今更ですが、これって必要でしょうか?よくよく考えると非常に効率の悪い制度です。

申請側、審査側のどちらにも負担となる制度
まず、審査期間の問題です。今は平行審査が出来、審査期間の問題はだいぶ改善されましたが、それでも二つの機関が審査を行うことで審査期間が長くなります。確認許可となるには、その前に適判許可が必要です。決済は未だにハンコです。
次に申請者側の負担です。平行審査を行うことで、同時にそれぞれから質疑・指摘が発生し、それぞれへの対応が必要になります。その内容が全く正反対と言うことはありませんが、違う内容の質疑・指摘があります。適判機関はOKと言っているのに確認検査機関がNGと言っているなども良くあることです。更に2箇所からの指摘に対し、それぞれ直すので図書不整合のリスクもあります。
また、審査側に対しても、どちらかの指摘により、設計方針が変わってしまうとその確認が必要になるなど負担があります。
構造計算適合性判定が導入された経緯
平成17年、姉歯建築士による構造計算書偽造事件が発覚しました。しかし、問題だったのは、この事件をきっかけに一部の構造設計者、確認検査機関の能力が低いことが露呈したことです。
そこで、高度な技術力を有した構造計算適合性判定員による構造計算適合性判定制度が開始されました。
制度開始の当初、構造計算適合性判定は設計者ではなく、確認検査機関が求める(依頼する)ものでした。故に癒着により、適正な審査が行われない事を防ぐために別々の会社としなければならないとの規定になりました。建築確認の構造審査が確認検査機関と適判機関の2回となっているのは、このためです。確認検査機関の審査は「まずは、そちらでも内容確認して下さい。」と言う事でしょうか。
確認検査機関と適判機関の審査内容の違い
確認検査機関と構造計算適合性判定機関の審査内容の違いは一般には確認検査機関は建築基準法への適合を審査する、構造計算適合性判定機関は建築基準法では取り扱えない構造のモデル化などを審査するとなっています。
しかし、実態は違います。確認検査機関も構造モデルや設計方針に対するチェックを行います。これにより、2つの設計方針、2つの構造モデルの計算書が出来てしまうことがあるのです。もちろん、設計者が両方を盛り込んで、同時に纏めれば良いのですが、指摘した箇所以外の構造モデル、設計方針が変わっていた場合、それを指摘しなかった審査機関はどう思うのでしょうか。
尚、一定規模以上の構造設計には構造設計一級建築士の関与が必要です。適判審査は構造計算適合性判定員の資格が必要です。しかし、確認検査機関の構造審査には構造設計の特別な資格は不要です。構造設計一級建築士の構造設計のチェックを構造設計一級建築士を取得していない人がチェックするのもおかしな話です。
新しい構造審査制度を提案します
このように考えると建築確認の構造審査は非常に効率の悪い状況になっています。適判制度の在り方を考える時期に来ていると思います。
そこで、適判制度の廃止、新しい構造審査制度を提案します。
●構造計算適合性判定制度の廃止、建築確認における構造審査の一本化
●従来の適判対象建物は構造計算適合性判定員による審査とする。
●構造審査基準は各審査機関が定める。
これにより、審査期間の短縮、申請者、審査側の双方の負担も減ります。
大手の確認検査機関は適判業務も行っているので問題ないでしょう。問題は構造計算適合性判定員を抱えていない中小の審査機関ですが、その場合は審査機関が費用を負担し、適判員が居る審査機関に依頼すれば良い。構造設計一級建築士を保有していない人が資格者に法適合確認を依頼するのと同じようなものです。これは企業努力です。
適判員資格者は約2600人居ます。適判物件は年間15000件程度、一人当たり年間5、6件です。十分対応出来ます。
また、審査基準は各審査機関が定めれば良いと考えます。そして、審査基準は公開するものとします。構造設計は建築基準法及び関連規定のみでは行えません。設計者、審査員の工学的判断が必要不可欠です。ですが、確認審査の建付は法適合となっており、このような工学的判断の部分に対し、無理矢理、建築基準法20条の「自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造」を持ち出し、主張するから揉める。
そもそも、民間会社なのだから、建築基準法は最低限とし、審査基準は独自に定めれば良い。それが妥当であれば、その会社は選ばれる。適当であれば、淘汰される。それで良いと考えます。この審査機関で確認許可を受ければ、高い品質の建物であるとのブランドになれば良いと考えます。