構造は構造種別は鉄骨造、SRC造で制振構造を採用しています。

鉄骨の傾斜について
問題となった施工不良とは鉄骨の建て方(柱の倒れ)精度です。柱754ヶ所のち、77ヶ所でJASS6許容値(限界許容差)を平均4mm、最大で21mm超えていました。
柱の倒れのJASS6許容値
管理許容差:柱長さの1/1000 かつ 10mm 以下
限界許容差:柱長さの1/700 かつ 15mm 以下
この建物は26階で高さ116mなので階高は平均で4.46mです。限界許容差を21mm超えていると言う事は36mmとなり、傾斜角は1/124です。建物全体の傾斜ではないものの、構造設計者の感覚からするとこの値は許容できるものではありません。
この現場については施工管理がずさんであったこともあったのでしょう。建て方時期の差による鉄骨の熱膨張・収縮もあったかもしれません。鉄の熱膨張係数は11.7μmです。温度が20℃変わり、梁の長さが10mとすると23mm長さが変わってしまいます。これは柱の倒れにも影響します。
もちろん、施工記録の改ざん、虚偽報告などは論外です。
スラブ厚の不足、どうすべきか
スラブ厚が不足している箇所もあったとのことです。こちらは570ヶ所のうち、245ヶ所が平均で6mm、最大で14mm薄くなっていました。再施工前提でコア抜きをして、計測したのかどうか分かりませんが、施工者にとっては厳しい話です。
設計スラブ厚が200mmとした場合、型枠(デッキ)もその寸法とします。コンクリート打設にはレベルを測定しながら、左官屋さんがコンクリートを均しますが、どんなに腕の良い左官屋さんでもピッタリと施工する事は出来ません。10mm、20mmの誤差は出ます。
では確実にスラブ厚を確保するために20mm増し打ちして、施工して良いかと構造設計者に聞いても、「荷重が増えるから、ダメです。」の答えでしょう。
設計段階で施工誤差を考慮した荷重設定をすべきなのでしょうか?
JASS6が契約内容?
ニュース記事によると「日本建築学会の建築工事標準仕様書(JASS6)に基づき契約で定めた限界許容差を超えており」とあります。契約書にはJASS6に準拠と
記載されていたのでしょうか。日本建築学会の基準には“望ましい”と表現されているものもあり、全てを準拠するのも難しい場合もあるでしょう。
設計契約においても、JASS5、JASS6準拠と謳われると厳しいものがあるかもしれません。あとで建築基準法には適合しているものの、契約内容に準拠していない部分があるとして、構造設計者が訴えられることも考えられます。
品質については年々、厳しくなってきています。大きな仕事はリスクも大きいものとなっています。