2021年06月06日

構造設計者は手計算が出来ないとダメか!?






  • 今の若い構造設計者は手計算が出来ない!

  • だから、若い構造設計者は仕事が出来ない。

  • 最初は構造計算プログラムを使うのではなく手計算で構造計算を覚えるべきだ!

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このような事を聞くことがあるが本当だろうか?

 手計算の経験が絶対に必要と言う人は主にベテランの構造設計者であろう。年齢だと50歳以上でしょうか。構造計算書内には今でも手計算による手書きの計算書部分があります。

手計算必要派の主張


 手計算をすることに力の流れ、地震に対する建物の応答が把握できる。全て、構造計算プログラムを使用するのでは、これが把握出来ない。
 もちろん、仕事で構造計算プログラムを使ってます。しかし、手計算が出来ないと構造計算プログラム解析結果の妥当性も判断出来ない。

 全てを手計算で構造設計をしろと言っているのではなく、最初は手計算で設計しないと構造設計しないと構造設計技術は修得出来ない。

 それに構造計算プログラムを使用するよりも速く構造計算が出来る部分もあります。手計算が出来ない構造設計者は理解が少なく、結局、仕事も遅い。あと、計算プログラム、EXCELなどのみに頼る人は検算、チェックが少なくなり、間違いも多くなる。

手計算、必ずしも不要派の主張


 計算書を手計算で、手書きで紙に書くなど時代遅れ。変更があった時に消しゴムで消して、書き直すとなると時間が掛かって効率が悪い。

 簡単な架構であれば手計算をすることも出来るでしょう。増分解析による保有耐力計算など複雑な計算は出来ない。結局、手計算で出来るのはレベルの低い計算のみです。それが出来て、何になる。

 構造設計を修得するために手計算で構造計算をすると多くの時間が掛かる。それよりも構造計算プログラムを使用して数をこなす方が速く、構造設計技術を修得できる。
 そして、構造計算プログラム解析結果を疑っては構造計算は成り立たない。





手計算必要派の反論


 構造計算プログラム解析結果は設計者が与えた仮定、条件による結果を算出しているだけであり、それが正しいかどうかは別である。

 その感覚は手計算で養われる。

 手計算で簡単な計算しか出来ないと言うのも間違いである。多くの構造計算仮定(解析条件)を与え過ぎているため、複雑になり、本質が見えなくなる。もっと、シンプルにし、妥当性を確認することで安全性が確認出来る。
 構造計算プログラム解析結果の妥当性を判断するには計算過程のチェックが必要であるが一貫計算プログラムだとこのチェックが疎かになる。手計算だと嫌でも確認することになる。
 それに紙に表現することで確実にチェック効果が上がる。

手計算、必ずしも不要派の反論


 結局は精神論。構造計算プログラムがなかった時代、自分達はこれだけ苦労したと言いたいだけ。
 構造計算仮定(解析条件)を詳細にすれば、より正しい答えに近づく。手計算では簡略した手法しか出来ない。それを正しい答えとするのが間違いである。

 技術の進歩を否定しては建築構造は進歩しない。

建築構造のかたちの判定


 判定はジャッジ6対4で手計算、必ずしも不要派の主張の勝ち。





 手計算必要派の構造解析結果に対する主張はまさにその通り。簡単な架構の手計算が出来ないでは構造設計は出来ません。そんなものは会社に入ってから修得するものではなく、学生時代に修得するものです。

 仕事として会社で行うのであれば、最初は手計算で構造設計などは不要と考えます。構造計算プログラムを使っても十分に構造設計は修得出来ます。
 計算過程のチェックは構造計算プログラムでも出来ます。このチェックは必ず、行わないとなりません。何処の何をチェックすれば良いかなどと思う人は手計算でも同じです。

 重要なのは構造計算の仮定、基準、力学などを理解することです。手計算で応力計算する事に時間をかけるより、この事を理解することに時間をかけた方が有益です。

 便利なツールは効率化のために使用すべきです!

 もちろん、検算・チェックは必須です。構造計算プログラムなどのツールは、その内容を理解して使用すべきです。手計算ですぐに確認できる簡易な計算は別として、計算過程が出力されないプログラムは使用する気になれません。結果に責任が持てないからです。

 チェックも紙でも画面上でも良いですが、間違っていないとの結果が重要です。間違っている事がある人は遣り方を考えるべきでしょう。
posted by 建築構造設計べんりねっと at 10:27| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム