2021年07月18日

構造図は伏図(見下げ図)と見上げ図のどちらが良い?

 構造図における平面を表す図面は、通常は伏図(見下げ)形式で表記されます。少数派かとは思いますが、見上げ図で作成する設計者も居ます。
 伏図(見下げ)形式か、見上げ図形式かは別に法律(建築基準法施行規則)で定められている訳ではなく、設計者の好みによるものかと思いますが、あえて、どちらが良いかを決定してみる。




“伏図(見下げ図)”と“見上げ図”の違い


 伏図(見下げ図)と見上げ図がそれぞれ表す範囲は下図の通りになります。
【伏図(見下げ図)】
伏図(見下図).png
 伏図はその階の柱、壁及び床、梁を1枚の図面に表記します。3階伏図と言ったら、3階の柱、壁及び3階の床、梁を表記します。

【見上げ図】
見上図.png
見上げ図はその階の柱、壁及び一つの上の階の床、梁を1枚の図面に表記します。3階見上げ図と言ったら、3階の柱、壁及び4階の床、梁を表記します。

施工図(コンクリート躯体図)に合わせ、構造図も見上げ形式が良い?


 施工図(コンクリート躯体図)は見上げ図で作成されます。これは、どの工事現場でも同じです。施工図(コンクリート躯体図)が見上げ形式で作成される理由は一度にコンクリートを打設する範囲を1枚の図面に表した方が分かりやすいためです。
 型枠や鉄筋を加工するのには柱及び梁のサイズ、納まりを把握する必要がありますが、これが別々の図面に表記されていたら、非常に分かりずらいです。

 では構造図も見上げ形式で作成するのが良いのでしょうか?

伏図(見下げ図)、見上げ図の長所、短所


 伏図(見下げ図)か、見上げ図かを決定するにあたり、それぞれの長所、短所を考えてみます。問題は上下階で建物形状が変わる場合です。




  1. 床下がりの範囲を考える場合→伏図(見下げ図)の勝ち

  2. マンションなど梁形が室内に出る建物で梁位置を考える場合→見上げ図の勝ち

  3. R階の表現→見上げ図はパラペットと下階壁が重なり、分かりづらく、伏図(見下げ図)の勝ち

  4. 施工図(コンクリート躯体図)の作成→見上げ図の勝ち

  5. 丘立ち柱(下階柱抜け)がある場合→伏図(見下げ図)は梁の応力状態が見えず、見上げ図の勝ち


 それぞれ一長一短はありますが、見上げ図の方が分かりやすいと考えます。

構造図は見上げ図で書こう!


 と言いつつ、私は伏図(見下げ図)で構造図を作成しています。理由は殆どの構造設計者が伏図(見下げ図)で構造図を作成しているからです。みんなが同じ形式で書いた方が間違う危険性が減るとのことです。
 尚、略伏図(構造計画)は見上げ図で考え、作成します。これは見上げ図の方が力の流れが分かりやすいためです。

 図面の表現方法を建築基準法施行規則または業界団体で基準を作り統一することを提案します!

 図面の表現方法は設計者ごとに拘りもあるかと思います。しかし、自分の建築を表現するのは図面の表記方法ではなく、建築そのものです。




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2021年07月15日

構造設計一級建築士の既得権益とは?

 コロナウイルスのワクチン接種が進まない理由は士業の業界団体が既得権益を守ろうとしているからだとのこと。
 ワクチンの打ち手が足りないと言って、薬剤師に接種を認めるとその後のワクチン接種に対しても薬剤師が行うようになり、医師、看護師の仕事が奪われてしまう恐れがあるからだそうだ。
 国の非常事態にも係わらず、勝手なものだ。ワクチン接種が遅れ、亡くなってしまう方も居るはず。これが本当だとしてら、恐ろしい話だ。




 さて、どの業界団体も既得権益を守るためには改革、変革に抵抗する。

 我々、構造設計業界、構造設計一級建築士に既得権益はあるのだろうか?
既得権益.jpeg
 建築士法により、一定規模以上の建築物の構造設計については構造設計一級建築士の関与が必要となっている。これは既得権益とも言える。
 しかし、我々は昔から無資格者に対しても構造設計を行わせる事を認めてきてしまった。設計事務所も資格者のみに限ると処理出来る量が減り、売上、利益が減ってしまうため、無資格者にも設計を行わせる。
その事により、自らの価値を下げ、設計料も低いままとなった。普通の業界では既得権益を守るところを。

構造設計一級建築士の既得権益


 構造設計一級建築士制度を厳格に運用すれば、既得権益となるはず。

  • 対象建物の確認審査、適判の対応は構造設計一級建築士本人に限定する。(法適合確認の場合も同様)
  • 重要事項説明も構造設計一級建築士本人に限る。
 供給量が減ることになるので、設計料は上がるでしょう。逆に構造設計一級建築士は自分で構造設計をするより、他者の設計の説明ばかりに追われることになるのか。

業界団体の力が必要


 既得権益を守るには業界団体の力が必要です。日本医師会、弁護士会のような組織です。構造設計では
一般社団法人 日本建築構造技術者協会(JSCA)になるか。
 しかし、医師会、弁護士会のようにほぼ全員が加入しているような状況ではないため、力が弱い。もし、構造設計者のほぼ全員が加入しているとすると構造設計料のコントロールも可能であろう。
 そもそも、そのような目的で設立した団体ではない。

新規参入者の排除


 既得権益を得ようとするには普通は新規参入者の排除を行う。構造設計業界で考えるなら、構造設計一級建築士の試験を難しくするとかか。しかし、そのような事をコントロール出来る権限はない。
 構造設計一級建築士制度の議論があった時にJSCA建築構造士がこれに代わっていたら、大きく変わっただろう。





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