柱の曲げ(主筋)、せん断(フープ)の検討で断面、コンクリート強度を抑えたところ、柱梁接合部の検討で結局、柱サイズ、コンクリート強度が上げてしまったとの事はよくあります。
RC柱梁接合部について、効率の良い設計方法を考えます。
柱梁接合部のせん断終局強度式
柱梁接合部のせん断終局強度 Vju(靭性指針式)は以下の式です。
Vju = κ・φ・Fj・bj・Dj(N)
κ:柱はり接合部の形状による係数
κ=1.0:十字形 柱はり接合部
κ=0.7:ト形及びT形 柱はり接合部
κ=1.0:L字形及びΓ形 柱はり接合部
φ:直交ばりの有無による補正係数
φ=1.0:両側直交ばり付き 柱はり接合部
φ=0.85:上記以外の柱はり接合部
Fj:柱はり接合部のせん断強度の基準値(N/mm2)
Fj=0.8・σB^0.7
bj:柱はり接合部の有効幅(mm)
bj=bb+ba1+ba2
bb :はり幅
ba1:b1/2又はDj/4の小さい方の数値
ba2:b2/2又はDj/4の小さい方の数値
b1 :はり両側面からはりに平行する柱側面までの長さ

Dj:柱せい、又は90°折曲げ筋水平投影長さ(mm)
ここで、κ:柱はり接合部の形状による係数、φ:直交ばりの有無による補正係数は形状によるので変えることは出来ません。調整できるのは以下の項目となります。
- Fj:柱はり接合部のせん断強度の基準値
- bj:柱はり接合部の有効幅(mm)
- Dj:柱せい、又は90°折曲げ筋水平投影長さ(mm)
対応としてはコンクリート強度を上げるか、柱のサイズ、梁幅を変えるかになります。
各項目に対する耐力上昇比率
柱梁接合部のせん断終局強度式 Vjuは各項の掛け算となっていますので、断面サイズ、コンクリート強度を上げた際の比率が大きければ耐力がより大きくなります。それぞれの項目に対し、どの程度上がるかをシミュレーションしてみます。
@コンクリート強度(Fj)

コンクリート強度をワンランク上げると耐力は1.10〜1.06の比率で向上します。強度が大きくなるにつれ、その効果は減ります。
A柱せい(Dj)

柱せいを5cm増やすと平均1.06程度の比率で耐力が向上します。
B梁はば(bj)

この比率は梁を片寄せ、柱形状は正方形の場合のシミュレーションです。比率@は梁幅を5cm増やした場合、比率Aは柱サイズを5cm増やした場合の耐力上昇比率です。
柱はり接合部の有効幅 bjは上図におけるbb、ba1、ba2の合計です。baについてはb/2とDj/4の小さい方となっています。柱幅に対し、梁幅が小さい場合はDj/4で決定しますが、通常の柱、梁サイズの組合せではb/2で決まる事になります。
梁幅、柱幅と耐力の比率としてはサイズを5cm上げるとどちらも平均1.04程度、耐力が向上します。
効率の良い柱梁接合部の設計方法
さて、この中で柱梁接合部のせん断終局強度式 Vjuを向上されるにはどれを優先するかが経済的であるかを考えます。
まず、部材をOKにする目的であれば、効果が大きい順はコンクリート強度、柱せい、梁幅・柱幅となります。
コストを考えた場合ではコンクリート強度アップはその階全体に影響するため、最後の方法とします。では柱せいと梁場のどちらを上げるかですが、柱よりも梁の方が長さが長いので柱サイズを上げる方が経済的です。
検定比を見ながら、柱せい→柱幅→梁幅→コンクリート強度の順で部材を上げていきましょう。