2022年06月25日

ボイドスラブ工法のコスト試算をしてみた。

 ボイドスラブを採用した案件がありましたのでコスト試算をしてみました。





ボイドスラブとは


 構造設計者には説明するまでもありませんが、ボイドスラブ工法とは鋼管やEPSブロック(発泡スチロール)をスラブ内に仕込むことで重量を上げずにスラブ厚、強度を向上させる工法です。この事により、小梁なしの大空間を作る工法です。
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 マンションにおいて、通常の階高設定では小梁形が室内に出るため、小梁位置を考え、間取りを作成する必要がありますがこの工法を使用すると自由に間取りが出来ます。このようなメリットがある一方、コストは上がります。
 尚、遮音性については向上するかどうかは微妙です。遮音性向上を目的としてボイドスラブを採用することは皆無です。
index2_fig03.jpg

ボイドスラブを採用すると1uあたり5,000円程度コストアップ


 以下の条件で在来スラブとボイドスラブのコスト試算(概算)をしました。コスト試算(概算)には『建築構造設計べんりねっと』が提供していますツール「構造コスト試算シート〜コストは建築構造の重要な性能」を利用しています。

ボイドスラブ.png

結果は以下の通りです。
コスト.png

・スラブ単体の比較:5,266円/uアップ
・床組での比較(小梁含む):4,236円/uアップ


この差額は建物全体の総建設費に対し、2%程度となります。

 これはスラブ単体、床組のみでのコスト比較ですがボイドスラブ工法を採用すると建物重量が増えます。概ね5%程度は重量が増えます。これは大梁、柱、基礎に対し、影響がないとは言えない範囲であり、大梁、柱、基礎においても多少のコストアップとなります。

 これらを考慮するとボイドスラブを採用により1uあたり5,000円程度のコストアップになります。



ボイドスラブ採用のポイント


 さて、この価格がどのような影響になるかを考えます。この差額がマンションの販売価格に転嫁されるとした場合、75uのマンションでは50万円ほど価格があがります。
※75u×0.5万円/u×1.1(経費)÷0.75(粗利率)

 マンションの購入者は50万円の価値があると考えるでしょうか?同じ50万円を払うなら、住設機器のグレードアップをしたいと考えるでしょう。
 販売価格に転嫁できないとすると販売側に対しては1uあたり5000円の利益減となります。

 ボイドスラブを採用するのであれば、このメリットを生かした魅力的な間取りとすることが重要でしょう。

構造コストから現在の日本の問題点が見える


 この試算で使用しました「構造コスト試算シート〜コストは建築構造の重要な性能」の登録単価を2022年6月版にて更新しました。
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価格:1,500円
販売:Boothによるダウンロード販売

https://booth.pm/ja/items/3557561

 7月の参議院選でも議論されていますが、現在の日本には以下の問題点があり、新聞、テレビ等でも多く報道されています。
・円安による物価高騰
・上がらない給料


 以下は『建築構造の経済設計〜使える構造VE、コストダウン案 50選付き!』を販売した2021年4月、「構造コスト試算シート〜コストは建築構造の重要な性能」を販売した2022年1月および2022年6月の単価です。

●鉄筋
2021年4月:73,000(円/t)
2022年1月:89,000(円/t)
2022年6月:103,000(円/t)

●高強度せん断補強筋
2021年4月:210,000(円/t)
2022年1月:210,000(円/t)
2022年6月:215,000(円/t)

●鉄筋加工組立
2021年4月:48,000(円/t)
2022年1月:47,000(円/t)
2022年6月:48,000(円/t)

●型枠工事
2021年4月:4,800(円/u)
2022年1月:4,800(円/u)
2022年6月:4,950(円/u)

 鉄筋は141%に高騰しています。しかし、高強度せん断補強筋(溶接閉鎖型加工)については販売価格が上昇していません。つまり、原材料の高騰分を販売価格に転嫁できていないのです。これでは企業は儲からない。
 また、鉄筋加工組立、型枠工事などの工事費(人工費)も価格が上昇していません。構造設計料も変動していないでしょう。これでは給料が上がるはずがない。

 構造コストから現在の日本の問題点が見えます。



posted by 建築構造設計べんりねっと at 13:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済設計手法

2022年01月04日

構造コスト試算シート〜コストは建築構造の重要な性能/最新コスト情報掲載!

構造コスト.png

価格:1,500円(税別)
形式:Excel形式
販売:Booth

 本EXCELシートは建築構造に係わるコストの試算を行うツールです。
 建築構造にとって、コストは重要な性能です。具体的な金額を示すことで、構造設計に対する説得力が増します

@構造体工事に係わる単価(2022年1月版)を登録
 鉄筋、コンクリート、型枠、鉄骨、土工事、木材、鉄骨工法の価格が施工費を含む材工単価で登録されているので簡単に構造コストの試算が可能です。
 単価は物価本、建設物価調査会からの情報です。

A構造体数量の歩掛りデータ、総工事費のデータを登録
 建物の構造、用途による構造体数量の歩掛りデータ、総工事費のデータが登録されていますのでコストの影響、効果を把握することが可能です。
 
B部材数量データを登録
 鉄筋、H形鋼などの重量データを登録しており、コスト試算シートで選択できますので簡単に構造コストの試算が可能です。
 また、シート内で数量の計算が出来る入力形式となっています。

CRC部材のコスト試算
 RC部材における鉄筋、コンクリート、型枠等を含んだコストの算出が可能、比較が可能です。

【使用方法】
コスト試算.png
・入力箇所は灰色のセル部分となります。シートの保護にはパスワードを掛けていませんのでご自由にアレンジして下さい。

・建物種別を選択、階数、建築面積、延べ面積を入力することで総工事費が表示されます。また、構造体の歩掛りデータ、総数量が表示されます。

・部位を入力(任意)、項目および部材を選択、数量を入力することでコストが表示されます。

・数量は計算(掛け算)の入力が可能です。

・自由スペースは合計値、比率の試算など、ご自由に利用して下さい。

・RC部材シートでは梁、柱、スラブ、壁の構造コストの試算、比較が出来ます。
RC部材.png
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2021年04月13日

『使える構造VE、コストダウン案50選』Boothでダウンロード販売開始!

 建築構造設計実務者のためのサイト『建築構造設計べんりねっと』で掲載した『建築構造の経済設計』を改稿、使える構造VE、コストダウン50選を追加し、全102ページにまとめました。(PDF版、2.06 MB)

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価 格 :1,500円
購入方法:ダウンロード販売(Booth)
決済方法:銀行振込、クレジットカード、楽天ペイ、PayPal、コンビニエンスストア決済


https://arc-structure.booth.pm/items/2882373

 使える構造VE、コストダウン案は具体的な金額を示しながらの実践的な手法であり、構造設計者のみならず、意匠設計者、工事施工者、デベロッパー・不動産会社関係者にも判る内容となっています。
大手ゼネコンが行うような特別な工法を採用するとのものではなく、実務で使え、効果がある手法です。


 設計が完了し、積算を行った所、予算がオーバーした。このような時にVE、コストダウンが必要となります。

 最初から経済的な設計が出来ている事がベストではありますが、設計段階では設計者の想い、検討時間(設計期間)、度重なる変更などの要因により、思い掛けず、コスト的な無駄が発生してしまう事があります。

 このような時に思いつきで変更を行ってもコストは下がりません。ポイントを抑え、VE、CDの検討を行う事が必要です。この書籍は建築構造の経済設計構造手法、VE、コストダウン手法をまとめたものです。


posted by 建築構造設計べんりねっと at 07:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済設計手法