2021年08月17日

構造設計者は四号建物に関わるべきでない!

 2020年(令和2年)3月、建築士法が改正され、建築士事務所の図書保存の見直しが行われました。(士法規則第21条)

 全ての建築物について、配置図、各階平面図、二面以上の立面図、二面以上の断面図、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、 構造詳細図、構造計算書、工事監理報告書の保存を義務づけることとなりました。

 全ての建物なので、確認申請で構造図書の添付が省略される四号建物に対しても適用されます。

 事実上の四号特例廃止とも言われましたが、実態は変わっていません。




四号建物、四号特例とは


 四号建物とは建築基準法第6条で規定されており、用途が特殊建築物ではなく、木造の場合は2階以下かつ延面積500m2以下、高さ13m以下、軒高9m以下であること、その他の構造は1階以下かつ延面積200m2以下の建物です。主に2階建て戸建住宅などが当てはまります。
4号.png
 そして、この四号建物は建築確認で構造審査が省略されるとの規定が四号特例です。もちろん、確認申請での審査が省略されるだけで建築基準法構造関係規定の準拠が不要と言う訳ではありません。
 建築士の処分では四号建物の構造関係規定違反が多くを占めています。

【国土交通省ネガティブ情報等検索システム】
https://www.mlit.go.jp/nega-inf/cgi-bin/searchmenu.cgi?jigyoubunya=ikkyuu

これらは氷山の一角でしょう。

「必要ないから、検討しない、計算書・図面を作らない、守らなくても分からない」と考える倫理観が欠如している建築士も存在します。

「確認申請が許可になったので、この建物は違法ではない。確認申請で構造検討を求められないので必要ないことだ。」と知識が不足している建築士も居ます。

「確認申請で求められていない事を構造検討を行い、不要に建物コストを高くすることはお客様のためにはならない。」などと“誤ったお客様目線”の建築士も存在します。違法建築物となると、もっと困るのはお客様です。




建築士法改正の効果は?構造設計者への影響は?


 では建築士法改正による「建築士事務所の図書保存の見直し」で改善されたかと言うと疑問が残ります。建築士事務所に立入検査を行い、検査を行わないと分からないからです。
 建築士事務所の立入検査自体は実施されています。しかし、帳簿の確認、ヒアリングのみであることが実態のようです。結局、図書は保存されているものの、内容が伴っていません。

 建築士法改正は構造設計者へも影響が出ています。四号建物は構造計算が求められていません。よって、構造設計者も関わることがありませんでしたが、四号建物に求められる構造検討も多少の構造設計知識が必要なため、これらが構造設計者に依頼されるようになりました。しかし、上記のような建築士から無理な(違法な?)要求をされることも少なからずあります。

「杓子定規に建築基準法を適用するのはく、それを何とかするのが技術力ではないか」などと。。。全く話になりません。

このような設計者とは係わるべきではありません。信頼できる事務所以外からの四号建物の依頼は断った方が無難です。

やはり、四号特例を廃止を


 四号特例は性善説に立った基準です。しかし、性善説が適用されない建築士も少なからず存在するのです。彼らの判断の根拠は“確認申請が通った”です。結局、「貴方の設計では確認申請は通らない。」としないと改善はされないのです。

 四号特例廃止に踏み切れない理由は確認申請の処理が出来なくなり、経済に影響が出ることを恐れてです。
 まずは審査対象外でも良いので、建築士法準拠の確認と言うことで確認申請に構造図書の添付を義務付けたらどうでしょうか。建築士事務所の図書保存義務もその事務所がなくなったら、図書もなくなります。
審査機関であれば図書の保存も確実です。


posted by 建築構造設計べんりねっと at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム
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