2017年09月19日

建築基準法改正の本当の理由

建築基準法の構造関連規定は過去の大地震がきっかけで改正、強化されてきたと一般には言われていますが、、本当でしょうか?

確かに昔に遡ればそうでしょう。
関東大震災(1923年)⇒1924年 市街地建築法改正
十勝沖地震(1968年)⇒1971年 施行令改正(RC造の帯筋の基準を強化)
宮城県沖地震(1978年)⇒1981年 新耐震設計法導入

平成以降はどうでしょうか?
大地震がきっかけと言うよりも企業(メーカー)、設計者側の問題が要因ではないでしょうか?




1995年には阪神淡路大震災が起きました。その後の建築基準法の改正は2000年になります。この改正では木造建築物における構造設計規定の強化が行われました。
・地耐力に応じた基礎仕様の制定
・地盤調査の義務化
・継手、仕口の仕様の制定
・耐力壁配置のバランス計算の規定制定

改正の内容は木造中心です。もちろん、阪神淡路大震災の影響はありましたが、本当の要因は、秋田杉の需要拡大を目的として設立された第三セクターである住宅販売会社「秋田県木造住宅株式会社」の起こした欠陥住宅問題です。これは社会問題にもなり、自民党の西川議員が国会でも取り上げた事がきっかけで建築基準法の改正、強化が行われました。

もちろん、阪神淡路大震災による構造設計基準の改訂が全くなかったと言う訳ではなく、限界耐力設計法の導入なども行われいます。しかし、この際の説明会では、新設計法の必要性よりも現行設計法の妥当性を強調する説明が多かったのを記憶しています。大震災からの反省と言うよりも現行基準の正当性を訴えたいとの国交省の意向を感じました。
構造関連規定の強化よりも秋田杉問題が基準法改正をさせたと感じざると得ません。

「建築物の構造規定」(現在の「建築物の構造関係技術基準解説書」)の改訂は行われています。柱梁接合部、構造スリット、ピロティの規定が強化されています。その他、日本建築学会の指針も多数改正されています。

次の大きな改正は、2007年(平成19年)になります。
・建築確認、検査の厳格化
・建築士に対する罰則強化
・構造計算適合性判定の導入
・構造設計一級建築士制度の導入

言わずも知れた姉歯建築士による耐震偽装事件がきっかけです。
2004年には新潟中越地震が起きていますが、この改正では実質の耐震規定の強化はありません。

さて、ここ数年はどうでしょうか?
2011年には東日本大震災が発生しています。
2014年に建築法改正が行われていますが、東日本大震災を受けてと言うよりも2007年改正の緩和と言う内容です。

この中には法12条5項の改正が行われ、特定行政庁が建築材料等を製造した工場への立ち入り調査や大臣認定等を受けたものに対しての調査ができるようになりました。
これは東洋ゴムによる免震装置のデータ偽装事件が改正の原因です。

平成28年3月には告示468号「基礎ぐい工事の適正な施工を確保するために講ずべき措置」が施行されています。
これは旭化成建材の杭施工データ改ざん事件が原因です。

このように建築基準法の改正は大地震がきっかけと言うよりも設計者、企業(メーカー)の不適切な対応がきっかけと言わざるを得ません。もちろん、このような設計者、企業(メーカー)は一部であり、殆どは善良にまじめに適切に設計を行っています。しかし、このように一部の設計者、企業(メーカー)の不適切な対応のために大多数の善良な設計者の負担が増えています。

過去の事例を見ても、耐震規定の強化、性能強化と言うのは法改正がなくとも各種建築関連団体による研究などにより、行われていくものです。
問題を起こした設計者、企業には厳しい罰則を科せばよく、不要な法改正などは必要ないと考えます。

社会問題となれば、世間は誰かに責任を取らせることを要求するのでしょう。行政としては世間、国民に対応をしたことを示すために構造設計業界全体に対する措置を行います。しかし、これらの施策は本来の目的のためにはならず、構造設計業界に負担を与えるものであり、良質な建築物を提供することに対し、適切な対応となっているとは思えません。

民間の設計会社、設計事務所、そして、民間の確認検査機関に任せればよい事だと思います。


posted by 建築構造設計べんりねっと at 00:00| Comment(1) | コラム

2017年07月03日

《続》構造設計、楽しいですか?

皆さん、構造設計、楽しいですか?

私は最近、つまらない。

最近の設計者にはモラルも哲学もなくなった。構造設計者の役割は建築基準法と黄色本「建築物の構造関係技術基準解説書」のみに従って、設計すること。
そして、一貫構造計算プログラムを如何にOKにするか、ワーニングを消すか。。。

逆に言うとこれらに対し、OKなら、どんな設計をしても問題ないと思う設計者が増えた。設計の善し悪しが、基準に書いてある、書いてないが判断基準になっている。

よって、構造設計に対する議論も無くなってきている。

更に困った事には設計に対して、責任を持てるのか?と聞くと「私は法律に従って、設計をするだけなので、万が一、壊れても責任はありません。そもそも、実際にもつか、もたないかは誰も分からないし、責任は、そのルール、基準を作った人にあると思います」と言う。

もちろん、万が一の事態が起きた時に損害賠償をせよとのつもりはない。だから、誠実であるべきではないのでしょうか。

彼らの口癖は「構造計算上、OK、NG」

そりゃ、建築構造関係の各種指針や文献も売れなくなりますよね。自分で考える必要はない訳ですから。

適判を含む建築確認の審査制度の問題もあると思います。「告示の○○○号、技術基準解説書のP.○○、プログラムのマニュアルのP.○○に。。。」こんな事ばかり、スラスラ言える審査員も多い。

そこには技術的な議論はない。

構造計算の答えは一つではないはず。そもそも、たくさんの仮定の上での一つ解である構造計算結果が今は、唯一無二の真理になっている。

様々な仮定、条件を変えた複数の計算結果を確認申請の計算書につけようものなら、全ての電算出力の添付を求められ、計算書枚数は万単位の枚数になる。また、それぞれに対して、各部計算を求められる。整合性の名のもとに。

だから、設計者も一つの条件の検討しなくなる。

これでいいのですかね?

最近の設計者の計算書を見ても、ポリシーや哲学を感じられない。ひたすら、確認申請、適判を円滑に通すための資料。

つまらない。

posted by 建築構造設計べんりねっと at 21:26| Comment(0) | コラム

2017年06月12日

CLT構造って、必要ですか?これって、技術?

CLT構造って、必要ですか?






 CLTとはCross Laminated Timberの略称で、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料です。厚みのある大きな板です。
 CLTは1995年頃からオーストリアを中心として発展し、現在では、イギリスやスイス、イタリアなどイギリスやスイス、イタリアなどヨーロッパ各国でも様々な建築物に利用されています。また、カナダやアメリカ、オーストラリアでもCLTを使った高層建築が建てられるなど、CLTの利用は近年になり各国で急速な伸びを見せています。特に、木材特有の断熱性と壁式構造の特性をいかして戸建て住宅の他、中層建築物の共同住宅、高齢者福祉施設の居住部分、ホテルの客室などに用いられています。(以上、一般社団法人 日本CLT協会のホームページから引用)

 日本でも2016年3月31日及び4月1日にCLTを用いた建築物の一般的な設計法等に関して、建築基準法に基づく告示が公布・施行されています。

 海外では9階建のマンションなど中高層建築もCLTで建設された例もあります。

CLTって、木造なんでしょ。はい、木造です。

 確かに木造で中高層建築を作るの凄い技術だと思います。でも、建築主、クライアントは嬉しいですか?

 これって、技術なの?

 木造と言うと戸建住宅に採用される構造であるイメージがあります。なぜ、戸建住宅は木造にする?
 理由は安いからではないですか?同じ価格なら、鉄骨造、RC造を選びませんか?

 中高層建築では未だ、CLTはRCよりもコストが高いそうです。

 これが劇的に安くなるなら、凄い技術だと思います。しかし、現状から考えるとこれから、進歩しても、せいぜい同等か少し安くなる程度だと思います。

 では、何故、CLT構造を推進しようとする人がいる。

 木材を売りたい人、技術者としても自分の名声。。。結局、ユーザーよりも自分の利益のような。

 CLTではないと実現不可能な建物形状があるの言うのであれば、ある程度は発展すると思うが、そんなのあるだろうか。むしろ、他の工法の方が圧倒的に自由度も高い。

 多分、数年後にはなくなっていると思う。
 
posted by 建築構造設計べんりねっと at 22:48| Comment(0) | コラム