2022年02月26日

今さら?!元ヒューザー社長が語る「耐震偽装事件」の真相

平成17年11月17日に発覚し、我々、構造設計者に大きな影響を与えた姉歯氏による耐震偽装事件
今さら感はありますが、関係者である元ヒューザー社長の小嶋進氏がアベプラで語っています。尚、今は太陽光発電事業を行っているそうです。


姉歯配信偽装事件が発覚した日、建築構造設計べんりねっとの掲示板(建築構造設計会議室)に書き込まれた内容はコチラです。
https://arc-structure.sakura.ne.jp/minutes/minutes23.htm




小嶋進氏が今語る、耐震偽装事件の原因


  • 国の建築確認制度の問題である。
  • 大臣認定プログラム制度(図書省略)の問題である。
  • 構造計算プログラムは必要な耐震強度に対して、0.8、0.7でも0.3で低減できるものであった。
  • 能力の足りない設計者が構造設計をしていた。
  • 能力の耐震偽装に気付き、自分は販売を止める指示をしたが、法的に販売を中止することは出来ない。


間違いだらけで、この主張に反論するのも馬鹿馬鹿しい。





宇佐美典也氏(制度アナリスト)の意見


  • 確認審査を民間に委ねた事が問題である。より利益を上げるために確認を簡略化した。
  • 国交省は責任を逃れたいが制度を作った側として、民間審査機関に責任を負わす訳にいかない。
  • 結果として、元ヒューザー社長の小嶋進氏が犠牲になった。
  • 根本的には制度設計のミスである。


何なのだろう。。。




posted by 建築構造設計べんりねっと at 21:31| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース

2022年02月17日

脱炭素のために4号特例の改正が必要???4号特例縮小は脱炭素に逆効果では

 4号特例の縮小案が出されていますが、「脱炭素」を目指した建築物省エネ法改正とセットにされていることに違和感を感じませんでしょうか?

 4号特例改正が省エネ法改正のオマケになっています。
社会資本整備.jpg

 国土交通省が開催した社会資本整備審議会建築分科は建築環境部会と建築基準制度部会の合同会議となっており、議論の中心は明らかに「脱炭素」です。
 審議の中では「断熱材や省エネ設備の設置といった省エネ化に伴って、建築物が重量化している。壁量が実態に合わなくなってきており、地震時に倒壊リスクがある。」とも指摘されていますが、この件に対しては壁率の改定で対応可能です。



 4号特例は建築確認の審査を省略することができる制度であり、問題点は脱炭素ではなく、一部の設計者が審査省略制度(四号特例)を利用し、不適切な設計・工事監理を行い、構造強度不足が明らかになる事案が断続的に発生していることです。

 そして、4号特例が縮小されると木造建築物に対する設計者への負担は増えることになります。一時的には供給が減るのは確実でしょう。

 建物の木質化は脱炭素に対して有効とされていますが、脱炭素を中心に考えるのであれば、4号特例縮小は逆効果です。この事は指摘されていません。

 4号特例と脱炭素は別で議論する必要があります。また、4号特例縮小による設計者、審査機関の負担増による建築行政の停滞を避けるために「脱炭素」を諦めようとのこともないでしょう。

 4号特例縮小案、「脱炭素」を目指した建築物省エネ法改正も2025年を目指しているとのことですが、建築物省エネ法改正施行の準備のために4号特例縮小を先に実施すべきでしょう。




 4号特例縮小は、ある意味、過去の施策の失敗を認めるようなものです。誰だって、自らの失敗は認めたくない。一方、「脱炭素」に対する施策としての建築物省エネ法改正に対して、世論の反対はないでしょう。
 「脱炭素」のために4号特例改正を断念するとのストーリーのために建築環境部会と建築基準制度部会が合同で実施されているのか。。。
posted by 建築構造設計べんりねっと at 20:54| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム

2022年02月12日

そもそも、4号特例って何が問題?誰トク?

 4号特例の縮小案が出されていますが、そもそも、4号特例は何が問題なのだろうか。
 4号特例廃止を訴える人の意見は『構造計算が義務付けられていないので耐震性が保証されていない。危険である。』とのことですが、少し論点がずれています。

 4号特例について、整理を行い、4特例縮小案について考えます。

国交省.jpg

4号特例とは建築確認の審査省略制度


 建築基準法6条1項4号で規定する建築物で、2階建て以下・延べ面積500m2以下・高さ13m以下・軒の高さ9m以下の木造建物は「4号建築物」と呼ばれています。その多くは木造戸建て住宅です。4号建築物に対し、建築士が設計したものであれば、建築基準法6条の4第3号によって、建築確認の審査を省略することができる制度が4号特例です。
 尚、共同住宅(アパートなど)は用途が特殊建築物であるため、「4号建築物」には該当せず、木造2階建て、500u以下でも建築確認での構造審査が行われます。

 建築基準法20条では構造及び規模に応じた構造計算方法を定めており、木造の場合は2階以下かつ延べ面積500u以下であれば構造計算は義務付けられておらず、仕様規定の確認(壁量計算など)となっています。そして、建築基準法では上位の設計方法(構造計算)を行うことを禁止してはいません。
 つまり、4号特例とは“構造計算をする、しない”ではなく、“建築確認で構造の審査があるか、ないか”です。



 この制度は行政の効率化を目的としており、このような省略制度は建築行政以外にも多数存在します。例えば、サラリーマンの納税は源泉徴収との形で自動で行われますが、会社からの給与とは別で雑所得があった場合、20万円以下であれば申告義務はありません。パチンコで儲けた全ての人の確定申告を処理するのは納税額以上の経費が掛かってしまうのでしょう。これも行政の効率化です。

 そして、この制度は試験に合格した建築士への信頼、性善説の上で成り立っています。

壁量計算は構造計算ではない?


 4号特例廃止を訴える人は「壁量計算は構造計算ではない。」と言います。

 建築基準法20条にて、小規模木造は四号に規定されており、「政令で定める技術的基準(壁量計算等)に適合」となっています。壁量計算は構造計算を簡略した検討です。一号から三号は「政令で定める基準に従った構造計算」と書かれている事から、壁量計算は構造計算ではないと言われますが、程度の差であるとも言えます。
 我々、普通の構造設計者が行っている構造計算は許容応力度計算、保有耐力計算ですが、少なからず、仕様規定も含まれます。法20条一号で規定されている超高層建築物に求められる時刻歴応答解析を行っている構造設計者からすると許容応力度計算、保有耐力計算は構造計算ではないと思われるかもしれません。





4号特例縮小の他にも安全性を確保する方法はある。


 今回、国交省から出された答申によると、4号特例縮小の理由は以下です。

  1. 断熱材や省エネ設備の設置といった省エネ化に伴って、建築物が重量化している。壁量が実態に合わなくなってきており、地震時に倒壊リスクがある。
  2. 多様なニーズを背景として、大空間を有する建築物が増加しており、積雪時に倒壊リスク等が高まる恐れがある。
  3. 審査省略制度(四号特例)を活用した多数の住宅で不適切な設計・工事監理が行われ、構造強度不足が明らかになる事案が断続的に発生している。


 1、2に対しては壁量規定の追加、改定。構造計算対象にスパン長の規定を設けることでも安全性の確保は可能です。
 3については企業・人の問題です。令和2年(2020年)3月、建築士法改正により、建築士事務所の図書保存の見直しが行われました。まずは建築士法で定められた立入検査による実施確認の強化をするのが先に行うことと考えます。

 4号特例廃止、縮小は「建築士は信頼できない!」と認めるようなものであり、悲しい話です。業界全体としてはマイナスにならないでしょうか。

4号特例廃止、縮小は誰トク?


 ネットを検索すると4号特例廃止を訴えている住宅メーカー、工務店のサイトを見かけます。これらの会社が作る木造住宅は当然、構造計算が行われており、4号特例を問題視すると共に自社の建物の優位性をアピールしています。
 4号特例が廃止、縮小されると、この優位性もなくなり、会社としてはマイナスです。まあ、そんな小さい事で4号特例廃止を訴えているのではないと思いますが。

 他には設計事務所も4号特例廃止を訴えていたります。構造設計事務所は間違いなく仕事が増えるでしょう。しかし、今回の改正案では全ての建物に対する構造計算義務化ではなく、壁量計算による仕様規定の確認も残ります。多くの構造設計者はこの対応を行いたいとは思わないでしょう。
 壁量計算の否定ではありませんが、仕様規定は矛盾が発生する場合があったりなど、構造設計者の感覚に合わない部分があります。

 積水ハウス、大和ハウスはどうでしょうか。4号特例廃止、縮小により、中小住宅メーカーが大きな影響を受ける中、これらの大手住宅メーカーは型式適合などの大臣認定で運用している事が多く、対応に問題はないのでしょう。







posted by 建築構造設計べんりねっと at 16:45| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム