2021年03月27日

構造設計職、新入社員の皆さんへ

新入社員となりました皆様、ご就職おめでとうございます。
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 建築構造設計と言う職業を選んで頂いた事を大変嬉しく思っております。これから構造設計を仕事として行っていく皆さんへのアドセンスを送ります。




●構造力学ついて復習を!

 入社後、数日間は構造設計の実務ではなく、ビジネスマナーや会社、業務の概要などの研修を受けることになるのでしょう。覚える事がたくさんあって、大変かと思いますが、構造設計職の皆さんにまず、やって欲しいのは、構造力学の復習です。具体的には大学1年生で習った構造力学の教科書を見直し、完璧に理解して下さい。

 力学は構造設計の基本です。これを習得していないとこれからの仕事は出来ません。
 会社で先輩社員が構造設計を教えてくれると思いますが、やはり、構造設計の基礎となる構造力学を身に付けていない新入社員の面倒見る余裕はありません。しっかりと見直しておいて下さい。

建物をよく見るようにする

 図面上で見るだけでなく、実物を見ることは非常に重要です。
 会社で現場見学の機会を作ってくれる事もあるでしょうが、その時間だけでなく、多くの建物をよく見るように心掛けて下さい。
 有名な建築物を見に行くと言うことでなく、通勤途中、休日に出掛けた時でも建物を見ることはいくらでも出来ます。

 私達の専門である構造は建物が完成すると見えなくなってしまう部分がほとんどですが、鉄骨造であれば見える部分が多くあります。施工中の現場を除くことでも構造体を見ることは出来ます。どのような部材でどのような接合、架構になっているか注意してみるようにしましょう。

 また、私達、構造設計者は構造計算で安全性を確認すれば良いだけでなく、仕上げとの取合いを考え、構造躯体の納まりを決める必要があります。仕上げの種類、仕上げの納まりを見ることも構造設計の勉強になるのです。



資格取得を早めに!

 構造設計を行うには資格が必要です。構造設計一級建築士でないと小さい建物しか設計出来ないのです。そのためにはまず、一級建築士の取得です。昨年度より受験資格に実務経験が不要になり、すぐに受けられるようになりました。早めに取得するようにしましょう。
 構造設計について覚えること、学ぶべきことがたくさんあります。建築士の勉強にいつまでも時間を割いている暇はありません。
 はっきり言って、資格取得は難しくありません。その時に勉強したか、しないかです。つまり、構造設計をやる気があるのか、ないのかと言うことになるのです。

自分で考える、調べる癖をつける

 以下のリンク先に構造設計の新入社員におすすめの書籍を紹介しています。構造設計業務を行う上で最も良く読まれている書籍です。

令和3年度 構造設計新入社員必携!この5冊

 皆さんが入社する会社、事務所にも一冊ずつは必ずあるでしょう。しかし、新入社員のあなたが独占するのも気が引けると思います。コロナ禍、在宅で勤務する時は会社にある書籍を見れません。是非、ご自身で購入して下さい。

 これからは在宅勤務が続くのでしょう。会社で先輩社員が丁寧に教えてくれる環境が少なくなります。自分で調べる、考える、学ぶ癖を着けないと技術力は身に付けられない時代になるのです。





posted by 建築構造設計べんりねっと at 15:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2021年03月13日

木造軸組壁工法の構造プラモデル!

ネットで面白いものを見つけました。
『建築構造がよく分かる1/50建築模型 木造軸組模型』
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木造の軸組壁工法、いわゆる木造在来のプラモデルです。価格は5,880円 (税込)です。

Rakuten
 
Amazon


 プラッツと言うプラモデル・模型メーカーが製作、販売しているのですが、どうやら、総合資格が関与しているようです。二級建築士の設計図試験対策と言う事です。

 プラモデルと言うくらいだから、素材はプラスチックなのでしょう。柱、桁・胴差、筋交い、母屋、垂木その他が全て、単材になっているのでしょうか?
 スケールは1/50となっているので柱が105×105とすると2.1×2.1mmです。接合部はどのようになっているのだろうか?ほぞがあるのか?

 かなり、組立に手間がかかりそうだ。
 
 是非、鉄骨造、RC造とシリーズ化して欲しいものだ。RC造だとD10の鉄筋は1/50スケールだと0.2mm。フックなども正確に再現してもらいたい。



posted by 建築構造設計べんりねっと at 20:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 便利ツール

2021年03月04日

層間変形角とは│構造設計者が説明する居住性の話

層間変形角とは、ずばり、これです。


 層間変形角とは地震で建物が横に揺れた時の変位の角度です。

層間変形角@.png

 地震が起きた時、建物は上図のように斜めになります。この変位(揺れ幅)の高さに対する比が層間変形角であり、変位を高さで割った値の逆数で表します。分子は1とし、分母の数字が大きいほど、揺れにくいと言う事になります。
層間変形角A.png
 建物の強度(剛性)は階ごとで違っていますので層間変形角も階ごとに算出します。




層間変形角の基準


 層間変形角は建築基準法施行令第八十二条の二で「1/200(著しい損傷が生ずるおそれのない場合にあっては1/120)以内であること」となっています。

 地震時に建物が大きく揺れると転倒を起こしてしまいます。そこまでいかなくても、壁仕上げ材などが脱落する恐れがあるため、この規定があります。

 木造や変形に追従できる壁材とした鉄骨造は1/120まで緩和されています。木造の準耐火構造の場合は防火被覆材の脱落を防ぐために1/150以下となっています。

層間変形角は居住性を示す指標


 層間変形角は居住性にも関係します。層間変形角が大きい建物だと地震時や暴風時に大きく揺れ、恐怖心、不快感を感じます。

 一般に各構造の層間変形角や揺れにくさは下記となります。RC造(鉄筋コンクリート造)に対し、木造は8倍程度、鉄骨造は4、5倍程度揺れます。揺れに対する恐怖感は単純にこの比率とはなりませんが、揺れの感じ方は明らかに変わります。
層間変形角B.png
 このような話をすると木造は怖くて住めないのか?と言うとそうではありません。地震時、暴風時の揺れによる恐怖感は層間変形角ではなく、地表面からの絶対変位が関係します。

 木造2階建てと鉄骨5階建ての例を上げて、説明します。層間変形角は木造1/120、鉄骨造1/200、階高は各階 3mとします。この場合において、木造2階部分の絶対変位は25mm(3000÷120)です。
 一方、鉄骨5階部分は60mm(3000×4÷200)となります。つまり、鉄骨5階部分は木造2階部分の2.4倍揺れることになります。この揺れ幅の違いが恐怖感、不快感に影響します。

鉄骨造の中高層マンションの計画はナンセンス


 鉄骨造で5階を超えるマンション計画の相談を受けることがあります。絶対変位による居住性を考えた場合、どうでしょう?

 上記の検討で木造3階建ての3階部分は50mmとなり、鉄骨5階部分とほぼ同じ値です。木造3階建て住宅は世の中にたくさんあり、普通に住んでいられると言う事は地震時・暴風時の揺れが
我慢できる範囲なのでしょう。これが、鉄骨10階建てとなった場合は135mmとなり、木造3階建て部分の2.7倍です。どうでしょう?我慢できますでしょうか?

 ゆえに5階を超えるマンションは世の中には殆ど、存在しません。住宅・マンション販売サイトで探しても、まず、ありません。
 コストだけを考えて、鉄骨造で5階を超えるマンションの計画はナンセンスです。検討するのも時間の無駄でしょう。

 「鉄骨造で5階を超えるオフィスビルやホテルはあるじゃないか」と言う人も居ると思いますが、その建物に居る時間が短いため、我慢ができるのです。長い時間を過ごす住宅では許容できません。

posted by 建築構造設計べんりねっと at 07:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 構造設計メモ