2022年03月13日

AI構造設計の現状。。。本当に使える構造設計AIとは

 2022年3月7日、安藤ハザマがAIを活用した構造設計支援システム「部材グルーピングシステム」を開発したと発表しました。
 これまでにも竹中工務店を始め、数社がAIによる構造設計システムの開発着手の発表、また、リリースを行っています。
 AIに構造設計はどこまで進んでいるのでしょうか。




安藤ハザマ/AI構造設計支援システム「部材グルーピングシステム」


 安藤ハザマの発表によると同社の構造設計AIは以下のシステムとなっています。

安藤ハザマ.jpg

@AIグルーピングシステムによる仮定断面設定

 これは計画建物に対し、過去の設計実績から仮定断面設定をAIにて行うシステムと考えられます。
 仮定断面の設定は、建物形状は当然として、意匠上の納まり、施工性などを考慮して行う事が必要であり、設計者の知識・経験、意匠設計者との打合せの上、決定されるものです。
 AIによる判断として、一番難しいのは意匠との納まり調整でしょう。これに対しては個別に設計者が設定を行うようです。

ARPAシステムによる部材調整

 これはRPA(Robotic Process Automation)を用いた自動計算システムです。設計者が一貫計算プログラムにより検定比などを見ながら、部材(断面サイズ、配筋、材料強度等)を調整する作業を自動化するシステムです。
 ある程度のルールを与えれば、そこそこの構造設計は出来ると思われます。

 安藤ハザマの発表によると従来の手入力での構造計算と比較して計算時間を約半分に短縮することが出来、構造設計者はより創造的な業務に集中できる環境となる、働き方改革・ワークライフバランスの向上へも繋がるとのことです。

竹中工務店/構造設計AIシステム


 竹中工務店は2017年にAIによる構造設計システム開発着手を発表しており、以下のシステムとなっています。
竹中工務店@.png
竹中工務店A.png
竹中工務店B.png

 安藤ハザマの構造設計AIとの違いは以下の点です。
  • 「リサーチAI」により、概算コストの算出が可能
  • 建物ボリュームから構造モデルの生成が可能


  • 尚、開発リーダーは高さ日本一の超高層ビル「あべのハルカス」の構造設計を担当した竹中工務店設計本部アドバンストデザイン部構造設計システムグループの九嶋壮一郎副部長が担っており、「実務者目線で『使えるAI』を目指しています。

    AIはディープラーニングが必要ですが、採用する過去事例に特殊な構造の建物があると、それにAIの回答が引っ張られます。上手く学習させることが課題のようです。>

     尚、2022年3月現在、AIにより構造設計を行った建物を建設したとの発表はありません。




    大成建設/AI設計部長


     大成建設は2021年3月、AIを活用した設計支援システム「AI設計部長」の開発着手を発表しました。
     設計業務では、それぞれの設計案件で発生する、初期段階の与件分析、敷地に関する法律や条例情報整理、過去の事例検証などの定常業務に多くの作業時間を割いています。これらの業務に対し、過去の設計業務を通じて蓄積した知見やノウハウを統合・集積した設計技術データベースを構築し、各設計担当者が抱える問題に対して、AIが最適な情報をデータベースから抽出するシステムとなっています。

     構造設計分野においては過去のデザインレビュー内容より、AIが初期段階の構造設計方針を支援する機能となっています。

    住友林業/構造エクスプレス


     2020年8月、住友林業(株)が子会社ホームエクスプレス構造設計にて、AIによる構造設計サービス開始を発表しました。意匠図を送ると、構造計算書や基礎・構造伏図、プレカットCAD連携データ等をAIが自動生成するとの事ですが、詳細情報は不明です。

     AIはホームエクスプレス構造設計社が操作するので全くのブラックボックスです。

    本当に使える構造設計支援AIを考える


     各社の状況から考えると構造設計一式をAIで行うのは、かなり先になるでしょう。意匠図面から構造計算プログラムデータ生成や部材断面の自動計算も構造設計作業の効率化に大きく寄与しますが、これはBIMやRPA(Robotic Process Automation)です。

     AIが得意な分野であり、実際に有効に活用されているのは「検索・探索」「画像認識」です。
     構造設計業務でこれを活用できる業務を考えてみます。

     「検索・探索」については紹介したゼネコン各社の構造設計AIにも採用されており、自動設計ではなく、あくまでも参考となるものを検索、表示するものです。Amazonなどでおススメの商品が表示されるのと同じようなものです。
     これも実際の構造設計を行う上では役に立つでしょう。問題は参考とする建物の数と質です。良い建物データがないと良い結果は得られません。また、自社のデータに限られることになります。



     「画像認識」は写真から特定の人物を下がるなどで一般には活用されています。これを構造設計に導入することを考えると例えば、意匠と構造の整合性チェックなども考えられます。これはAIではなく、BIMで対応は可能ですが、一歩進んで意匠性を損なう計画となっていないか、施工性は問題ないかなどの判定が出来れば、使えるものとなるのではないでしょうか。

     しかし、結局は設計支援、アドバイスに留まり、設計判断は人間に委ねられます。AIによる自動設計は車の自動運転によりもかなり、先になるでしょう。













    タグ:ai
    posted by 建築構造設計べんりねっと at 08:42| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム
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