2022年12月11日

構造計算を修得するには木造がオススメ!

 構造計算を修得するにはどのような取組みが有効でしょうか。




 私達、構造設計者は構造計算に一貫構造計算プログラムを使用します。構造計算プログラムに入力し、OK、NGの結果だけを見ながら、部材や配筋、材料強度をあれこれ変えれば 、何となく構造計算が出来てしまうこともあります。
 しかし、それでは適切な解になるのに多くの時間がかかってしまいます。そもそも、構造計算結果の妥当性の判断が出来ないと安全性の確保も怪しいものとなります。
“構造計算を修得する”が、“構造計算プログラムの使用方法を修得する”になってしまっている人も少なくはありません。


 構造計算プログラムを使用するには、その計算内容を理解していることが必要です。計算内容を理解し、適切な対応が出来ることが構造計算を修得したとなるのです。





 多くのベテラン構造設計者は構造計算を修得するために手計算を行うことを薦めます。しかし、一つの建物を手計算で構造設計を行うとなると非常に多くの時間を要します。

 そこで、構造計算を修得する方法として、構造計算プログラムを使用して計算した建物の計算内容を手計算で確認する取組みを行うことを薦めます。
 応力計算では複数の通り(フレーム)がありますが構造計算内容を理解することが目的なので1ヶ所で構いません。また、断面算定においても各部材(柱、大梁、小梁、スラブ)1ヶ所ずつで良いです。
 重要なのは重要なのは構造計算の各項目、段階において、計算結果が手計算と合致すること、どの基準に従っているかを曖昧にせず、取り組むことです。

 そして、構造種別としては木造を薦めます。
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 RC造、鉄骨造となると一貫構造計算プログラムで計算することになり、応力解析を変位マトリクス法となります。これは手計算で合致させることは不可能です。木造は構造計算プログラムの内容も手計算で完全に追うことが出来ます。
 複雑な計算だから、手計算で合致させることは出来ないとすると全ての項目、段階で曖昧になってしまい、効果はありません。
 木造と他の構造で違うのは応力解析方法と断面算定方法のみです。これを行えば構造計算全体を理解することが出来ます。
 もちろん、木造はルート1なので保有耐力計算はありませんが、まず最初は1次設計をしっかりと修得することが重要です。



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2022年10月27日

ロシア・ウクライナ情勢、円安の影響で構造設計料が上がる!?

ロシアによるウクライナ侵攻、また、円安の影響で様々な物の価格が高騰しています。消費者物価指数は今年、3%程上昇となっています。
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専門工事業者は実は儲けている


 建設業界においても住宅価格、建設価格が上昇しています。各種専門工事業者は原材料、原油価格の高騰による運搬コスト増を理由に工事費を上げています。これに対し、ゼネコンや住宅メーカーは行政からの指導があり、一方的に価格を押し付けることが出来ないのです。
 では、これら下請事業者が苦しんでいるかと言うとそうでもなく、過去最高益を出してしまう所も少なくありません。




構造設計料は変化なし、実質マイナス!!


 では構造設計料はどうでしょうか。

 構造設計料はどうかと言うと全く上昇していません。今年どころか10年程度変化なしです。当然、所員の給与も変化なしです。しかし、物価上昇を考えると実質3%程度の減少です。
 これを理由に依頼先に設計料アップを相談しても「給与が上がらないのは、うちの会社も同じ。と言うか日本中の会社がそうだ。だから、設計料は上げられません。」と言われるのが落ちです。
業務にあたり海外から何かを購入している訳でもないので円安は理由に出来ない。資材、燃料費アップも関係ない。せいぜい電気代の上昇分くらいでしょうか。

 そもそも、構造設計事務所はがめつい人が少なく、交渉すらしないのが殆どでしょう。



構造設計料の適正価格は?


 皆さんは構造設計料の適正価格を把握していますでしょうか?
「あの会社は○○円しかくれない、この会社は何故か○○円もくれる」と適正価格が分からないのが実状でしょう。
 発注側も理由も分からず、「この事務所は○○円、あの事務所は○○円出さないとやってくれない。」となっています。最初に取り決めした価格が長い期間変わらないのです。
 構造設計の品質(設計者の能力)で設計料の差が出るなら、納得するが必ずしもそうではないと思います。
 もちろん、受注側は少しでも高い会社の仕事を優先し、発注側も少しでも安い事務所に発注します。しかし、どちらも仕事量の関係で二番目、三番目との仕事をせざるを得ないのが現実です。

インフレ時代に構造設計料を上げるには!


 このインフレ時代を生き抜くために構造設計料を上げるにはどうすべきかを提案します。

 各構造設計事務所が設計料(単価、価格表)を開示することです。

 それでは金額の叩き合いになるのではと思う人も居るかとは思いますが逆です。新規の顧客を得るためには安く出した方が良いのですが、既にいくつかの顧客を抱えている事務所は一番高い単価を記載するでしょう。そうすれば、「うちの仕事の時は何故、設計料が高いのか?」との苦情も来ません。
 次に他の事務所の単価を見た別の事務所は下げようと思うよりも「他の事務所がそれだけ貰ってるなら、うちも上げよう」となるはずです。

 このようにして相場が形成されます。こうなると大企業のゼネコン、ハウスメーカーなどは下請法の関係があり、無理に単価を下げることは出来なくなります。
 建築工事の単価(手間代)などは物価本などで出されているため、大きく下げられることはありません。ガソリン価格にしても高いと文句を言う人も少なく、仕方ないよねとなっています。このような状態にすることで価格の納得感も出るので通りやすくなります。

 不透明であった設計料を明確にすることで守られるのです。

 もちろん、技術力に自信がある事務所は実績を示し、単価を上げることも出来ます。




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2022年09月23日

オンライン会議、在宅勤務で構造設計者の生産性が下がった!

 新しい働き方として、オンライン会議、在宅勤務が増えました。私達、構造設計者の生産性は上がったのでしょうか?
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無駄なオンライン会議が増えた


 打合せ、会議のための移動時間が無くなるのは良いことです。会議室、打合せスペースが不要になることもメリットです。

 しかし、気が付いてみると打合せ、会議が増えた。





 今までは「今回の打合せは構造に関係する話は少ないし、わざわざ来てもらうのは申し訳ないから、参加しなくて結構です。」と言った打合せにも、「オンライン会議だから、取り敢えず呼んでおこう」となり、打合せ、会議が増えています。

 結局、1時間の打合せで一言しか話さなかったと言うことも少なくありません。

 カメラをオフにして、別の仕事をする事も出来なくありませんが、集中できず、業務効率は上がりません。中には「カメラをオンにして、お互いの顔が見える形で打合せしましょう」などと余計なことを言う人も。。。

 元々、クライアント、意匠、構造、設備が集まって行う打合せでは構造に関する話は少なく、聞いているだけの時間が長いものでした。そのような会議がオンライン会議により、増えました。オンライン会議によりにより、気が付けば、作業をする時間が減り、生産性が下がっています。

 オンライン会議のメリットとして、資料、図面を画面に共有できることがあります。その図面に書き込むことも出来ます。しかし、だいたいは一方が書き込むだけ。ペンタブレットを使ったもスムーズにスケッチは描けません。やはり、対面で紙の図面を置き、打合せを行った方が精度があがります。

 また、最悪なのは対面の打合せに自分だけオンラインで参加する打合せです。対面で集まっているメンバーは図面を広げ、「ここが。。。」と図面を指で指して、打合せをします。オンラインで参加している自分は全くわかりません。オンラインで参加している一人のために全てを画面上で行うのも遣りづらい。





在宅勤務で電話が増えた


 在宅勤務により電話が増えました。メールやチャットでも良いのですが、どうしてもタイムラグがあり、早く結論を出したい場合はそれぞれの携帯電話でのやり取りとなります。
 今まで、ちょっとした社内の会話なら、業務をしながら、行えば良かったものが、いちいち、手が止まることになっています。
 たちの悪い上司だとちゃんと仕事をしているかの確認のために多くの電話をしてくる人も居ます。だったら、会社に行くよとなってしまいます。

 在宅勤務の一番のメリットは通勤時間がなくなることです。ではこれが生産性向上に繋がるかと言うと関係ないでしょう。通勤時間を業務時間に充てれば一日に仕事が出来る時間は増えます。しかし、企業側、雇う側からすると業務は進むが残業時間(人件費)も増えることになります。

 単位時間当たりの生産性では、やはり、業務環境の良い事務所の方が上でしょう。

有料のオンライン講習は。。。


 各種の講習会もオンラインが増えました。打合せ、会議とは違い、一方的に聞いているだけの講習はオンラインの方が良いでしょう。
 しかし、普段、無料でYouTubeを見ている私達からするとオンラインで費用がかかる事にやや抵抗感も。。。
 また、事務所又は自宅でのオンライン講習となるとどうしても他の仕事をしながらとなってしまう事があります。このようなやり方は一見、効率が良いようで講習をほとんど聞いていないとの事になっています。

構造設計者は対面の打合せ、事務所業務を重要視すべき!


 オンライン会議では打合せがやりづらいと感じている意匠設計者も多いでしょう。私達、構造設計者は意匠設計者から仕事を請けます。対面の打合せを拒むようでは仕事がなくなってしまうでしょう。良い建物を作るには積極的に対面での打合せを心掛けましょう。
 また、打合せテーブルに付いているアクリル板はもう不要ではないですか?せっかくの対面打合せなのに一枚の図面を共有出来ません。

 在宅勤務も減らし、会社・事務所に行くようにしましょう。通勤時間に様々な建物を見たり、建設現場を覗いたりするのは設計者にとって、大事なことです。通勤時間の無駄ではありません。
 もちろん、オンライン会議、在宅勤務にもメリットはあります。対面、出勤を基本とし、上手くオンライン会議、在宅勤務(テレワーク)を使うことが良いでしょう。








posted by 建築構造設計べんりねっと at 10:39| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム