2021年08月29日

構造屋さんが一番使うソフトはメールソフト

 構造設計者が業務を行うには様々なPCソフトを使用します。一貫構造計算プログラム、CAD、オフィスソフト、その他構造計算プログラム。

 しかし、一番使っているのはメールソフトのような気がしてきました。




 今までであれば、電話で打合せをしていた事もメールによるやり取りを行うようになってきています。メールであれば相手の状況に関係なく、連絡することが出来ます。受け取る方も自分の都合に合わせ、確認することが出来、確かに便利であり、業務が中断されることもありません。


 会社内で隣どうしで座っている人がメールでやり取りしている事も良くあります。一言、声を掛ければ良いことを。上司が一方的に部下に指示を出すような内容の会議もメールに代わりました。また、その情報を必要としていない人にも報告、連絡の意味でccを設定するような事も多くなり、メールの件数が増えました。

 更に新型コロナウイルスにより、テレワークに変わったことでちょっとした業務の報告、連絡もメールになり、メールを送信、受信する数が膨大に増えました。

 気が付いてみると一日の多くの時間をメールの確認に使っている。これって、業務が効率化されているのでしょうか?生産性が上がっているのでしょうか?

 電話などで直接話すより、メールを書く方が確実に時間を要します。そして、結論が出るまでに対面よりも時間がかかります。
 メールが良いと言う人の意見の一つとして、打合せ内容の記録を残す事も出来、確実に伝達できることを上げます。確かに議事録になるのは有効です。しかし、それが確実に伝わったかどうかは別です。対面であれば相手の表情等で確認することが出来ますが、メールでは伝わっているのかどうか分かりません。全員に「確認しました。承知しました。」と返信を求める人も居ますが、これもメール件数が膨大になる要因です。


 メールばかり確認している仕事って、生産性が高いですか?メール件数が多い事を、自分が忙しい事のようにアピールする人が居ますが、自分は成果を上げていないと言っているようなものです。



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2021年08月17日

構造設計者は四号建物に関わるべきでない!

 2020年(令和2年)3月、建築士法が改正され、建築士事務所の図書保存の見直しが行われました。(士法規則第21条)

 全ての建築物について、配置図、各階平面図、二面以上の立面図、二面以上の断面図、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、 構造詳細図、構造計算書、工事監理報告書の保存を義務づけることとなりました。

 全ての建物なので、確認申請で構造図書の添付が省略される四号建物に対しても適用されます。

 事実上の四号特例廃止とも言われましたが、実態は変わっていません。




四号建物、四号特例とは


 四号建物とは建築基準法第6条で規定されており、用途が特殊建築物ではなく、木造の場合は2階以下かつ延面積500m2以下、高さ13m以下、軒高9m以下であること、その他の構造は1階以下かつ延面積200m2以下の建物です。主に2階建て戸建住宅などが当てはまります。
4号.png
 そして、この四号建物は建築確認で構造審査が省略されるとの規定が四号特例です。もちろん、確認申請での審査が省略されるだけで建築基準法構造関係規定の準拠が不要と言う訳ではありません。
 建築士の処分では四号建物の構造関係規定違反が多くを占めています。

【国土交通省ネガティブ情報等検索システム】
https://www.mlit.go.jp/nega-inf/cgi-bin/searchmenu.cgi?jigyoubunya=ikkyuu

これらは氷山の一角でしょう。

「必要ないから、検討しない、計算書・図面を作らない、守らなくても分からない」と考える倫理観が欠如している建築士も存在します。

「確認申請が許可になったので、この建物は違法ではない。確認申請で構造検討を求められないので必要ないことだ。」と知識が不足している建築士も居ます。

「確認申請で求められていない事を構造検討を行い、不要に建物コストを高くすることはお客様のためにはならない。」などと“誤ったお客様目線”の建築士も存在します。違法建築物となると、もっと困るのはお客様です。




建築士法改正の効果は?構造設計者への影響は?


 では建築士法改正による「建築士事務所の図書保存の見直し」で改善されたかと言うと疑問が残ります。建築士事務所に立入検査を行い、検査を行わないと分からないからです。
 建築士事務所の立入検査自体は実施されています。しかし、帳簿の確認、ヒアリングのみであることが実態のようです。結局、図書は保存されているものの、内容が伴っていません。

 建築士法改正は構造設計者へも影響が出ています。四号建物は構造計算が求められていません。よって、構造設計者も関わることがありませんでしたが、四号建物に求められる構造検討も多少の構造設計知識が必要なため、これらが構造設計者に依頼されるようになりました。しかし、上記のような建築士から無理な(違法な?)要求をされることも少なからずあります。

「杓子定規に建築基準法を適用するのはく、それを何とかするのが技術力ではないか」などと。。。全く話になりません。

このような設計者とは係わるべきではありません。信頼できる事務所以外からの四号建物の依頼は断った方が無難です。

やはり、四号特例を廃止を


 四号特例は性善説に立った基準です。しかし、性善説が適用されない建築士も少なからず存在するのです。彼らの判断の根拠は“確認申請が通った”です。結局、「貴方の設計では確認申請は通らない。」としないと改善はされないのです。

 四号特例廃止に踏み切れない理由は確認申請の処理が出来なくなり、経済に影響が出ることを恐れてです。
 まずは審査対象外でも良いので、建築士法準拠の確認と言うことで確認申請に構造図書の添付を義務付けたらどうでしょうか。建築士事務所の図書保存義務もその事務所がなくなったら、図書もなくなります。
審査機関であれば図書の保存も確実です。


posted by 建築構造設計べんりねっと at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム

2021年08月09日

構造設計業界の“Google” Arup(アラップ)を徹底研究!@

 構造設計でナンバーワンの会社と言うとArup(アラップ)を上げる人も多いでしょう。世界中のネットワークや技術を生かし、創造的なアイデアで世界各地のプロジェクトに携わっている様子は、IT業界で世界を変えたGoogleのようです。
arup.jpg
 Arupは、1946年にロンドンで創業し、現在、世界33カ国、88カ所の事務所を構え、14,000人以上のスタッフを擁する国際的なエンジニアリング会社です。イギリスの構造家であるサー・オヴ・アラップ(1895年-1988年)により、創設されました。

 有名な建築物ではシドニーの「オペラハウス」、スペイン・バルセロナの「サグラダファミリア」、シンガポール「マリーナベイサンズ」にアラップが係わっています。
SydneyOperaHouse.jpg






 日本に進出したのは1989年、関西国際空港旅客ターミナルビル(設計:レンゾ・ピアノ)のプロジェクトを機に東京事務所が開設されました。以降、豊田スタジアム、モード学園コクーンタワーなど多くの優れた建築物に係わっています。
 建設費の高騰で惜しくも白紙になってしまったザハ・ハディド氏の新国立競技場(旧案)もArupがサポートしていました。

構造設計の受賞は圧倒的


 日本の構造設計に対する受賞としてはJSCA賞、日本構造デザイン賞があります。この多くをArupの構造設計者が受賞しています。日本最大の設計事務所である日建設計には負けていますが、日建設計が
2000名を超える社員を擁しているのに対し、Arupは100名足らずであることを考えるとその実績は圧倒的です。
賞.png

多くの構造技術者がアラップへ


 このように多くの実績を上げるためには多くの優れた構造設計者が必要です。構造設計者のキャリアとしては日建設計のような組織事務所で上に上がるか、有名事務所を経て、独立をするかだと思いますが、
アラップへ移った構造設計者が多く居ます。それだけ魅力ある会社と言うことでしょう。

  • 彦根 茂 :日建設計      ⇒ Arup(1994年)

  • 柴田育秀 :類設計室      ⇒ Arup(1996年)

  • 与那嶺仁志:構造計画プラスワン ⇒ Arup(1998年)

  • 伊藤潤一郎:構造設計集団SDG ⇒ Arup(2005年)

  • 笹谷真通 :ゼネコン      ⇒ Arup(2000年)

  • 谷川充丈 :久米設計      ⇒ Arup(2007年)


※敬称略



 尚、金田充弘氏はカリフォルニア大学バークレー校卒業後、城所竜太氏はコーネル大学卒業後にThornton Tomasetti社を経て、與座敏安氏はニューヨーク州立大学バッファロー校大学院卒業後にArupに入社しています。
 世界的なエンジニアリング会社だけあって、海外の大学から入社する技術者も居ます。

posted by 建築構造設計べんりねっと at 10:43| Comment(0) | TrackBack(0) | レポート