2024年11月02日

2025建築基準法改正(4号特例縮小)/構造詳細図は必要???

 2022年6月に公布された改正建築基準法の施行まで半年をきり、10月21日より国土交通省による設計等実務講習会が開催されています。講習会の資料である「申請・審査マニュアル」では確認申請図書の作成例が示されています。
審査マニュアル.png

 木造戸建住宅を中心とした「仕様規定のみで構造安全性を確認するもの」に対して、確認申請に添付が必要な図書は以下となります。





@使用構造材料一覧
A基礎・地盤説明書
B構造詳細図
Cその他適合審査に必要な図書
D仕様表等


 提出図書の合理化???として、仕様表を添付することで基礎伏図、小屋伏図、各階床伏図の添付が不要になるものとなっています。その他適合審査に必要な図書とは壁量計算(四分割法含む)、柱小径の検討、金物の検討(N値計算等)となります。

 さて、疑問であるのは“構造詳細図”です。申請・審査マニュアルの確認申請図書の作成例では以下の5枚の図面が提示されています。
構造詳細図.png

 内容としては一般的な仕様を記載した標準図です。作成例では該当しない部分に斜線が引かれています。枠組壁工法(ツーバイフォー工法)の構造詳細図については、なんと11枚にもなります。



 基礎伏図、小屋伏図、各階床伏図の添付がないので、その仕様がどの部位に当たるのかは分かりません。それがある部位の仕様として適切なのかも分かりません。このような図書を審査して意味があるとは思えません。

 設計等実務講習会でも、説明があった通り、法改正後は中間検査、完了検査において、構造関係規定の適合が
検査対象となります。標準図を持って、「この仕様はどこですか?」と順番に確認するようなことを行うので
しょうか。非常に意味のない無駄な作業です。

 労働人口の減少、実質賃金が下がっている現在、労働生産性の向上が求められていますが、全く逆のことです。


posted by 建築構造設計べんりねっと at 07:14| Comment(0) | TrackBack(0) | レポート

2024年01月08日

能登半島地震調査

 所要があり、金沢に行きましたので令和6年元旦に発生した能登半島地震の状況を調査しましたので報告します。





 金沢市においては震度5強の地震が観測されています。中心部を散策したところ、金沢市内においては所々、液状化により歩道が被害を受けています。地震動により被害を受けた建物は見当たりません。1月6日現在、ラインラインも問題ありません。
E98791E6B2A2E5B882E58685.jpg

 志賀町(震度7)、輪島市、珠洲市、穴水町(震度6強)の地域は交通規制があり、救援、支援物資運搬の迷惑にもなるので行きませんでしたが震度6強が観測された七尾市の確認をしました。
 1月6日現在、七尾市内は電気、ガス、水道は復旧しているものの断水が続いています。一部、店舗の営業をしています。市内の道路は比較的に空いています。

 七尾市内では道路の多くの箇所で液状化被害が発生しています。メインの道路はアスファルトの応急処置を行っていますが、小さい道は通行が出来ない箇所があります。
E4B883E5B0BEE6B6B2E78AB6E58C96.jpg

 その他、電柱や信号機が傾いていたり、ブロック塀の転倒なども起きています。




 建物の被害としては、一部の木造建物に被害が出ていますが、それほど多くはありません。個人住宅のため、写真は出しませんが、被害が出ているのは壁量が明らかに少ないと思われる古めの建物です。
 また、倒壊はしていませんが、木ずりの耐力壁としている住宅では倒壊は無いものの、モルタル外壁材が変形に追従できず、崩落しています。

 建物の損傷、倒壊が多くはなかったことは幸いですが、液状化により、下水道が大きな被害を受けており、生活に支障が出ています。いち早い上下水道の復旧を期待します。
 
 一番被害が大きかった志賀町、輪島市、珠洲市、穴水町などでは未だ、安否の確認が出来ない方が多く、懸命の救護活動が行われています。亡くなられた方も100名を超えています。私達、構造設計者は改めて、自分の仕事の重要性を認識し、真摯に構造設計を行う必要があります。
posted by 建築構造設計べんりねっと at 09:51| Comment(0) | TrackBack(0) | レポート

2023年08月15日

構造設計事務所はいくらで売れる?

興味ある記事を見付けました。

構造設計事務所を買収。戦略として“総合設計”を目指す建築設計業のM&A
https://www.ondeck.jp/library/interview/15348






 1973年に創業し、施工図作成を行う「生産設計」を中心に事業を展開している池下設計が構造設計事務所を買収しました。買収(M&A)の目的としては総合設計を目指す事業戦略であり、2019年の蒼設備設計買収に続き、構造設計事務所である創建設計事務所をグループ化しました。

 構造設計事務所を買収、売却できるのですね。構造設計事務所のM&A、買収、売却について考えてみます。
M&A.jpeg

構造設計事務所を買収するのはどんな会社?


 どのような会社が構造設計事務所を買収するのかと言うと、池下設計のような総合設計化(事業拡大)を考える会社構造設計技術者の確保を確保したい中小の建設会社があります。
 その他の事例としては鋼管杭メーカーである三誠が2016年、ケイ・ニーイチ設計を買収し、三誠エンジニアリングと名称を変えています。これは鋼管杭G-ECSパイルの販売拡大が目的でしょう。

 構造設計事務所を単純な投資目的として、買収する会社は考えづらく、買収するのは建設関係の会社に限られるでしょう。




売却側(構造設計事務所)のメリットは?


 売却側(構造設計事務所)のメリット、考えとしては以下があります。

●事業継承
 多くの中小、零細企業が後継者が居ないことを深刻な課題とし抱えています。設計事務所においても後継者不在により、事業継承が出来ないケースがあるそうです。
 構造設計事務所に必要なのは優秀な経営者よりも優秀な構造設計技術者です。数人の所員が居る事務所であれば社長(代表者)が引退しても、番頭クラスの人が後を継ぐでしょう。事業継承として売却を考えるのは所員一人、二人の小規模事務所に限られます。

●事業の先行き不安
 事業の先行き不安から売却を考えるケースもあるそうです。設計事務所は大きな投資も必要でなく、在庫を抱えることもありません。負債を抱える原因としては業務量(受注)減少による人件費、家賃の負担です。
 通常であれば大きな負債を抱える前に解散又は所員の解雇をしてしまいますが、このような状態になる前に売却を考えるケースがあります。

●売却利益の獲得
引退を考え、老後資金の確保を目的に設計事務所が売却されるケースです。

構造設計事務所はいくらで売れる?


 構造設計事務所を売却する場合、どのくらいの金額になるかですが、上場会社(公開会社)ではないので市場で株式を売買することは出来ませんので個別の交渉となります。
 中小企業のM&Aでよく利用される年買法と言う計算方法によると以下となります。

 会社の売却金額=純資産+営業利益の3年〜5年分

 構造設計事務所の資産としては構造計算ソフト程度でしょう。営業利益は会社規模によりますが、多くても売却額は5000万円程度でしょう。IT企業のように莫大な売却益を得ることは出来ません。
 尚、小規模事務所の場合は構造計算ソフトのライセンス料金の50%程度でしょうか?

どのような事務所が売れる?


 売却できる構造設計事務所にも条件があります。

●安定した受注先を確保している
 まずは構造設計事務所の利益の基となる安定した受注先を確保していることです。過去の売上実績が根拠になります。

●確かな技術力を保有している
 構造設計事務所の利益の基は「人・技術力」です。「人・技術力」の評価方法として、まずは技術者数です。三誠エンジニアリング(旧ケイ・ニーイチ設計)は7名、創建設計事務所は9名の技術者が居ます。買収側の目的を考えるとこの程度の技術者数は必要でしょう。
 技術力の評価として過去の設計実績も重要です。大手の会社から多くの依頼を請けている事務所は信頼度の高くなるでしょう。






posted by 建築構造設計べんりねっと at 08:31| Comment(0) | TrackBack(0) | レポート