2019年11月05日

構造の経済設計「大梁の断面算定方法」

 経済的な大梁の断面算定方法について、説明します。



 前々回、上部構造全体における型枠、鉄筋、コンクリートの金額の比較を行いました。同じように梁断面について、比較を行います。

梁断面.pngB✕D:550×850
上端筋:8-D29
下端筋:6-D29
STP:4-D13@200
腹 筋:2-D10
CON:Fc27

■梁断面における各工事の価格
梁数量.png

 上部構造全体では型枠工事の金額が最も大きかったですが、梁や柱については鉄筋の金額が一番大きくなります。では、断面算定でNGであった場合、鉄筋を増やすよりも梁せいを上げた方が経済的かと言うとそうではありません。

 まず、最初に確認が必要なのは、型枠数量は梁断面を上げても、そのまま増えてないと言う事です。下図に壁付の梁と壁なしの梁の断面を示します。
梁型枠.png

 梁幅を増やしても、スラブ型枠と相殺されるので梁底型枠は増えません。また、壁付きの場合は梁せいを上げてみ壁型枠と相殺されるので梁側型枠は増えません。なお、スラブ、壁と重なっている部分はコンクリート数量も増えません。

 以下にシミュレーションをしてみます。
ケース@:<壁なし梁>鉄筋本数を増やす。(上端筋 8-D29 → 9-D29)
ケースA:<壁なし梁>梁せいを上げる。(梁せい 850 → 900)
ケースB:<壁なし梁>梁幅を上げ、鉄筋本数を増やす。上端筋 8-D29 → 9-D29、梁幅 550 → 600
ケースC:<壁付き梁>梁せいを上げる。(梁せい 850 → 950)

梁比較.png

 ケース@はまだ、主筋が並ぶ余地がありますので、単純に主筋本数を増やす方法です。この断面、配筋で断面算定がNGとなる場合、まず、普通に行う事です。鉄筋量が増え、価格は2%アップ、耐力は13%アップします。

 ケースAは、梁せいを上げる方法です。型枠数量とスターラップ、コンクリートが増えます。価格は4%、耐力は6%アップします。

 ケースBは、主筋本数を増やすために梁幅も上げる方法です。型枠はスラブ型枠と相殺され、増えませんが、鉄筋、コンクリートが増え、価格は4%アップ、耐力は13%アップします。価格増はケースAと同じですが、耐力増はこちらの方が大きくなります。

 ここから、分かるように断面算定のNGを解消する場合、梁せいを上げるよりも梁幅を増やして、主筋本数を上げる方が経済的です。

 最後にケースCは、壁付きの梁において、梁せいを上げる方法です。型枠は壁型枠と相殺されるので増えません。若干のコンクリートとスターラップが伸びる分の鉄筋量は増えるのみです。価格増はケースA、Bと同等で耐力はケースBと同等です。

 壁付きの梁であれば、梁せいを上げる事が経済的となります。但し、梁せいは階高に影響することが多く、梁せいを上げたことで階高が上がってしまうのであれば、その階全体に影響し、コストも増えてしまいます。
 また、梁幅も無条件に上げる事もできません。梁幅を上げることでパイプスペース(PS)が押され、デッドスペースが増えてしまうようであれば、建物全体としての経済性は損なわれてしまいます。

 まとめると以下になります。


≪まとめ≫
●壁付の梁は階高、意匠、設備に影響しない範囲で梁せいは極力大きくとる。
●曲げ耐力を上げる場合は意匠、設備に影響しない範囲まで梁幅を上げ、鉄筋本数を増やす。
●基本は梁せいを上げるよりも鉄筋本数(梁幅)を増やすことを優先する。




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2019年11月01日

構造の経済設計「柱1本の値段」※おまけ

構造の経済設計手法とは違いますが、柱部分(面積)の不動産価値について、考えてみます。

例えば、1m×1mの柱が部屋の中に1本増えると部屋の有効な面積は1u減ることになります。もちろん、部屋の専有面積は壁芯で算定されますが、不動産屋さんも馬鹿ではないので、有効な面積で不動産価値が評価されます。

神奈川県横浜市の以下のマンションで考えてみます。
専有面積:71u、販売価格:4,500万円
16B7FF4D-3AB8-4D1E-93BF-8CC37F64875F.jpeg

現状、柱は部屋の四隅のみですが、Y方向の中央に各スパン1本ずつの1m×1m(面積:1u)の柱が必要になったとすると部屋の有効な面積は1.4%減る事になります。一部屋当たり63万円の価値が下がります。
1.0-70u/71u=1.4%
4,500万円×1.4%=63万円

つまり、売上が1.4%減る事になるので、同じ利益を上げるには、その分、コスト(原価)が下がらないとなりません。面積当たりにすると約9,000円/u(30,000円/坪)です。

前回、躯体(上部構造)の価格(原価)が約170,000円/坪と説明しましたので、約18%の原価削減が必要です。





構造で柱を追加する事でコストが下がっても、躯体費を18%も下げることは困難です。

東京都新宿区のオフィスビルで同じ計算をしてみます。月額の賃料は30,000円/坪程度です。
上記のマンションと同じ広さを考えると月当たり約64万円です。30年間の運用を考えると2億3,000万円です。この1.4%とすると320万円(150,000円/坪)

骨(構造)を全部無くせのレベルです。

もちろん、構造が安全であることが大前提であり、構造を成立させるために柱の追加が必要であれば、構造設計者は自信を持って、程度すべきです。
ですが、柱1本分には、これだけの価値がある事を構造設計者は認識すべきです。もちろん、そうならないように意匠設計者も考え、プランを作るべきです。

なんか、不動産屋さんだけが喜ぶ内容でしたね。


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2019年10月30日

構造の経済設計「RC造は型枠数量を減らすこと」

RC造構造躯体に占める各工事の金額を概算で算定すると以下になります。
概算数量は単位面積当たりの歩掛を使用します。




●RC造のコスト比
コンクリート:0.89×14,920=13,280円/u
鉄筋:0.12×121,000=14,520円/u
型枠:4.95×4,900=24,260円/u

合計:52,060円/u(172,320円/坪)

以上のように上部構造躯体で最もコストが掛かっているのが型枠です。1/2弱が型枠工事です。つまり、構造の経済設計、コストダウンをするには型枠数量を減らす事が最も効果的です。これは各部材単位で考えた場合も同じです。
images (1).jpeg
まず、この事を頭に入れておきましょう。各部材の経済設計手法は別の所で説明します。

では、型枠はどの部分が多いかと言うとずばり、壁です。

壁が取り付いている柱、大梁だと断面形状を変えても型枠数量は変わりません。柱や大梁の断面を絞るよりもRCの壁を無くしてしまう方が経済設計には効果的です。極端に言うと外壁を全て、サッシ、内壁を全て、乾式とすると構造のコストは大幅に下がります。但し、サッシの価格はRC壁よりも高いので、建物全体で考えるとコストは上がってしまいます。また、構造で必要な耐震壁もあるでしょう。

結論としては、外壁と構造で必要な耐震壁以外は全て、乾式壁とする事が最も経済的な計画です。計画を見て、乾式に出来るRC壁があるようでしたら、積極的に乾式にする提案をしましょう。
また、階高が上がるような計画を行うと壁型枠が大幅に増加します。階高は極力、抑える計画とする事が重要です。階高が上がると躯体以上に高い壁の仕上げも増え、更にコストがあがります。

次に型枠が多いのはスラブですが、スラブ型枠は床面積で決まるので減らすことは出来ません。

その他、RCから変えられるものとしては、手摺りなどがあります。

こう考えると壁式構造はコスト的には効果が良くない構造形式だと言う事も分かると思います。

尚、補足ですが、この事は鉄骨造でも同じです。外壁サイディングの場合は壁下地のC形鋼がかなりの数量になります。非構造部分をなくした方がコストは下がります。



≪まとめ≫
●上部構造躯体で最もコストが掛かっているのが型枠
●構造コストを下げるにはRC壁を減らすのが一番効果的



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posted by 建築構造設計べんりねっと at 08:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済設計手法