伏図(見下げ)形式か、見上げ図形式かは別に法律(建築基準法施行規則)で定められている訳ではなく、設計者の好みによるものかと思いますが、あえて、どちらが良いかを決定してみる。
“伏図(見下げ図)”と“見上げ図”の違い
伏図(見下げ図)と見上げ図がそれぞれ表す範囲は下図の通りになります。
【伏図(見下げ図)】

伏図はその階の柱、壁及び床、梁を1枚の図面に表記します。3階伏図と言ったら、3階の柱、壁及び3階の床、梁を表記します。
【見上げ図】

見上げ図はその階の柱、壁及び一つの上の階の床、梁を1枚の図面に表記します。3階見上げ図と言ったら、3階の柱、壁及び4階の床、梁を表記します。
施工図(コンクリート躯体図)に合わせ、構造図も見上げ形式が良い?
施工図(コンクリート躯体図)は見上げ図で作成されます。これは、どの工事現場でも同じです。施工図(コンクリート躯体図)が見上げ形式で作成される理由は一度にコンクリートを打設する範囲を1枚の図面に表した方が分かりやすいためです。
型枠や鉄筋を加工するのには柱及び梁のサイズ、納まりを把握する必要がありますが、これが別々の図面に表記されていたら、非常に分かりずらいです。
では構造図も見上げ形式で作成するのが良いのでしょうか?
伏図(見下げ図)、見上げ図の長所、短所
伏図(見下げ図)か、見上げ図かを決定するにあたり、それぞれの長所、短所を考えてみます。問題は上下階で建物形状が変わる場合です。
- 床下がりの範囲を考える場合→伏図(見下げ図)の勝ち
- マンションなど梁形が室内に出る建物で梁位置を考える場合→見上げ図の勝ち
- R階の表現→見上げ図はパラペットと下階壁が重なり、分かりづらく、伏図(見下げ図)の勝ち
- 施工図(コンクリート躯体図)の作成→見上げ図の勝ち
- 丘立ち柱(下階柱抜け)がある場合→伏図(見下げ図)は梁の応力状態が見えず、見上げ図の勝ち
それぞれ一長一短はありますが、見上げ図の方が分かりやすいと考えます。
構造図は見上げ図で書こう!
と言いつつ、私は伏図(見下げ図)で構造図を作成しています。理由は殆どの構造設計者が伏図(見下げ図)で構造図を作成しているからです。みんなが同じ形式で書いた方が間違う危険性が減るとのことです。
尚、略伏図(構造計画)は見上げ図で考え、作成します。これは見上げ図の方が力の流れが分かりやすいためです。
図面の表現方法を建築基準法施行規則または業界団体で基準を作り統一することを提案します!
図面の表現方法は設計者ごとに拘りもあるかと思います。しかし、自分の建築を表現するのは図面の表記方法ではなく、建築そのものです。