2022年11月03日

建築基準法改正で木造の必要壁量が2倍になる!?

 10月28日、国交省より、施行令第46条の改定案が出されました。

木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準(案)の概要

補足資料





 昨年12月に出されましたパブリックコメントでも「断熱材や省エネ設備の設置といった省エネ化に伴って、建築物が重量化している。壁量が実態に合わなくなってきており、地震時に倒壊リスクがある。」との内容が出されており、この事に対する改定案です。

 国交省の資料によると以下の三つの方法が示されています。

方法@:個々の建築物の荷重の実態に応じて現行規定より精緻に検証する方法

方法A:現行規定と同様に簡易に確認する方法

方法B:構造計算により安全性を確認する方法






 方法@とは建物の実状に応じた地震力を算定し、必要壁率を求める方法です。地震力を算出するのであれば、あえて壁率に置き換える意味が分かりませんが。。。
 方法Bは構造計算によるため、壁量検討については基本、方法@と同じです。尚、この場合は壁量の仕様規定は除外されます。

必要壁量が今までの2倍程度になる?!


 方法Aによる必要壁率は以下は示されています。
必要壁率.png

 一般地域における通常の木造住宅の場合、2階が2.07倍、1階は1.83倍の壁量となってしまいます。
 通常の木造住宅では、2階部分は壁量に余裕があるかとは思いますが、1階は必要最低限の壁量しか確保されていないのが殆どと思います。これが1.83倍になるとプランにも大きく影響する事になるでしょう。

 様々な仕上げに対する国交省の試算がありますが、この壁率は瓦屋根(重い屋根)、土塗り壁(重い壁)の場合となっています。よって、住宅で一般的なスレート屋根(軽い屋根)、サイディング貼り(軽い壁)に対してはかなり過剰な数値となっています。
 元々、施行令46条では重い屋根と軽い屋根で壁率が違っていますので少なくとも2区分に分ける事が必要ではないかと思います。

設計者はどう対応する?


 この壁量検討は方法@、Bにある実状に応じた地震力を直接、算出する方法もあります。既に公布されている改正建築基準法では多くの木造2階建て住宅は300uを超える事はないため、仕様規定の確認(壁量計算)となっています。

 ここには今まで通り、構造設計者が関与することはなく、意匠設計者による対応となります。よって、地震力の算出が出来るかどうは疑問です。
 大手ハウスメーカーによる建売住宅以外はかなりプランに制約が出る事なるのではないでしょうか。






 この施行令の改定案は今後、パブリックコメントを経て、令和5年秋頃に交付予定となっています。尚、施行日については令和7年4月予定となっています。


posted by 建築構造設計べんりねっと at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース

2022年06月29日

4号特例縮小の施行は2年後の令和6年春か!?

 4号特例縮小法案は6月17日に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」の関連法案となっています。
 施行日は2025年(令和7年)との説もありましたが、現在決まっていることは、3年以内を期限とし政令で定められると言うことです。

 6月29日、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ基準の見直しについて」の国土交通省・経済産業省の2省合同会議が開催されました。

国土交通省_画像.jpg

この会議では以下が定められることとなります。

@分譲マンションの住宅トップランナー基準
A大規模非住宅建築物の省エネ基準の引上げ
B共同住宅等の外皮性能の評価単位の見直し
C住宅の誘導基準の水準の仕様基準の新設
D共同住宅等の外皮性能の評価方法の見直し
E住宅の仕様基準の簡素合理化・誘導仕様基準
F共同住宅等の外皮性能に係るZEH水準を上回る等級






 先日のブログで書きました通り、4号特例縮小は脱炭素のついでであり、審議は行われません。

 私達、構造設計者にとっては4号特例縮小の施行日が気になるところですが、この会議の資料の中に施行日の案が記載されています。

<公布・施行予定時期>
令和4年:秋頃 公布(@〜F)、施行(B〜E)

令和5年:春頃 施行(@、F)

令和6年:春頃 施行(A)


https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/house04_sg_000173.html

 4号特例縮小は脱炭素のついでなので、上記のいずれかの時期に施行されることとなります。これによると遅くとも2年後の令和6年の春には4号特例縮小が施行されます。過去の建築基準法改正を調べても公布から施行までの期間は最長でも2年です。

 現在のところでは令和6年6月施行が最も有力でしょう。





関連する設計者は早めの準備が必要です。木造構造計算バブルとなり、構造設計料が高騰する可能性もあります。これはチャンスかもしれません。

posted by 建築構造設計べんりねっと at 20:41| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース

2022年06月12日

4号特例縮小法案が成立します!

今国会で4号特例縮小法案が提出されています。
これは「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案」についての関連法案として出されており、国会での審議の状況は以下の通りとなっています。

  • 4月22日に閣議決定
  • 5月20日の衆議院 国土交通委員会では採決されず
  • 5月24日の委員会を経て、5月25日の衆議院本会議で全会一致で可決
  • 6月10日の参議院 国土交通委員会で採決

6月13日の参議院本会議で成立する予定です。



4号特例縮小、呆気なく成立


 4号特例については過去に様々な議論がありましたが、これで、ほぼ廃止となります。建築業界に対しては大きな影響を与える法案ですが呆気なく成立です。

 今回の4号特例縮小法案については2050年カーボンニュートラルの実現に向けての建築物省エネ法の改正とセットで審議されており、衆議院、参議院とも4号特例縮小に対しては、ほぼ議論がありませんでした。4号特例縮小に対する質問、意見は以下の2点のみです。

・構造規定の合理化を謳っている事に対し、設計者、審査側の負担増が矛盾していないか?
・負担増となるのでデジタル申請などの活用が必要

 4号特例縮小に対し、反対ではありませんが十分な審議を行って欲しかった思いはあります。





4号特例縮小は誰が希望している?国交省の本音は?


 本法案については当初、提出されず、見送ったと批判を受けていましたが、4月になって急遽、提出されました。ロシアによるウクライナ侵攻の影響があったとも言われています。

 4号特例縮小は今となっては急務ではなく、世間の注目もありません。法案提出を遅らせた理由が4号特例縮小にあるとは考えられません。

 カーボンニュートラル実現に対する施策は国交省がどう思うかとは関係なく、進まざるを得ない事です。脱炭素社会の実現に向けての取り組みに対し、反対する人も居ません。

 4号特例縮小は国交省の悲願であり、脱炭素とセットにすることで成立させてしまおうとの考えだったのか。




posted by 建築構造設計べんりねっと at 07:39| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース