2023年03月21日

液状化の検討方法の極意@〜液状化とは

建築構造設計べんりねっと > 人気の記事 > 建築構造について考える

 液状化がギリギリOKとNGでは基礎・杭の設計が大きく変わります。コストにも大きく影響を与えます。木造住宅で液状化がNGとなると直接基礎も出来なくなり、建築費は大きく跳ね上がります。液状化の恐れのある地域では木造住宅は建てられなくなってしまうほどです。

 これだけ大きな影響を与える液状化、その検討方法について解説します。




液状化のメカニズム


 まず、液状化のメカニズムについて、おさらいしましょう。

 地下水位以下の砂質地盤は砂粒子と水(間隙水)で構成されています。この時、地盤に作用する力(全応力)は砂粒子(有効応力)と間隙水(間隙水圧)が負担する関係になり、砂粒子同士のせん断応力による摩擦が地盤強度となります。

 粒子同士の隙間が多い緩い砂質地盤に地震による振動が加わるとその繰り返しせん断によって、砂粒子同士の隙間が少なくなることで体積が減少します。
 これにより、間隙水圧が増加し、有効応力(地盤強度)が減少します。この有効応力が0になった時に液状化現象が起きます。

 液状化が起こると地盤強度が無くなり、構造物が沈下します。また、地中にある配管などが浮力により、浮上る現象が起きます。杭に発生する水平応力も増え、杭が損傷する事もあります。

過去の液状化被害


 日本で液状化が注目されたのは1964年に発生した新潟地震(震度6)による被害です。RC造4階建てのマンション(県営川岸町アパート)が大きく傾きました。非常にショッキングな画像ですが、死亡被害はなかったとの事です。
液状化@.jpg

 1995年の阪神淡路大震災においても液状化が発生し、埋立地である神戸港(震度6)が側方流動で護岸が海側に最大5m以上も前傾・移動するなど、壊滅的な被害をもたらしました。
液状化A.jpg

 2011年の東日本大震災では多くの地域で液状化被害が起きました。千葉県浦安市(震度5強)の埋立地で住宅、道路や水道管の大きな被害が発生しました。
 震度5強の地震は構造設計では一次設計レベル(中地震時)か、これを少し上回る程度の地震力です。この大きさの地震でも液状化は発生しています。
液状化B.jpg

 浦安市の液状化被害については興味深い小説があります。本所次郎氏による『夢を喰らう』です。東京ディズニーランド誘致のための千葉県浦安沖の埋立事業を扱った行った経済・企業小説です。
 この小説によると当初は地盤が弱い埋立地であるため、住宅は建てられない用途地域でした。しかし、事業資金が計画よりもオーバーし、それをカバーするために用途地域を無理矢理、宅地に変更、売却することで事業資金を確保したとのこと。浦安における住宅の液状化被害は人災かもなのでしょうか。
 浦安市の分譲住宅地を販売した三井不動産などは住民より、損害賠償を求めた訴訟を起こされています。しかし、判決は「予測は困難だった」として、棄却されています。



 東日本大震災では茨城県神栖エリアでも液状化が発生しました。この付近は砂質地盤ではありますが、弱い砂質地盤ではなく、直接基礎も多かったので被害も大きなものとなりました。ここで液状化するのであれば手の打ちようがないとの声もありました。

液状化判定が必要な地盤


 設計基準では液状化の可能性がある地盤(液状化判定が必要な地盤)を以下と定めています。

『建築物の構造関係技術基準解説書』
地震時に液状化のおそれのある地盤は概ね次のイからニまで該当するような砂質地盤である。
イ.地表面から20m以内の深さにあること
ロ.砂質土で粒径が比較的均一な中粒砂等からなること
ハ.地下水で飽和していること
ニ.N値が概ね15以下であること


日本建築学会『建築基礎構造設計指針』
飽和土層において
・地表面から20m程度以浅の沖積層
・細粒土含有率が35%以下の土

埋立地盤など人工造成地盤では
・粘土分(0.005mm以下の粒径を持つ土粒子)含有率が10%以下
・または塑性指数が15%以下


 これらは液状化判定が必要な地盤”であって、液状化の恐れのある(液状化がNG)の地盤ではありません。液状化の判定方法については以降で解説します。





液状化の恐れのある(液状化がNG)の地盤の基礎工法


 液状化の恐れのある(液状化がNG)の地盤ではその層よりも上の地盤で支持する直接基礎及び杭基礎とすることは出来ません。
 杭の周面摩擦力についても液状化の恐れのある(液状化がNG)の地盤及びその上方にある地盤の考慮出来ません。
 『建築物の構造関係技術基準解説書』では以下のように解説されています。
(6)基礎ぐいの許容支持力算定時には、液状化のおそれのある地盤をその算定範囲から除く必要があることに注意する。ここでの支持力算定上除外すべき「地震時に液状化するおそれのある地盤」とは、「建築基礎構造設計指針」に示されている液状化発生の可能性の判定に用いる指標値(FL値)により液状化発生の可能性があると判定される土層(FL値が1以下となる場合)及びその上方にある土層をいう。


 また、杭の水平力に対する検討を行う際も杭側方地盤の強度を低減する必要があります。

 このように液状化の判定がNGとなった場合、基礎工法に大きく影響を与えます。






posted by 建築構造設計べんりねっと at 11:18| Comment(1) | TrackBack(0) | 構造設計メモ
この記事へのコメント
『建築物の構造関係技術基準解説書』に示されている、地震時に液状化のおそれのある地盤は概ね次のイからニまで該当するような砂質地盤である。
イ.地表面から20m以内の深さにあること
ロ.砂質土で粒径が比較的均一な中粒砂等からなること
ハ.地下水で飽和していること
ニ.N値が概ね15以下であること
については、あくまでも設計水平震度が、150galあるいは200galの中地震時を対象としたものと考えて良いですか。
Posted by 的場 at 2024年04月01日 15:47
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/190238743

この記事へのトラックバック