早い段階での受験が出来る事は良いことであると思うが、もう一つ、運用が変わると予想されるのが実務経験審査の厳格化である。
昨年、大和ハウス工業の実務経験の大量偽装事件が発覚し、退職者を含む多くの人が免許取消しの処分を受けた。この事件が発覚したのが、一級建築士の合格発表日であったことは偶然ではないだろう。来年度より、実務経験の審査を厳格化するとの国交省からのメッセージである。
ここで問題なのは管理建築士による実務経験の証明が必要であるが、転職した場合、この証明を前職の会社、事務所の管理建築士から、貰うのは現実的には難しいと言うことだ。
よっぽどの円満退職でないと前職の会社の管理建築士(上司)に依頼するのは気が引ける。業務内容が微妙であった場合、現在の部下であれば、サインもするだろうが、他の会社の社員となった人のためにそのリスクを取ろうとは誰も思わない。
一級建築士以上に影響が大きくなるのは、構造設計一級建築士だ。

この実務経験審査の厳格化は、構造設計一級建築士にも適用される。一級建築士の実務経験は2年であり、業務の範囲も多岐に渡る。一方、構造設計一級建築士は一級建築士取得後、5年間であり、構造設計業務に限れる。今は耐震診断や研究、構造設計補助などの業務は外され、更に狭い範囲の業務となっている。
つまり、転職した場合、その会社に5年以上、勤務しないと構造設計一級建築士の実務経験の証明は取得出来ないと言う事だ。5年間は長過ぎる。
ここで提案だが、建築士事務所に退職者の実務経験も証明することを義務付けたら、どうだろうか。電話連絡するのも気が引けるだろうから、郵送先を明示するのを義務付ける。
私の知り合いでも優秀な構造設計技術者であるにも係わらず、上司との人間関係で退職し、構造設計一級建築士取得を5年間待った人がいる。このような人を救済する策を講じるべきである。
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