では就職して、小さい建物でもいきなり一人で構造設計が出来るかと言うとそのような人は皆無。。。
これはどうなのだろうか。大学で建築構造系の学生は何を学ぶべきか、どうあるべきか考えてみる。

会社側が新入社員に期待すること
受け入れる側である会社、企業側としては早く戦力になってもらいたいと思います。
もちろん、会社、先輩社員が構造設計について教えますが、一から教えるのはしんどい。そのために建築構造系の学生を採用している。
この程度は理解しておいて欲しいと思うことを上げてみる。
- 初歩の構造力学への理解
- 構造設計で扱う荷重(固定荷重、積載荷重、地震力等)
- 応力計算
- 各種部材の断面計算(許容応力度)
- 保有水平耐力計算の概念
- 構造図面が読める
- 構造設計の流れ
しかし、どうだろうか。簡単な応力計算すら、出来ない新入社員も多い。図面も読めない、固定荷重、積載荷重も理解していない。各種材料の許容応力度も覚えていない。
これらを期待することは間違っているのだろうか。
建築構造系の新入社員が応力計算を出来ない理由
なぜ、建築構造系の新入社員が応力計算を出来ないかを考えてみる。もちろん、大学では習っている。
問題は継続しないことだと考える。だから、卒業するころには忘れてしまう。
大学では建築構造の授業だけではない。一般教養の授業もあり、建築科目でもデザイン、環境、建築史など様々なことを学ぶ必要があります。もちろん、構造設計者は構造だけを分かっていれば良いと言う事ではなく、建築に係わる様々なことを知っている必要があります。
そして、4年生、院生になると建築構造でも更に専門の分野に取り組むことなります。いわゆる研究です。
しかし、どうなのだろうか?構造設計の全体像を理解しないまま、ある分野の研究に取り組むことで成果が上がるのだろうか。
建築構造系の学生全員が将来、研究者になるわけでもない。
大学は何を学ぶところ?
そもそも、大学は何を学ぶところなのだろうか?人一倍、大学では遊び惚けていた私が言うのもなんだが。
ネットで調べると世の中にある多くの価値観のなかから、「何のために生きるか」、「これからどのように生きるか」という問いに対する答えを見つけるための場所と書かれている。
確かにそれも大切です。大学を選んだ時点で全員が将来を決めている訳ではなく、建築でも意匠か、構造か、設備か、施工管理かを学生時代に決めても良いと思います。
また、大学は「学問」(研究)をするところ、非常に基礎的な原理「思考の原点」を学ぶ場所と書かれています。大学は就職前の研修機関ではなく、学問(研究)をするところなのです。
それも大切でしょう。
一方、「大学の出口は就職であるが企業は学問には興味がない」と書いている人も居ます。これも確かにそうでしょう。
建築学科では「建築関連諸分野が今後求める専門家となる人材を養成」などとも書かれていますが、実状どうでしょうか。
アンマッチがあるようにも思えます。
建築構造の実務者を目指す学生に対して
建築構造の実務者を目指す学生に対して、大学で何を学ばせて欲しいかと独断でまとめてみる。
1.構造計算を続ける学習
構造設計は構造計算と言う手法を使用して、安全な建築を作ることなので、構造系の授業では応力計算・構造計算を行うとのプロセスを設け、構造計算をする癖をつけて欲しい。
2.建物の構造設計一式の実習
3年生で小さな建築物、構造物で良いので構造設計一式を行う実習を行って欲しい。その後、専門分野の研究を行う上で必ず、役に立つはず。
出来れば、実際に建築されるものだと更に良い。自分の構造設計したものが実際に建ち、それを見たときに感動があるはず。建築、構造設計への情熱が出てくるはずです。
3.考える、調べる、学ぶ力
仕事で構造設計を行うには、マニュアル通りに行えばよいと言う事では出来ない。常に、何年経っても、自分で考える、調べる、学ぶことが必要です。仕事を指示した際、「教科書はありますか?」などとの人材では務まらない。自分で考える、調べる、学ぶ力を身に着けて欲しい。