2022年08月19日

『サザエさん』磯野家を最新耐震基準で構造設計をしてみた。B〜構造計算プログラムに入力する

 いよいよ、磯野家を構造計算プログラムで構造計算します。使用するプログラムはKIZUKURIです。

偏心率がNG!


 平屋建てで間崩れもないので入力は簡単です。もちろん、建築主は磯野浪平様。
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 入力が完了し、計算を流してみたら、偏心率がNG!水平構面がアウト!のメッセージが。
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 Y方向偏心率が0.474となっており、このままでは建築基準法上、木造は不可となってしまいます。西側に耐力壁が偏在していることの影響です。水平構面がアウトになっているのも、この耐力壁の影響です。
 まずは偏心率と水平構面の調整を行うこととします。

プランの改善提案を行う。


 壁量については十分に余裕があるので西側外壁の合板耐力壁を一部、耐力に見込まないとの方法もありますが、数字のお遊びになってしまうので別の方法を考えます。重心位置は建物形状に依存するため、調整は出来ません。となると建物東側に耐力壁を増やすしかありませんが、全体的に壁量が増え、不経済です。

 そこで以下の提案を行い、改善を行う事とします。

・浴室の北側の開口を西側に移動する。
 この部分の開口は台所の勝手口の隣にあります。この勝手口は三河屋のサブちゃんも利用するのです。ワカメちゃんがお風呂に入っている時に覗かれてしまう恐れがあります。意匠的にも浴室の開口は西側にあった方が良いでしょう。

・トイレに開口を追加する。
 トイレも換気のための開口があった方が良いでしょう。


 結果はY方向偏心率が0.299とギリギリですがクリアしました。水平構面についてはまだ、Y方向がアウトです。また、北面に耐力壁を増やしたことでX方向もアウトになってしまいました。

 これは内部に耐力壁を追加し、調整する事とします。
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磯野家、上部構造設計完了!


 残りはKIZUKURIの自動計算で構造計算完了です。

【屋根伏図】
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【梁伏図】
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※梁幅は105mm

 柱は全て105×105(ホワイトウッド集成材 E95-F315)、金物はコチラになります。

 これで上部構造の設計が完了です。必要な耐震性に対し、1.4倍の余裕がありますので、これでサザエさん一家も安心です。

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2022年08月18日

『サザエさん』磯野家を最新耐震基準で構造設計をしてみた。A〜略伏図、壁量計算

では早速、構造計算の作業に入ります。まずは略伏図の作成と壁量計算です。




略伏図の作成


 磯野家は平屋なので上下階の形状を考慮しなくて済むので簡単です。

≪梁伏図≫
梁伏図サザエ.png

≪屋根伏図≫
屋根伏図サザエ.png

 私が入手した平面図によると南側の縁側部分は7,280mmの開口となっています。7,280mmを梁で飛ばすか、1,365mmの片持ちで受けるか。。。サザエさんの映像を探すとこの部分には柱がある画像を見つけましたので柱を建てる事としました。

縁側.jpg

 浪平・舟の部屋と客間の間も4本引きの襖となっているので柱を建てられません。屋根梁はX方向に流す形になるので、この部分の梁も若干、きつくなるでしょう。

【POINT】
・モジュールに合わせ、建物の角、壁の交差部及び端部及び開口部の際には柱を配置する。
・壁内においては柱を1820mm以内で配置をする。
・壁位置に合わせ、梁を配置する。
・屋根形状を考え、小屋束の位置に梁を配置する。


壁量計算


 次に(46条)壁量計算を行います。最終的には構造計算で決定しますが、構造計算プログラム入力の仮定として、壁配置を仮に決めます。

床面積 :108.1u
見付面積:X方向 23.25u
     Y方向 49.45u

 屋根は瓦葺(重い屋根)ですので、床面積に対する壁率は15cm/u、東京都世田谷区は暴風地域ではないので見付面積に対する壁率は50m/uであり、必要壁量は以下になります。

(必要壁量)
X方向:16.21m
Y方向:24.73m

必要壁量計算書



 外壁は合板耐力壁(2.5倍)としますので、まず、耐力壁となる外壁部分の壁量を計算します。壁量を合計すると以下になります。外壁部分だけで壁量が足りてしまう結果になってしまいました。平屋だとこんなものでしょう。
 Y方向については耐力壁壁線間隔がやや大きいので内部に筋交い耐力壁(4.0倍)を1箇所配置しました。

(存在壁量)
X方向:22.75m
Y方向:43.68m

≪耐力壁配置≫
耐力壁配置サザエ.png

 磯野家は玄関が東側であり、西側に耐力壁が偏っている状態になっています。平面的バランスについては構造計算で確認することとします。

【POINT】
・外壁の開口以外の部分はモジュールに合わせ、原則全て構造用合板による耐力壁を設ける。
・建物内部の耐力壁は筋交いを使用し、構造用合板による耐力壁は設けないものとする。
・耐力壁線が8m以内となるように耐力壁を配置する。



 次回からはいよいよ構造計算プログラムKIZUKURIによる構造計算となります。
タグ:木造
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2022年08月17日

『サザエさん』磯野家を最新耐震基準で構造設計をしてみた。@

 国民的人気アニメ『サザエさん』の磯野家の間取りを再現したものはネット上に多数あります。建築構造設計のポータルサイト『建築構造設計べんりねっと』では磯野家を最新の耐震設計基準で構造設計してみようと思います。
 磯野家はいわゆる4号建築物になり、建築基準法上は構造計算は義務付けられていませんが、ここでは構造計算プログラムKIZUKURIを使用し、『構造設計講座(木造住宅編)』に従って行います。




 まずは磯野家の図面を探します。建築設計図一式として公開されているものはありませんが多くの人が間取り図を再現し、ネット上に公開しています。それぞれ若干違うのですがアニメ動画で確認したところ、下図のものが一番、精度が良さそうです。

サザエさん平面図.jpg
【参照:All About】https://allabout.co.jp/gm/gc/26692/


 次に立面図ですが、ネット上には殆どなく、下図の模型を参考にすることにします。

サザエさん模型.jpg
【参照:ORICON NEWS】https://www.oricon.co.jp/special/52972/

 屋根形状は切妻であり、玄関部分は入り母屋です。




一般事項及び設計方針



建築地  :世田谷区桜新町
構造・規模:木造平屋建て
延床面積 :32坪(106.56u)
屋 根:束建て、母屋・垂木・野地板(t=12.5mm)の上、瓦葺
外 壁:サイディング貼り
1階床:束建て、根太、合板貼り
耐力壁:構造用合板(t=9mm)、筋交い
基 礎:べた基礎

設計ルート:ルート1(許容応力度計算)
使用プログラム:KUZUKUIRI
準拠基準:建築基準法、建築物の構造関係技術基準解説書、木造軸組工法住宅の許容応力度設計

 サザエさんが新聞連載の4コマ漫画としてスタートしたのは1946年です。この時期は新耐震設計法はおろか、建築基準法が制定(1950年)される前であり、市街地建築法による水平震度 0.1の時代です。木造平屋建てに関しては耐震基準も存在していませんでした。
 その後、壁量の規定が設けられ、接合部の規定も強化されました。
 この磯野家を現行の構造設計基準で設計します。

設計料及び納期


納 期:出来る限り早く
設計料:250,000円(値引き-250,000円)
※寄付をお待ちしております。
https://arc-structure.sakura.ne.jp/paypay.htm

乞うご期待!
タグ:木造
posted by 建築構造設計べんりねっと at 11:47| Comment(1) | TrackBack(0) | レポート