2019年11月09日

構造の経済設計「構造設計におけるVE案とCD案の違い」

VE案とCD案の違いは、一般的な説明だと以下のようになります。




 VEとは、「Value Engineering(バリューエンジニアリング)」の略で、性能や価値を下げずにコストを抑えること。
 CDとは、「Cost Down(コストダウン)」の略で、性能、価値が低下しても良いことを前提として、コストを下げる変更を行うこと。
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 さて、実際はどうでしょう?正しい意味でVE、CDが使われていますでしょうか?事例を考えてみます。

 CD案は性能、仕様を下げても良いのが前提なので、事例を上げるのは簡単です。
・耐震等級2で計画していたが、予算がオーバーした為、耐震等級1に変更した。
・設計基準で「望ましい」との表現になっている基準の準拠をやめる。

 では、VEは?
 構造に関するVEとして、考えられるのは、施工者側からの施工方法に関する変更提案や製品、資材の変更提案があります。
・うちの会社では、この施工方法の方が得意であり、コストが下がります。
・うちの会社では、こちらのメーカーの製品の方が安く入手出来ますのでコストが下がります。

では、構造設計段階でのVEとは、どのようなケースがあるだろうか?
 構造設計者が自分の設計、他者の設計に対し、性能、仕様を下げずにコストを下げる事は可能だろうか?それぞれの構造設計者の考えによるが、何らかの性能、仕様(安全率)を下げることになる。

 あるとすれば、明らかな無駄に対する変更のみであろう。

 意匠計画への変更提案により、コストを下げる方法も考えられるが、これも性能、仕様の低下か、明らかな無断が存在すると思われる。

 実際のVE、CDの使い分けは以下であろう。




1.ゼネコンが行うVE、CD。
 CD(コストダウン)案は請負金額を下げることに繋がる。一方、VE案は性能、仕様を下げないとの前提で、実は仕様を下げ、コストを下げている事が多い。仕様 、性能が上がる変更提案をVEとして行う事もあるが、請負金額を下げない提案であることが絶対である。

2.計画、設計段階のVE、CD。
 CDは構造設計者自らが仕様、性能を下げる提案を行うこと。

 VEは、構造設計を行った事務所と別の事務所が無駄な設計の排除と性能、仕様を下げる提案、検討を行うこと。つまり、自分の設計に対してはVEとは言わない。


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2019年11月07日

構造の経済設計「一次設計の経済的な設計手順」





 前回、大梁の経済的な断面算定方法の解説をしました。次は柱の断面算定及び経済的な設計手順について説明します。

 柱の断面算定ですが、基本は梁と同じです。断面サイズを上げるよりも鉄筋本数を増やすことを優先します。引張力が大きい場合は特にそうです。

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 構造設計の参考書では、一次設計は二次設計(保有水平耐力検討)を見越して行うとあります。確かに柱が弱く、保有耐力で塑性ヒンジが発生する状態では耐力も出ません。一次設計では柱耐力(断面、配筋)に余裕を持った設計が必要です。

 ですが、
あえて、二次設計(保有耐力計算)は考えずに一次設計(許容応力計算)をまとめることを勧めます。
 二次設計の状態を完璧に把握し、最適な設計が出来る突出した能力を持っている構造設計者なら、良いでしょう。しかし、普通の構造設計者では設計作業の効率は上がっても、コストに対して、最適な断面、配筋を設計するのは、この方法では困難です。
 まずは一次設計で最小限の断面、配筋を設定します。その為には一次設計がまとまるまで、一貫構造計算プログラムの保有耐力計算を行わないことです。
 
 次に一次設計における主架構の検討手順です。多くの構造設計者は以下順番で設計します。
@大梁の断面設定及び主筋の算定
A大梁のせん断設計(スタータップ算定、コンクリート強度設定)
B柱の断面設定及び主筋の算定
C柱のせん断設計(フープ算定、コンクリート強度設定)
D柱梁仕口部の検討(柱断面、コンクリート強度設定)
E耐震壁の設計

 私は経済的に構造設計するために以下の検討手順を勧めます。
@大梁の断面設定及び主筋の算定
A柱の断面設定及び主筋の算定
B柱梁仕口部の検討(柱断面、コンクリート強度設定)
C柱のせん断設計(フープ算定、コンクリート強度設定)
D大梁のせん断設計(スタータップ算定)

E耐震壁の設計




 理由はせん断設計(スターラップ、フープ、コンクリート強度)を無駄なく経済的に行うためです。コンクリート強度を上げることは、その層全体に影響を与えます。Fc24とFc27の材料差額は450円/㎥程度であり、面積当たりにすると0.23%のコストアップです。尚、Fc30からは高性能AE減水材の使用により、Fc27との差額は1,100円/㎥になり、面積当たりで0.57%のアップです。金額にすると先にあげた建物例では数十万円違う事になり、慎重に行うべきです。

 せん断設計が一番厳しいのは柱梁仕口部、次に柱です。コンクリート強度を上げる判断をするのは、ほとんどがこの段階です。先に大梁のスターラップを決め、後でコンクリート強度を上げるとなると無駄な配筋となってしまうのです。柱フープも同様です。

 最後に柱設計の補足です。各階同じ間取りのマンションなどで柱断面を上階に向かって、絞っていったが、PS、MBとの納まりで結局、増し打ちしていると言う事があります。断面を絞るためにコンクリート強度を上げている事があれば、逆に不経済です。よく意匠と打ち合わせを行い、断面設定をする事が重要です。

≪まとめ≫
●●柱も基本、鉄筋本数を増やすことを優先する。但し、意匠との納まりをよく確認し、不要な増し打ちがないように断面設定を行う。
●せん断設計は、大梁、柱の曲げ設計、柱梁仕口部の検討の後に行う。
●コンクリート強度を上げる判断は慎重に。特にFc27とFc30は大きく違う。



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2019年11月06日

構造の経済設計 「建築構造設計べんりねっとオリジナルプログラム」※おまけ

 『建築構造設計べんりねっと』にて、オリジナルの構造計算補助ツールを販売していますが、経済設計手法を取り入れているものがあります。




自沈層のあるSS試験結果からの地耐力計算

価格:800円 (税別) 累計販売実績:307本

 日本建築学会「小規模建築物基礎設計指針」に従ったスウェーデン式サウンディング試験からの地耐力計算のエクセルシートです。
 告示1113号第2項では基礎下2mの間にWsw1kN以下で2〜5mの間で0.5kN 以下で自沈する層が存在する場合、沈下の検討を行う事となっています。
 本計算シートはこの沈下計算を考慮し地耐力計算を行う事で経済的な設計が出来ます。

直交梁を考慮した木造地中梁計算

価格:500円 (税別) 累計販売実績:110本
 木造の地中梁計算において、直交梁を考慮して検討を行うExcel計算シートです。(2バターン登録)
 KIZUKURI-SUBの地中梁計算風のレイアウトになっています。引抜き力が大きくなる建物隅部の地中梁計算などにおいて、経済的な設計が出来ます。

鉛直・水平でスパンが違う耐風梁

 KIZUKURI Subでは扱いない鉛直・水平でスパンが違う耐風梁の設計です。耐風梁の途中で柱があり、鉛直方向と水平方向で支点位置が違う部分の耐風梁において、経済的な設計が出来ます。

耐震壁開口補強の設計(RC規準2010)

価格:500円 (税別) 累計販売実績:35本
 一貫構造計算プログラムでは耐震壁開口補強の設計がRC規準1999による計算となっているものがありますが、2010年版の設計方法の方が有利側の設計となることが多いと思います。

「靭性保証設計指針」によるカットオフ定着長

 日本建築学会「鉄筋コンクリート造建物の靭性保証耐震設計指針・同解説」及び 「2015年版 建築物の構造関係技術基準解説書」に準拠した梁主筋のカットオフ定着長 (付着)の検討です。
 RC規準1999による検討と本計算プログラムによる検討を使い分けることで経済的な 梁の設計ができます。

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posted by 建築構造設計べんりねっと at 09:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済設計手法