 ここでスターラップの加工形状を見てみましょう。せん断補強として機能するのは縦方向の鉄筋です。上下の横方向の鉄筋は閉鎖型とするためのせん断補強として機能しない部分になりますが、スターラップのピッチを増やすとこの機能しない部分の鉄筋量が増えます。中子筋は全てが機能する鉄筋です。
中子.png


 以下にスターラップの組み合わせとせん断補強筋量(cu)、1m当りの金額を示します。金額は梁断面を 550×800、地中梁を想定した550×2000で比較しました。
STP.png

 せん断補強筋量としては、2-D13@100、3-D13@150、4-D13@100も同じ25.40cuです。しかし、上下部分の鉄筋量の差があるのでコスト的には4-D13@100が一番有利になり、1m当り、609円の差が出ます。コスト比較例の建物でX方向の梁に対して、考えると約30万円の差が出る事になります。
609円/m×42.0m×2×6層 = 307,036円

 以上をまとめると上記表の灰色の部分を除いて、順番に増やしていくと経済的な梁スターラップの選定が出来ます。
 尚、梁せいが大きくなり、幅とせいの比が2倍以上となると逆転する部分がありますので注意して下さい。

≪まとめ≫
●スラブ配筋はD13@200の次はD10,D13@150を使用する。
●スラブの主筋方向下端筋及び配力筋は250ピッチを使用する。
●梁スターラップは、ピッチを増やす前に中子筋を増やす。







さて、まずは簡単な経済設計手法から、スタートしました。特別な知識、技術も必要なく、こんな簡単な事で100〜200万円のコストを下げる事が出来ます。手間もかかりません。是非、実施すべきです。
大切なのは、どちらを採用するかと考えた時になんとなくではなく、コスト比較を行う事です。

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posted by 建築構造設計べんりねっと at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済設計手法