しかし、そのような時に「自分は高い品質の構造設計をしているからコストが高いのも仕方ない。これが適正なコストだ。」と他の人の構造設計を批判しても自らの評価は上がりません。
そもそも、品質を上げたらコストも上がってしまうと言うことは本当でしょうか?

レベルの低い構造設計者とは?
レベル、技術力の低い構造設計者が居たとします。
この人は一貫構造計算プログラムによる検討もひたすら、NGの部分の配筋を増やす、部材断面を上げるとの行為を繰り返します。また、保有水平耐力の検討はなんとなく配筋・部材を上げて、計算を繰り返し、OKとなる形状を探る。一貫構造計算プログラムの結果のみを信じ、その妥当性の判断も出来ません。もちろん、各種構造設計基準にも精通しておりませんので必要である検討も見落とすことがあります。
では、このような構造設計者にコストで負けてしまう自称、普通?の構造設計者はと言うとこのような感じです。「建築物の構造関係技術基準解説書」のみをバイブルとして、仕様規定に精通し、力学的判断力、工学的判断力がやや不足しています。
まあ、五十歩百歩でしょう。
「自分は適正な構造設計を行っているので、コストも上がってしまう。」と言うのは、ただの言い訳です。
野球が強い学校は勉強も出来る。構造設計者も同じです。
甲子園に出場するような野球が強い学校は、「あの学校は野球をやるか、不良をやるかのどっちか」みたいな事を言われていた時代がありました。しかし、このような事は昔の話です。
「甲子園出場校偏差値ランキング」と言うものがあります。
偏差値は50が平均ですから、これによると多くの学校は平均以上です。今年の夏の甲子園大会に優勝した智辯学園和歌山高校はなんと偏差値74、多くの生徒を東大に進学させる名門校です。
野球で人気となり、偏差値が上がった高校もあるとは思いますが、とにかく、野球、スポーツが強い学校は勉強も出来るのです。
構造設計も同じではないでしょうか。
技術力が高く、高い品質の設計を行う構造設計者はコストにも強いのです。
東工大の竹内先生が語る構造設計者の腕の見せ処とは
現在の構造設計業界のトップの一人である東工大の竹内先生はYouTubeで以下のように語っています。
「計算屋はコンピューターに取って代わられる。構造設計とはそう言うものではなく、力の原理を理解した上でどういう形を作っていくこと。それはやっぱり、まだ、人間しか出来ない。予算は建築基準法ぎりぎりでも、どうやってレベルアップするかが腕の見せどころ」
優れた構造設計者はコストに対しても良い設計を行います。その為には設計のルール(仕様規定)を多くしっている、構造計算プログラムを使いこなせると言う事ではなく、力の原理を理解した上でどういう形を作るかが出来ることが重要なのでしょう。
設計判断を基準に書いてある、書いてないとの上辺だけで判断し、その意味や力の原理を理解してないでは優れた構造設計者とは言えないのでしょう。
品質を上げてもコストは上がりません。むしろ、同じコストで如何に性能を上げるかが腕の見せ所です。
コストに強い構造設計者になるには
さて、コストに強い構造設計者になるには、どうすれば良いでしょう。一つ目は構造設計基準に精通するのと同じくらい、価格について、強くなり、根拠ある対応が必要です。

しかし、一番の経済設計は力の原理を理解することです。簡単なレベルで言うと構造設計の基本である力学を理解することです。