2025年01月18日

2025年 建築基準法改正/木造構造計算プログラム対応状況

 2025年4月に施行される建築基準法改正が近づいてきました。ご存じの通り、木構造では構造計算(許容応力度計算)対象の拡大、4号特例の大幅縮小が行われ、ほぼ全ての木造建物の確認申請で構造審査が行われることとなります。
●3階建以上または延べ面積300u超え:許容応力度計算
●2階建以上または延べ面積200u超え:仕様規定の確認





構造計算対象外でも構造計算プログラムが必要になる


 確認申請に添付する構造計算書を作成するには当然、構造計算プログラムが必要です。そして、今後は戸建て住宅などの構造計算の対象とならない2階建以下かつ延べ面積300u以下の建物においても今後は構造計算プログラムが必要となります。

 今回の法改正では従来の壁量計算(四分割法含む)、金物N値計算に加え、柱の小径計算が追加されました。問題なのが、この柱の小径計算です。この検討を行うには柱の負担面積を計算する必要があります。上下階が同じ形であれば計算も難しくはありませんが、上下階で形状が違うと
計算がかなり面倒です。この検討を行うための表計算ツールも公開されていますが、Excelベースであり、任意形状の建物を自動認識し、自動計算が行われるものではありません。

 構造設計者であっても、これを手計算で行うのはかなり手間です。この規模の設計を行うのは構造設計専業の設計者ではなく、意匠設計者が行うのがほとんどと思いますのでこの検討をスムーズに行うには構造計算プログラムの利用が必要不可欠となります。




 木造の構造計算プログラムも大きく分けて、二つのカテゴリになります。一つは建物全体の許容応力度計算を行うものです。もう一つは仕様規定による検討のみを行う簡易なものですが、このプログラムを使用することになります。

構造計算プログラムメーカーの対応状況


 代表的な木造構造計算プログラムメーカーの対応状況は以下となっています。

【KIZUKURI/コンピュータシステム研究所】
https://www.cstnet.co.jp/archi/products/kizukuri/index.html
 KIZUKURIは最もシェアが多い木造構造計算プログラムですが、許容応力度計算プログラムのみで仕様規定検討のプログラムはありません。
 2024年9月にインターフェース、入力方法の変更が行われています。この変更は「2025年に控えた法改正等による環境の変化を踏まえ」とありますが、本日現在、法改正の内容は盛り込まれていません。

【ARCHITREND(アーキトレンド)/福井コンピュータアーキテクト】
https://archi.fukuicompu.co.jp/sys_img/tp_of_detail/_DL_855.pdf
 2024年10月に法改正に対応したバージョン(Version11)がリリースされています。新基準に対応した壁量計算、柱の小径検討の他、伏図省略のための『仕様書作成機能』も搭載されました。

【ホームズ君構造EX/インテグラル】
https://www.homeskun.com/products/homeskzex/
 2024年10月、必要壁量、柱の小径検討など、2025年改正建築基準法にいち早く対応したのがホームズ君構造EXです。

【DRA-CAD 2025/構造システム】
https://www.kozo.co.jp/topics/tpi_20250114/index.html
 構造システムではスタンダードな木造建物の許容応力度計算を行うHOUSE-ST1、不整形な建物も扱えるWOOD-ST、そして、4号建築物を対象とした仕様規定の検討を行うHOUSE-4号のラインナップがありました。2024年8月、HOUSE-4号が販売終了となり、どうなるのかと思っていたら、DRA-CAD 2025に木造仕様規定の検討機能が追加されました。
新しい壁量計算、金物検討、柱小径検討も当然出来ます。
dra1.png
dra2.png

 意匠設計者が構造計算プログラムを使うのは多少、ハードルがありますが、CAD機能であれば取り付きやすいのではと思います。

 尚、HOUSE-ST1もVer.9にて対応法改正対応が行われます。
https://www.kozo.co.jp/program/kozo/house/house-st1/index.html?utm_source=km-nbus7&utm_medium=data_link

【ASTIM/壁量/アークデータ研究所】
https://archdata.co.jp/seihin.html#hastimkaberyo
 アークデータ研究所の木造構造計算プログラムASTIMには仕様規定の検討を対象としたASTIM/壁量がありますが、本日現在、法改正対応の情報はありませんが今後、対応が行われると思います。構造計算プログラムの入力は完全に実状通りに入力するのが難しく、モデル化が必要ですが、アークデータ研究所のプログラムは自由度が高いので複雑な形状の建物も扱えます。

【STRDESIGN(ストラデザイン)/富士通Japan】
https://www.fujitsu.com/jp/group/fjj/solutions/industry/construction/construction/strdesign/#anc-03
 ストラデザインについては本日現在、法改正対応の情報はありません。




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2024年03月07日

プリツカー建築賞、山本理顕氏の構造設計

 建築のノーベル賞といわれるプリツカー賞を山本理顕氏が受賞しました。日本人の受賞は、2019年の磯崎新さんに続き9人目です。

 優れた建築デザインを実現するには構造設計技術が必要です。ここでは山本理顕氏のパートナーである構造設計者を紹介します。
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構造計画プラスワン


 横須賀美術館(2006年)の構造設計は金田勝徳氏が代表の構造計画プラスワンが担当しています。
 ガラスと鉄板の入れ子構造が特徴的なファサードは屋根を鉄骨トラスで構築し、それをガラス面で覆っています。屋根の温度応力を緩和するためにすべり支承が組み込まれています。
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 他にも構造計画プラスワンでは埼玉県立大学、福生市庁舎、広島西消防署、天津図書館など山本理顕氏の多くの作品の構造設計を担当しています。




佐藤淳構造設計事務所


 公立はこだて未来大学(2000年)は日本初のオールプレキャスト構造と言われており、柱の高さが20m、スパン12.6mの8スパンで構成されています。
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 この建物の構造計画は山本理顕氏が木村俊彦氏に相談し、計画しました。実際に構造設計を担当したのは木村俊彦氏の最後の弟子と呼ばれている佐藤淳氏が担当しています。
 その後、佐藤淳氏は公立はこだて未来大学の研究棟、ドラゴン・リリーさんの家の構造設計を担当しています。

他にも多くの有名構造家が


 アラップ(名古屋造形大学)、佐々木睦朗氏(東京ウェルズテクニカルセンター)、ASA / 鈴木啓氏(東京ウエルズテクニカルセンター)など、多くの有名構造家が山本理顕氏の作品に関わっています。

 優れた造形、デザイン、建築機能を実現するには構造設計者の力が必要です。建築構造設計べんりねっとでは山本理顕氏の作品に関わった全ての構造設計者にプリツカー賞おめでとうございますと言います。




タグ:構造家
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2023年11月01日

2025年建築基準法改正(4号特例縮小)説明会速報!

本日11月1日より開催される建築基準法改正の制度説明会に行ってきましたので報告します。

令和4年6月13日に公布された改正建築基準法は1年内施行、2年内施行、3年内施行に分かれており、それぞれの内容について順次、説明がありました。





やはり、焦点は3年内施行となる4号特例の縮小です。

しかし、4号特例縮小に関する新しい情報はなく、資料にも見込み事項と記載されており、決定事項ではありません。

資料に記載がなく、口頭での説明だった新しい情報としては以下の2点です。

1.開示済の壁量規定(令46条)の案ではZEH水準の建物に対する必要壁率が追加され、従来の壁率も残っていましたが、全ての建物について壁量を見直すことになった。

2.壁量、柱の小径算定の設計支援ツール、早見表は11月上旬に公開、パブリックコメントを募る予定。
※資料は住宅木材センターHPに掲載される予定。


全般的に新しい情報がなく、なぜ、この時期に説明会を行ったのかに疑問が残る内容でした。

昨年に行われた第一回説明会では今年の秋に施行令が公布されるとなっていましたが、遅れています。法整備が遅れていることに対する批判を避けるためでしょうか。

その他、4号特例縮小に関する情報は以下よりどうぞ。

https://arc-structure.sakura.ne.jp/report36.htm#new
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