構造設計で最も重要なのは構造計画。まず、「構造種別をどうするか」でしょう。RCにするか、鉄骨、木造か。次に耐震等級、劣化等級などの設計クライテリアです。
構造設計者の皆さんは構造種別をどのように決めているでしょうか?
【コスト】
安い ← → 高い
木造 鉄骨 RC
低い ← → 高い
【構造性能】
「構造設計の依頼があった時には既に決まっている?」まあ、それが実態でしょう。
構造種別(RC、鉄骨、木造)の決め方の真実を解説します。

法定耐用年数が重要!
構造種別の決め方に最も影響を与えるのが、法定耐用年数です。
軽量鉄骨造 19年
木造 22年
鉄骨造 34年
鉄筋コンクリート造 47年
「木造住宅の寿命は22年?30年ローンを組んだのに。。。」と言う事ではなくて、法定耐用年数とは税務上の減価償却期間を決めるための耐用年数です。
減価償却とは、建物の取得費用を経費として計上する計算方法です。取得費用を耐用年数により、分割して、毎年の経費とします。
構造種別でローンの支払いが変わる
住宅ローンの返済期間は建物の耐用年数で変わります。耐用年数(寿命)が長い構造ほど、長い期間の借入が出来ます。金融機関も資産としての価値が長い建物ほど貸倒れリスクが少なくなるからです。
戸建住宅(30坪)で比較してみます。※金利0.988%、元利均等返済で計算
楽天銀行

木造1650万円(55万円/坪)
返済期間:22年
返済金額:69,564円/月
鉄骨2100万円(70万円/坪)
返済期間:34年
返済金額:60,619円/月
鉄骨造の方が月々の返済金額が少なくなります。
月々の返済を少なくしたい人には耐用年数が長い構造種別がオススメです。
もちろん、支払い総額は増えますが。
構造種別で固定資産税が変わる
法定耐用年数は固定資産税にも係わります。法定耐用年数になると建物の税務上の評価額ゼロになり、建物の固定資産税はなくなります。
法定耐用年数が低い構造種別ほど、固定資産税が少なくて済みます。
構造種別で企業の利益が変わる
企業が建物を建てる事を考えます。
企業の目的は、より多くの利益を上げること。そして、利益に対して、法人税がかかります。
「最終利益=売上−経費−税金」です。
税金が少なければ利益が増えます。税金は(売上−経費)×税率です。経費を多く出来れば、税金が少なくて済みます。
建物を建てた費用は、減価償却として法定耐用年数に応じ、経費として計上出来ます。その年の経費が多いほど、税金が少なくなり、最終利益が増えます。
例を上げます。10億円の建物を作りました。
(RCの場合)
毎年の減価償却費(経費)は10億円/47年=約2100万円
(今、話題の木造CLTの場合)
毎年の減価償却費(経費)は10億円/22年=約4500万円
税率20%とすると毎年480万円の利益が変わることになります。
当然ですが、事業でそれ以上の利益が出ている場合に有効です。
これは我々、サラリーマンが不動産投資をした場合にも適用されます。
(家賃−ローン返済)が実際に入ってくるお金ですが、減価償却費の方が大きければ税金は不要です。これは会社の給与所得とも合算出来ます。減価償却費が収入を越えた場合、会社の給与の所得税もなくなります。

設計クライテリアも。。。
耐久性能を表す劣化等級もローンの借入期間に係わります。木造から鉄骨造にするより、劣化等級を上げる仕様にした方がコストが低いのであれば、この選択も有効です。
耐震性能は地震保険の金額に係わります。免震構造、耐震等級3は地震保険料が50%オフです。地震保険の割引金額よりも免震費用が安ければ、タダで免震構造に出来るようなものです。
構造種別により、火災保険料も変わります。
まとめ
・月々の住宅ローン返済を少なくしたい人は木造よりも鉄骨造がオススメ!
・儲かってる企業はRCよりも鉄骨造がオススメ!更に木造(CLT)
こんな提案が出来る構造設計者も頼られると思います。ぜひ、覚えておいて下さい。
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