2022年03月26日

RC柱梁接合部の検討について考える@〜Pw=0.3%は必要?

『建築物の構造関係技術基準解説書(2020年版)』の質疑(Q&A)では
「鉄筋コンクリート造の柱はり接合部について、靱性指針を用いる場合、性能を確保するためには同指針で求められるせん断補強筋量(0.3%以上)とする必要があります。」と書かれています。
パネルゾーン.png

 柱の一般部のせん断補強筋比 Pwは0.20%以上です。この基準を準拠するとなると一般部よりも柱はり接合部のせん断補強筋(フープ)が多くなってしまいますが本当に必要でしょうか?
 また、中子筋が発生したりすると柱はり接合部の配筋が非常に困難になります。

 柱はり接合部について、考えます。





RC柱梁接合部の設計基準の変遷


 従来、鉄筋コンクリート造の柱梁接合部は梁により拘束されている剛体であり、壊れるはずはない部分として考えられていました。柱梁接合部については特に検討は行われず、配筋についても一般部フープ間隔の1.5倍とされていました。

 しかし、壊れるはずがないと考えられていた柱梁接合部に、1995年(平成7年)に発生した阪神淡路大震災では少なからず、被害が発生しました。
阪神淡路大震災.png

 この被害を受け、1997年、現在の『建築物の構造関係技術基準解説書』にあたる『建築物の構造規定(日本建築センター)』にて柱梁接合部の規定が設けら、仕口部フープの最低配筋が0.20%となりました。当初は特に検討は行われず、0.20%を準拠するのみが一般的でした。

 尚、問題となっている靱性指針(鉄筋コンクリート造建物の靱性保証型耐震設計指針・同解説)も1997年に出されています。



質疑(Q&A)の回答


 さて、この質疑(Q&A)をまとめてみる。質疑の内容は以下である。

  • 技術基準解説書のP.401「A柱はり接合部のせん断耐力について」では「柱はり接合部のせん断耐力の計算は、付録1-3.1に示すせん断終局強度式等によってよい。」と記載されている。付録1-3.1(P.689)に示すせん断終局強度式とは靭性指針式である。

  • 靭性指針 8.6 には「pwは 0.3%以上」としたと記載されているが、技術基準解説書P.401のCでは、「pwは 0.2%以上」となっている。

  • よって、靭性指針式で検討する場合、柱はり接合部のpwは0.2%としてよいのでは。


 これに対しての回答としては「靭性指針式により、検討を行う場合、柱はり接合部のpwは0.3%である。」となっている。

 Q&Aによると理由は「規基準ごとに使用できる材料強度や部材の設計用応力の算定(仮定)などの考え方が異なる。それぞれの規基準における定義や適用範囲に従う必要がある。」となっているが、工学的な説明もなく、この回答に釈然としない構造設計者も多い。

 このような理由による確認申請、適判での指摘、やり取りは昔から、存在する。ある部分の検討を建築学会の指針により、行ったと説明すると全く関係ない部分についてもその指針への対応を求められる。
 もちろん、その検討部分、検討式に対する適用範囲、仮定は準拠する必要がある。しかし、各種指針の一つの部位、一つの検討方法のみを基準としたものではない。執筆者も一人ではなく、複数の委員会により、定められたものである。

 靭性指針による柱はり接合部のPwの規定も「0.3%以上とした。」のみで明確な説明もないように思える。梁の付着割裂(カットオフ筋)の検討で靭性指針を採用した場合も柱はり接合部 Pw0.3%が必要なのか。





posted by 建築構造設計べんりねっと at 11:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 構造設計メモ
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