構造設計が専門でない人に説明しますが、構造計算は計算により、柱梁の断面が算出されるのではなく、断面サイズを仮定して、構造計算を行い、安全性を確認すると言う作業です。
なぜ、そのような遣り方をするかと言うと、断面サイズにより、剛性が変わり、各部に発生する応力が変わるからです。また、部材サイズにより、重量も変わります。部材耐力により、建物の崩壊形も変わってしまいます。
構造計算結果がNGであれば、鉄筋を増やす、断面を大きくする。余裕が有りすぎれば鉄筋を減らす、断面を小さくするとの作業を繰り返します。
つまり、構造計算を開始するにあたり、柱、梁の断面サイズを仮定すると言う作業が必要です。これが、仮定断面です。

しかし、この設計のスタート時点で出した仮定断面が確定断面と勘違いしている意匠屋さん、その他の関係者が居ます。
「この柱サイズで納まりを検討しているのだから、変えられたら、困る。」
「その断面サイズで予算決めたので増えたら、困る。」
意匠も設計が全て終わっていない設計のスタート時点で断面が決まるのであれば、それから、一ヶ月、二ヶ月、構造設計者は何をしていると思っているのだろうか?
もちろん、全く適当に出した断面ではない。サイズを変えないようにコストを考えなければ、材料強度を上げる方法もある。しかし、そこを意匠、構造、設備が協力し、調整をしながら進めるのが設計ではないか。
実施設計開始前に予算確定のために構造断面を求めるのも、仮定断面との作業ではない。それは概算設計とも呼び、それなりの期間(実施設計の1/3程度)と設計料金(実施設計料の1/3程度)が必要である。