2022年07月23日

杭頭曲げモーメントの付加軸力は考慮不要?!B〜杭設計の検討仮定を考える

 前章で説明しました通り、杭頭曲げモーメントの付加軸力を考慮しない事は力学的には説明がつきません。しかし、杭頭曲げモーメントの付加軸力は考慮不要と考えている人も居ます。そして、それで確認申請や適判が通ることがあるのも事実です。

 なぜ、杭頭曲げモーメントの付加軸力は考慮不要との考えもあるのかを別の視点から考えます。




杭頭の固定度は完全固定ではない


 上部-杭分離モデルで杭の水平力に対する応力計算を行う際、通常は杭頭固定とします。以前は大阪府のように杭頭の固定度を50%と指導していた事もありました。当然、杭頭の固定度を小さくすれば杭頭の曲げモーメントは小さくなります。

 この杭頭の固定度ですが、杭と基礎との接合が半剛接(バネ接合)である言うことではなく、節点及び接続する地中梁の回転により、固定度が下がる状態の事を言っています。

 この固定度の評価は杭径や架構状態などの要素が関係し、非常に難しいものです。よって、現在では安全側に考慮し、完全固定とするのが主流となっています

 つまり、杭頭曲げモーメントを実状よりも大きく評価している事になっています。実状とは想定する地震レベルで実際に発生する力のことです。

 以前、建築技術にあった記載ですが、押し込み状態にある支点では杭頭の固定度が上がる、引張状態にある支点では固定度が下がるとの記載がありました。杭及び地中梁に対しては杭頭完全固定度での応力で良いですが、杭頭モーメントによる付加軸力は複数の杭が関係しますのでここまで大きくする必要はないとも考えらえれます。

そもそも、杭設計用の軸力は実状よりも大きい


 次に私達がAi分布で計算した地震力による解析軸力は実状よりも大きいことがあります。

 保有耐力計算においても搭状建物を除き、転倒はしないもとして計算します。この理由は『建築物の構造関係技術基準解説書』で以下のように解説されています。
 Ai分布の値は各階の設計用の地震層せん断力を定めることを主眼に設定されたもので、この値に基づく転倒モーメントの値は地震時に想定される値よりもやや大きめの値となっていることのほか、地震の継続時間を考慮して建築物を転倒せしめるエネルギーを求めてみると、一般的に考えられる大地震では建物は転倒に至らないと考えられる。


Ai分布による軸力、転倒モーメントについて、もう少し説明します。





 地震時の層せん断力を求めるにあたり、建物の各階を1質点にしたモデル化を行います。地震時の揺れは全ての階が同じ方向のみではなく、下図のように複雑な変位をします。全ての階が同じ方向に変位する状態を1次モードと呼び、モードの数は階の数だけあります。そして、各階における最大層せん断力は同じモードの時とは限りません。
モード.png

 この各階における最大層せん断力を集め、一方向に加力したものがAi分布です。
ai.png

 上図において、各層の地震層せん断力が1階は1次モード時(Q1)、2階は3次モード時(Q2)、3階は2次モード時(Q3)であったとします。これを1階はQ1、2階はQ2、3階はQ3となるようにしたものがAi分布です。上部構造の各階におけるせん断力に対する設計を行うには非常に便利なものです。
 この時の軸力、転倒モーメントを考えます。1次モードの場合、建物左端では全ての階の層せん断力が引く抜き方向に作用します。しかし、2次モードでは3階の層せん断力は建物左端に対し、圧縮側の力となります。
 つまり、このようにAi分布による軸力、転倒モーメントは想定する地震レベルにおいて、実状よりも大きくなっているのです。

≪参照≫
https://www.structure.jp/column35/column35_2.html
https://www.structure.jp/column7/topic711.html

 尚、日本建築センター「高層建築耐震計算指針」では、この事を考慮した「転倒モーメントの低減係数」が記載されています。



基礎、杭の設計は不明な部分が多い


 基礎、杭の設計に対しては不明な部分が多く、不確実性があります。
 まず、基礎部分の水平震度0.10です。上部構造の検討地震レベルを標準せん断力係数が0.20とした場合の基礎部分の水平震度0.10に対する根拠のようなものを探しましたが見つかりませんでした。「0.10としましょう」と決められたものかもしれません。
 地震力とは地震により地盤の変位した時の慣性力です。地中に埋まっている基礎は地盤と一体で変位し、慣性力は発生しないとも考えられます。

 基礎が地中に埋まっている事による水平力の低減効果(根入れの効果)については評価方法の基準がありますが多くの設計者は考慮していないと思います。

 規模の大きくない建物であれば、基礎が地中に埋まっている効果は大きくなり、基礎設計用の応力は大き目に評価していることになります。

 また、杭の水平力に対する応力解析方法も研究者レベルの考えでは確立されたものがないとの認識のようです。とは言っても分からないでは設計が出来ない。そこは安全率でカバーしているのが実情です。


総合的に考慮するとそこまでやる必要はない?


 これらを総合的に考慮すると杭設計の応力(軸力、水平力)は元々、大き目となっている。よって、杭頭曲げモーメントの付加軸力まで考慮する必要はないのではと言うのが考慮不要派の考えなのでしょう。

 これに対して、考慮必要派は「では上部-杭一体モデルで適切に杭頭固定度を考慮して解析しろ。転倒モーメントの低減係数も根入れ低減も考慮しろ。なんなら応答解析を行え。その上で杭頭曲げモーメントの付加軸力を考慮すべきだ。」との反論をするでしょう。

 しかし、残念ながら、このような解析は不確実な部分が多く、問題を難しくするだけとなる事が往々にあります。そもそも、私達が構造解析は様々な仮定の上で一つの釣り合いを求めているだけであり、実際の応力とは違います。この応力に対し、安全率を考慮した部材設計を行うことで構造的安全性の確認を行う事が構造設計です。そこには様々な工学的判断が入ります。

 よって、杭頭曲げモーメントの付加軸力を考慮しないのも一つの工学的判断でしょう。

 もちろん、全てのケースで不要との事ではありません。



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2022年07月16日

杭頭曲げモーメントの付加軸力は考慮不要?!A〜本当に力学的に正しい?

 杭頭曲げモーメントの付加軸力は考慮について引き続き考えます。考慮が必要と言う人の理由は「力学的に考慮するのが正しい。考慮しないと釣り合いが取れなくなる。」です。
 広島県 県内構造関係規定取扱方針においても、杭の地震時設計軸力に杭頭曲げ戻しモーメントによる付加軸力考慮の理由は「地中梁の設計において、杭頭曲げ戻しモーメントを考慮することとする以上、支点反力は釣り合わせる必要があるため」となっています。

 これは本当でしょうか?




杭頭曲げモーメント付加軸力の力学的妥当性


 下図のように1層1スパンで先端をピン支点とした杭基礎モデルを考えます。ここでは計算を簡単にするために地盤の水平バネは考慮しないものとします。上部構造の層せん断力は100kN、杭部分の層せん断力は150kNとし、上部架構の部材剛性は柱の反曲点が柱中央にあるものとします。
モデル1.png

 まず、通常の上部構造と杭分離モデルでの杭反力を求めます。
 柱の曲げモーメント(M1、M2)は柱頭部、柱脚部とも75kN・m、杭頭部の曲げモーメント(M3)は225kN・mとなります。
 M1、M2 = 100kN/2×3.0m/2 = 75kN・m
 M3 = 150kN・m×2/3.0m = 225kN・m

 杭頭曲げモーメントは地中梁のみで処理するため、大梁の曲げモーメント(M4)は75kN・m、地中梁の曲げモーメント(M5)は300kN・mとなります。
 M5 = 75kN・m + 225kN・m = 300kN・m

 大梁及び地中梁からのせん断力が杭反力125kNとなります。
 N = 75kN・m×2/6.0m + 300kN・m×2/6.0m = 125kN



次に上部構造と杭を一体としたモデルで杭反力を求めます。
 柱脚部節点においては杭分の剛性が増えるため、反曲点が下がります。柱の曲げモーメントを柱頭部 50kN・m、柱脚部100kN・mと仮定します。杭頭曲げモーメントは変わらず、225kN・mです。
 大梁の曲げモーメント(M4)は50kN・m、地中梁の曲げモーメント(M5)は325kN・mとなり、この時の杭反力も125kNとなります。
N = 50kN・m×2/6.0m + 325kN・m×2/6.0m = 125kN

 これが杭頭曲げモーメントの付加軸力考慮必要派の「力学的に正しい。釣り合いが保てる。」です。

 下図のように多スパンの場合を考えます。3箇所の杭が同じ杭径とすると分離モデルによる杭頭固定での検討では3箇所の杭の負担水平力は同じになります。しかし、一体モデルで考えると力学的にはQ2>Q1、Q3となるはずです。つまり、側柱の杭は実状よりも負担水平力、杭頭固定曲げモーメント及び付加軸力を大きく考慮している事になります。
多スパン.png

なぜ、地中梁だけに曲げ戻す?


 さて、ここで一つ問題があります。上部-杭分離モデルで杭頭曲げモーメントを曲げ戻す際、地中梁だけに曲げ戻していることです。力学的な正しさであれば、柱にもその剛性分で曲げ戻す必要があります。上部-杭一体モデルにおいても柱脚部曲げモーメントが増えることが考えれます。

 なぜ、地中梁だけに曲げ戻すかの理由ですが、計算が煩雑になるからです。

 尚、杭頭曲げモーメントを柱脚部にも曲げ戻すことより、地中梁応力は減少しますが、上部架構の梁応力が増えるため、付加軸力は変わりません。
 日本建築センター『構造計算適合性判定を踏まえた建築物の構造設計実務のポイント』では「この節点に取り付く柱の柱脚曲げモーメントが過少になっていないかは別途検討するのが望ましいと考えられます。」と書かれています。

杭頭曲げモーメントを基礎梁芯まで曲げ戻すことは不要


 一般には杭頭モーメントを基礎梁に曲げ戻す際、杭頭位置から基礎梁芯までの距離に杭負担せん断力を乗じた値を加算します。これも”力学的正しさ?釣り合い?”と言われていますが、日本建築センター『構造計算適合性判定を踏まえた建築物の構造設計実務のポイント』に記載の通り、必ずしも不要です。

 そもそも、杭の応力計算はどの位置で行っているのかと言う問題があります。基礎梁芯位置と考えてもおかしくはありません。また、実際は大きさのある部材を線材に置換しているため、発生する応力であり、このような釣り合いを求めることは不要です。
 平成19年の建築基準法改正では“整合性”について強化され、建築確認において、このような力学的整合性?に対する指摘が増えました。例えば、鉄骨造水平ブレースのゲージラインが柱梁芯からずれている事に対する付加応力などもそうです。完全な線材部材であれば、水平ブレースは節点に取り付くべきです。しかし、実際は部材の大きさがあり、ボルトなどの接合部もあります。どのように接合しても何処かには多少の付加応力が発生します。どの部分を重要視するかの問題です。これを無理やりに柱梁芯に合わせることで納得したり、簡単な線材モデルで解くだけではなく、もっと想像力を働かせる必要があります。




 上記の考え方からすると杭頭曲げモーメントの付加軸力を考慮しないのは力学的には説明がつきません。なぜ、杭頭曲げモーメントの付加軸力を考慮しないとの選択があるのか?


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2022年07月09日

杭頭曲げモーメントの付加軸力は考慮不要?!@

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 建築構造設計べんりねっとの掲示板『建築構造設計会議室』においても今までに多くの議論があった杭頭曲げモーメントによる付加軸力の考慮。

 考慮不要派には明確な理由がない一方、考慮必要派も「やらなくて良い理由はない。」と言う感じである。事実、杭頭曲げモーメントを考慮しないでも確認申請、適判が通ることは多数ある。
 杭頭曲げモーメントの付加軸力について再度、考えてみる。



杭頭曲げモーメントの付加軸力とは


 下図の架構において、左→右方向の水平加力時を考えます。

付加軸力.png

 A通り、B通りの支点(杭)には上部架構より、それぞれ、R1、R2の反力が発生します。杭の設計は分離モデルにて、上部架構とは別で行い、杭頭部には杭頭曲げモーメントM1、M2及びせん断力のQ1、Q2が発生します。この杭頭曲げモーメントを上部架構に曲げ戻します。

 上部架構は部材芯で線材置換した構造モデルであり、杭頭曲げモーメントは杭頭部での応力であるため、杭頭部に発生しているせん断力に杭頭から地中梁芯までの距離 hを乗じた値を加算した応力が地中梁芯での曲げモーメントになります。

 M1'=M1+Q1・h、M2'=M2+Q2・h

 地中梁はこの曲げ戻しを加算して設計します。この時、曲げ戻しによるせん断力Q'が支点A、Bに鉛直反力として加算されます。これが杭頭曲げモーメントによる付加軸力です。

 Q'=(M1'+M2')/L = R1',R2'

 支点Aの杭反力 ΣR = R1+R1'
 支点Bの杭反力 ΣR = R2+R2'



 これにより、どのような事が発生するかと言うと上部構造からの反力で設計した杭が支持力不足となったり、水平耐力不足となる事が起きる場合があります。
 杭が負担する水平力は杭の剛性により、分配されますので杭径を大きくしたり、杭本数を増やした部分は杭頭曲げモーメントによる付加軸力が大きくなります。

杭頭曲げモーメントの付加軸力に関する基準


 各種設計基準、設計指針における杭頭曲げモーメントの付加軸力に関する記述を確認します。

【建築物の構造関係技術基準解説書】
 建築物の構造関係技術基準解説書では基礎構造に対する設計用外力として、鉛直力については「転倒モーメントによる鉛直力を長期鉛直力に加減算した鉛直力」と記載されています。
 地中梁に対する曲げ戻しの検討は記載されていますが、杭頭曲げモーメントによる付加軸力の記載はありません。

 2008年版のQ&Aには杭頭曲げモーメントに関する記述があります。
【質問】
 杭頭モーメントの建物への曲げ戻しの考慮は、設計上常に必要ですか?考慮する場合は固定時の何割程度を目安とするべきでしょうか。また、転倒に関して極限支持力等を確認するときは、杭の曲げ戻しを考慮する必要がありますか。

【回答】
 一次設計においては、原則として曲げ戻しを考慮する必要があります。固定度については、実績のある工法に関しては指針等の数値を参考にできますが、実況に応じて複数の仮定によって基礎・杭のそれぞれが安全側になるように検討してください。
 このとき曲げ戻しの影響は、上部構造の解析とは切り離して考えてよく、日本建築防災協会・JSCA発行の「改正建築基準法による構造計算書作成の要点と事例」では、そのような考え方のもとで設計を行った例が示されているので参考にできます。
 転倒に関して、平19国交告第594号第4第五号の極限支持力の確認(塔状建物の検討)を行う場合には、曲げ戻しや保有水平耐力時の杭頭せん断力を考慮する必要はありませんが、検討することが望ましいといえます。

 ここで明確に回答されているのは塔状建物に対する転倒の検討の際には杭頭曲げモーメントの付加軸力は必ずしも必要でないと言うことです。この質問は付加軸力ではなく、曲げ戻し自体の要否と固定度の評価です。以前は大阪府の『建築基準法構造関係規定取扱集 2004 年度版』では杭頭の固定度は50%で良いとの記載がありました。この事に対する質問でしょう。
https://www.icba-info.jp/kijyunseibi/qa/kouzou.php

【日本建築行政会議 構造計算適合性判定における指摘事例】
杭の水平力の計算による杭頭応力(曲げモーメント等)や杭の偏心による応力、付加
軸力
等に対して基礎梁やフーチングが適切に設計されていない。
 ここに記載されている“付加軸力”が杭偏心による杭頭応力も含むのか、杭の偏心だけなのかが分かりづらい文面です。
 明らかなのは杭基礎の場合を扱っており、「基礎梁やフーチングが適切に設計されていない。」との文面であり、ここに杭が含まれていません。
http://www.jcba-net.jp/news/kouzoukeisantekigou20150313.pdf

【愛知県建築住宅センター「判定内容事例集」】
 杭頭曲げモーメントによる付加軸力に対する記載はありません。
https://www.abhc.jp/jigyo/tekihan/03-1hanteinaiyouzireisyuu.html

【大阪府 構造計算適合性判定に係る「よくある質疑事項の解説」】
 杭頭曲げモーメントによる付加軸力に対する記載はありません。
https://www.pref.osaka.lg.jp/kenshi_anzen/tekihannzireisyuu/

【福岡県 判定事例による質疑事項と設計者の対応集】
杭頭曲げモーメントの伝達について検討してください。
【⇒設計者の対応例】
 地震荷重時水平力による杭頭曲げによる応力は、基礎、基礎梁で負担し付加軸力を考慮した。
 杭頭曲げの付加軸力に記載があります。これは例なので別の方法もあるとの事でしょうか?
https://www.fkjc.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/05/kouzou_hanrei_taiou1.pdf

【広島県 県内構造関係規定取扱方針】
 杭の地震時設計軸力に,杭頭曲げ戻しモーメントによる付加軸力考慮の要否
(広島県内での取り扱い方針)
 杭の地震時設計軸力に杭頭曲げ戻しモーメントによる付加軸力考慮は必要。
※理由:地中梁の設計において,杭頭曲げ戻しモーメントを考慮することとする以上、支点反力は釣り合わせる必要があるため
 明確に杭頭曲げの付加軸力は考慮必要と記載されています。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/340593.pdf

 その他、新潟県、茨城県、熊本県でも適判事例集が出されていますが、杭頭曲げモーメントによる付加軸力の記載はありません。

【構造計算書作成の要点と事例(2007年、国交省監修)】
構造計算書作成の要点と事例
(設計例の解説)
 杭頭曲げモーメントによる基礎梁せん断力を付加軸力として、地震時の基礎反力に加算するという考えもあるが、本例では加算していない。影響が大きい場合は慎重に判断する必要がある。
 国交省が監修している事例で杭頭曲げモーメントによる付加軸力は考慮していないと言うことは必ずしも考慮は不要とも考えられます。

【日本建築センター 構造計算適合性判定を踏まえた建築物の構造設計実務のポイント】
日本建築センター
 日本建築センター「構造計算適合性判定を踏まえた建築物の構造設計実務のポイント」では杭頭曲げモーメントについて、詳細な記載があります。

(杭頭曲げモーメントによる基礎梁設計用応力)
 基礎梁設計用応力の算出にあたり、杭頭固定として計算した杭頭モーメントを基礎心位置まで増大させていなくても、法適合性判定の観点からは、必ずしも不適切とはいえません。

(塔状建物/杭軸力の計算における杭曲げモーメントの影響)
 杭設計用の軸力には、通常、上部構造設計用の解析モデルで計算された支点反力が用いられています。そのため、杭頭モーメントを基礎梁が負担することにより生じる支点反力の変動分が、杭の設計用軸力に考慮されていないことがあります。この支点反力変動の影響を受けるのは主に側杭なので、多スパン構造で側杭の本数の割合が少ない場合は、杭全体の水平耐力に及ぼす影響は少ないですが、転倒が問題となるようなスパン数の少ない建築物では、その影響が無視できなくなってきます。従って、転倒の検討においては、杭頭モーメントを基礎梁が負担することにより生じる支点反力の変動分を杭検討用の軸力計算に考慮する必要があると言えます。

(指摘事例)
 塔状比が大きく側杭に大きな軸力変動が生じています。それに加えて、杭全体本数に対する側杭の本数の割合が大きく、側杭の軸力変動が杭全体の水平耐力に及ぼす影響が大きいと考えられます。杭の断面設計や引抜きの検討において、基礎梁が杭頭モーメントを負担することに伴う付加軸力を考慮する必要はありませんか。
 杭頭曲げモーメントについて以下が記載されています。
  • 杭頭曲げモーメントは必ずしも基礎梁芯まで曲げ戻す必要はない。
  • 杭設計用の軸力には通常、上部構造設計用の解析モデルで計算された支点反力が用いられる。
  • 搭状建物における転倒の転倒の検討においては、杭頭モーメントによる付加軸力を考慮する必要がある。

 まとめると杭頭曲げモーメントによる付加軸力は搭状建物における転倒の転倒の検討時以外は不要と読めます。技術基準解説書では転倒の転倒検討時は付加軸力考慮不要との記載がありますので法的には全て考慮不要とも考えられます。





杭頭曲げモーメントの付加軸力に関する基準について、まとめると以下になります。



まとめ

  • 広島県、福岡県では杭頭曲げモーメントの付加軸力の考慮が必要
  • 塔状建物における転倒検討時には杭頭曲げモーメントの付加軸力考慮は不要
  • その他については明確に不要との記載は見当たらず。。。




 しかし、適判でも指摘される事がある。
 謎は深まる。。。

posted by 建築構造設計べんりねっと at 18:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 構造設計メモ