
変更内容のポイント
変更内容で一番大きな点は構造設計の科目で4肢択一式の20問がなくなり、法適合確認、構造設計の科目で各々10問、正答肢を選択するとともに選択した理由を記述する「理由記述付き4肢択一式」が導入されたことです。従来の4肢択一式とは一級建築士試験等の問題のように「次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。」と言う形式です。今後、正答肢を選択するだけでなく、その理由の記述が適切でないと正答ではなくなります。
尚、従来の記述式問題は8問から6問に変更されていますが、これは大きな変更ではないでしょう。
制度変更の目的は?
一級建築士の学科試験対策として有効なのは4択の記述について正しい内容を丸暗記することです。一級建築士学科試験は125問ですので、過去問10年分で1250問、過去問が出ることも多いので1000問程度の記述です。これを8割丸暗記すれば合格出来ます。それぞれの記述に記載された基準の背景、意味ではなく、丸暗記すれば良いのです。実務での応用は効かなくなりますが、私もこれで合格しました。
構造設計一級建築士制度が始まり、10年以上経ちました。この間に日建学院や総合資格で過去問が分析され、合格手法が確立されてしまったのでしょう。
実際に構造設計の実務経験がほとんど無い人でも合格してしまっています。中には意匠設計者も居ます。ここにテコ入れをしたいのでしょう。
世の中の流れは述式へ
2020年度の大学入学共通テスト(旧大学入試センター試験)でも記述式問題を導入が検討されていました。目的は知識の量だけでなく、自ら問題を発見し、答えや新しい価値を生み出す力が重要になる、思考力や判断力、表現力をより重視した新しいテストにするとのことです。公平に採点できるのか不安視する声が高校側から多く出たことから導入は見送られましたが。これは構造設計においても同じです。建築基準法、各種構造基準を知識として覚え、構造計算プログラムの結果をOKにするだけでは安全な建物は設計できません。解析結果の妥当性を判断するのはセンスではなく、技術力です。この技術力を身に着けた構造設計者を構造設計一級建築士とし、制度を運用していくことが重要です。
設備設計一級建築士で追加修了者が
令和2年度の設備設計一級建築士の修了考査で2名の追加修了者が発表されました。法適合確認の記述問題(図)で不適切な箇所および理由を回答する問題で不適切な箇所が2箇所あった事が発覚した為です。記述問題が増えるとこのような事が多くなるのでしょう。しかし、それを恐れていたら、進歩はないでしょう。
間違いがあったら、今回の設備設計一級建築士のように間違いを認め、追加で修了させれば良い。そのためにはまず、構造設計一級建築士の修了考査問題およびその解答の公表が必要でしょう。