2025年02月02日

【確認申請円滑化策】大臣認定資料のウエブ化

 平成19年6月に改正された建築基準法では大臣認定を取得してる工法(構法)や製品を使用する場合、建築確認の申請書に認定書および認定書別添を添付することとなりました。通常の建物においても、様々な大臣認定を使用しており、建築確認に添付する認定資料だけでも膨大な量になり、この手間(負担)が問題となりました。
 構造で象徴的だったのはトルシア型高力ボルトです。鉄骨造でトルシア型高力ボルトを使用しない建物はありませんが、この材料は各メーカーが個別に大臣認定を取得したものでしたので認定資料の添付が必要となりました。
 トルシア型高力ボルトは実状、規格化された一般材料であり、大臣認定を取得しているどのメーカーのものでも構いませんが、個別認定扱いなので認定番号(メーカー)の指定が必要となります。しかし、確認申請時に施工会社が決定していないこともあり、結果、全てのメーカーの認定資料を集め、添付することになりました。非常に無駄なことです。





 これに対し、平成19年11月に建築基準法施行規則が改正され、建築主事または指定確認検査機関が出版物やホームページで認定資料を確認でき、添付が求めれない場合は添付不要となりました。

 とは言え、世の中には非常に多くの大臣認定があります。また、評定や技術性能証明などもあります。建築主事、確認検査機関がこれらを探すのも非常に手間が掛かるので認定資料を求められるケースは現在も少なくありません。改定などもあるのでそれが申請建物に使用するものか判断が難しいケースもあるでしょう。

 このように多くの書類を添付するのはペーパーレスの時代に逆行しています。電子申請においてもサーバー容量の圧迫します。何よりも書類が多くなれば審査側の探すのに時間がかかります。
 2025年4月からの建築基準法改正で審査件数が膨大に増えることを考えると少なからず問題があります。

 そこで提案!

 認定資料を添付ではなく、設計図書(図面または計算書)に認定資料がウエブ上に保存されているURLまたはQRコードを付けるのはどうだろうか。

ダウンロード.png

 必要であれば審査側がウエブ上で確認すれば良い。認定資料の添付は建築主事または確認検査機関に任されているのでぜひ、良いと思う機関は実施をお願いします。それか、取り合えず、やってみようと思う申請者の方もぜひどうぞ!

QRコードの作成はこちらから
https://barcode-place.azurewebsites.net/




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2025年01月07日

2025年建築基準法改正、一番問題なのは基礎地盤の設計!

 2025年になりました。4月には建築基準法改正が予定されています。この法改正では木造2階建て住宅などで今まで確認申請で審査が行われなかった構造審査が実施されます。いわゆる4号特例が大幅に縮小されます。この4号建築物は日本の確認申請数の80%弱を締めています。今まで、確認申請に構造図書を提出していなかった設計者が対応できるのか、また、構造審査件数が4倍程度になる確認審査機関は対応が出来るのか、日本の建築行政に大きな影響を与える改正が行われます。

 実はこの建築基準法改正(4号特例改正)で最も影響を受けるの地盤(地盤改良)設計です。
地盤改良工事.jpg


 このような状況の中、確認申請の円滑化策として、以下の二つの対策が行われます。実際は法改正の骨抜き、先送りですが。

@新法対応の経過措置
 2025年4月の法施行から1年間は経過措置として、新法の適用をしなくて良いことがあります。対象となるのは壁量計算、柱の小径検討です。

A申請図書の合理化
 木造2階建て300u以下で必要な構造図は基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、二面以上の軸組図、構造詳細図、使用構造材料一覧表、施工方法等計画書、基礎・地盤説明書ですが新しく定められた“仕様表”を添付すると基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、二面以上の軸組図の省略が出来ます。





木造2階建て住宅でも基礎・地盤説明書が必要


 上記の申請図書の合理化により、残る構造図としては標準図のようなものです。ここで注意しなければならないのは基礎地盤説明書は省略が出来ない、確認申請で添付が必要と言うことです。つまり、地盤(地盤改良)の設計です。

 尚、当初の確認申請審査マニュアルでは「地盤調査報告書は添付省略」と記載されており、地盤および地盤改良の計算書は不要と思われていましたが最終版は修正されており、木造2階建て住宅において仕様規定で申請する場合も地盤および地盤改良の計算書が必要になります。

基礎地盤説明書とは?


 建築基準法施行規則第1条の3で以下のように基礎地盤説明書に明示すべき事項が定められています。
・支持地盤の種別及び位置
・基礎の種類
・基礎の底部又は基礎ぐいの先端の位置
・基礎の底部に作用する荷重の数値及びその算出方法
・木ぐい及び常水面の位置

 これでは具体的に確認申請に添付する図書が分かりません。2025年4月からの法改正後、木造2階建て住宅は建築基準法第6条の四号の建築物から、三号の建築物の扱いになります。(法改正後は新二号となります。)
 以下リンク先の確認審査機関のホームページに基礎地盤説明書として提出が必要な図書がまとめられています。

神奈川県建築安全協会
https://kkak.jp/files/libs/1886/201801291929537238.pdf

アール・イー・ジャパン株式会社
https://re-japan.co.jp/cms_rej22/wp-content/uploads/2022/05/16883ac9886456510d3d904930a6805f.pdf
https://re-japan.co.jp/cms_rej22/wp-content/uploads/2022/05/6a43bd710c3390e2ca9ea9f82d7e7f15.pdf

まとめると以下が必要となります。

@地盤調査報告書
A地盤支持力(地耐力)計算書
B地盤補強を行う場合は地盤補強計算書および地盤補強計画図


 地盤調査を実施せずに土質を目視確認と言う方法もありますが、今時、地盤調査を実施しない会社はないでしょう。




小規模建築における地盤設計の現状


 現状、小規模建築における地盤設計は大手ハウスメーカーを除き、地盤調査会社による地盤支持力(地耐力)計算または地盤改良会社による地盤補強設計が行われているのが実情です。尚、この地盤調査会社と地盤補強会社は同じであることが多いです。法改正後の地盤設計もこれらの会社で行われます。

 この地盤会社の設計者は設計が専門ではなく、現場管理や見積り(積算)なども行っていることも多いです。
本業は現場管理でしょう。

 地盤補強工法も様々なものがあります。中には「確認申請に提出する場合は使用できません。」などと堂々と書いているものもあります。このような工法は当然、法改正後は使用できません。










問題は確認申請対応


 この地盤会社ですが、現状も地盤計算書は作成しています。問題はその形式、書式が確認申請に提出するものとして十分かどうかです。今回の法改正で確認審査機関が最も心配しているのは今まで構造図書を確認申請に提出していなかった住宅販売会社が確認審査が出来る図書を作れるのかです。地盤設計についても同じでしょう。

 上部構造については上記で説明しました図書の合理化があります。構造の確認審査は計算書の内容が構造図に適正に反映されているかの確認を行いますが、伏図が省略されるので実質、確認が出来ません。この分、構造審査が基礎地盤設計に向かうことが予想されます。

 地盤調査、地盤改良工事は確認申請対応ができる会社に発注することが必要でしょう。



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2024年12月29日

構造設計業界、2025年はどうなる!?

 2024年も終わりが近付いてきました。2025年の構造設計業界はどうなるか考えてみました。
2025.jpg






トランプ2.0で木造ブームが終了


 2025年1月20日、第2次トランプ政権が発足します。気候変動対策を優先するバイデン大統領政権からエネルギー、環境政策が大きく変わると言われています。エネルギー関連では「化石燃料を掘って掘りまくってエネルギーコストを下げる」との話が出ています。自動車業界を見てもEV(電気自動車)に完全移行すると表明していた自動車メーカーが続きから継ぎえと撤回をしています。
 日本においても菅政権時代に出された2050年カーボンニュートラル実現が大きく見直される事になるでしょう。建築業界においては建築物の木質化が進められており、CLT構造を含む、中大規模木造も積極的に建設されています。しかし、中大規模木造はコストがRC造によりも高い。様々な補助金、助成金があってもまだ高い。これが大きく見直される事になるでしょう。2024年10月に実施された衆議院選挙により、大きく躍進した国民民主党による減税政策により、これも見直される可能性があります。木造による補助金、助成金のメリットは国民?それとも一部の会社?

2025年4月建築基準法改正による混乱はなし


 2023年6月に公布された改正建築基準法が2025年4月に施行されます。この改正建築基準法は公布から施行までが3年と言う異例の期間が設けられました。理由は社会に大きく影響を与える改正であり、多くの準備が必要と考えられたからです。2019年の建築基準法改正による国交省不況よりも大きな影響があると考えられていました。しかし、施行令、告示が出されたのは2024年であり、十分な準備が出来て居ません。申請者側も改正に対する準備を行っていないのが実情です。



 しかし、混乱はせいぜい一か月程度でしょう。何故なら、図書の合理化などで改正建築基準法が骨付きにされたからです。建築基準法改正は以下の背景により、行われました。

@断熱材や省エネ設備の設置といった省エネ化に伴って、建築物が重量化している。壁量が実態に合わなくなってきており、地震時に倒壊リスクがある。
A多様なニーズを背景として、大空間を有する建築物が増加しており、積雪時に倒壊リスク等が高まる恐れがある。
B審査省略制度(4号特例)を活用した多数の住宅で不適切な設計・工事監理が行われ、構造強度不足が明らかになる事案が断続的に発生している。

 これも改善されない結果になるでしょう。

BIMの活用が進む2025年


 2026年、BIMによる確認申請が開始されます。国交省も建設業界の生産性向上のためにBIMに期待していますが、ほとんど普及していません。BIM使用に対する助成金などもあるのが普及していない証拠です。
 2025年はBIMによる確認申請の試行が行われます。このBIMですが、2025年は大きく活用が進むと思われます。それは生産性向上を目的としたものではなく、若手設計者による単なる興味から活用が進むと思います。しかし、生産性向上には余り寄与しないでしょう。やはり、ツールよりも設計者のスキルが重要です。





Aiによる進歩が見込めず


 ゼネコン各社もAIの取り組みを開始していますが、2025年、構造設計業務におけるAIの活用は進まないでしょう。AIによる自動(半自動)構造設計は現実的には出来ないとの結論になります。
 しかし、確認申請の書類作成など部分的な活用は進むでしょう。

構造設計者の収入は


 さて、問題である我々、構造設計者の収入はどうなるか。法改正による構造設計料のアップもそれほど見込めません。ゼネコンも円安、人手不足で大きく売り上げ、利益も増やせません。その下流に構造設計者は恩恵を受けることは出来ません。
 それぞれが自身のスキルを向上させ、収入を上げるしかないでしょう。
posted by 建築構造設計べんりねっと at 10:17| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム