2020年06月13日

層間変形角の単位は何?rad(ラジアン)?

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 水平荷重時の層間変形角変位δを高さhで割った値、正確には高さhを変位δで割った値の逆数で我々、構造設計者は表記する。
層間変形角.png

層間変形角=δ/h=1/(h/δ)

この層間変形角の単位は何なのだろうか?

 層間変形と言うくらいだから、角度の事である。角度の単位で私達が一番馴染みのあるものとしてはまず、度数法の“ ° ”がある。(30°、45°...)カッコよく言うとDegree(デグリー)です。
 他には高校の時に数学で習った弧度法(radian)があります。表記は、rad(ラジアン)である。建築では他に角度の表し方として、寸勾配、分数勾配(1/100勾配)などがある。





 建築基準法告示では、「層間変位の高さに対する割合」となっている。割合と言う事は角度ではなく、単位はない。
 様々な文献では層間変形角の単位をrad(ラジアン)で表記しているものがあるが、これが正解なのか?

 私達も層間変形角を言う場合、1/350 rad(ラジアン)と言った方がカッコいいので何となく、rad(ラジアン)と言ってみたりする。

rad(ラジアン)って、何だっけ? 弧度法について、おさらいしてみる。rad(ラジアン)とは「半径がr の円において、弧の長さがr の時の角度」である。弧の長さがrの時は1ラジアン(rad)、360°の時は2πラジアン(rad)となる。
ラジアン.png
 なぜ、数学で弧度法を使うかと言うと式が「シンプルになる場合が多い。極限、微分をするときにやりやすい。」という数学上のメリットがあるからです。

層間変形角の単位をrad(ラジアン)表記する事は正しいのか? 層間変形角で言うとrad(ラジアン)は半径に当たるものが高さh、変位δは水平変位であり、弧の長さは算出していない。とすると高さhを変位δで割った値の逆数をrad(ラジアン)で表記する事は正しくないのでは。。。

 下図の通り、層間変形角 = δ/hは、tanθである。とすると角度θは、その逆数のarctan(δ/h)である。
rad1.png

これをEXCELでシミュレーションしてみた。
rad2.png

 結果としては、我々が層間変形角として扱う範囲の値では、ほぼ近い値だが、角度が大きくなるとその差は大きくなる。

 結論としては、層間変形角(δ/h)の単位をrad(ラジアン)で表記する事は厳密には正しくない。





 と結論付けたが、正しいのだろうか?(笑)更に層間変形角をrad(ラジアン)で言う人はカッコつけてるだけど付け加える。と言う私もrad(ラジアン)を付けるが。

単位は目的に応じて、使い分ける 角度の単位で誰もが直感的に判断できるのは度数法のDegree(デグリー)“ ° ”でしょう。しかし、層間変形角を度数法で表記するには数値が小さすぎ、判りづらい。また。層間変形角を見て、判断する事は分母の値の大小です。
 弧度法のrad(ラジアン)は数学的な取り扱いを便利にするためのものであり、層間変形角をrad(ラジアン)にして、何のメリットはない。
 屋根の勾配などについては寸勾配、分数勾配とした方が、ある位置での高さを簡単に算出できるメリットがある。これも弧度法のrad(ラジアン)としてもデメリットしかない。
 単位には様々なものがありますが、やはり、その目的に応じて、使い分ける事が大事ですね。

 
posted by 建築構造設計べんりねっと at 11:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 構造設計メモ
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