2019年10月25日

構造の経済設計「高強度鉄筋の使用方法」

 柱や梁の断面算定で本数を増やすか、強度を上げるか、どちらにすべきかと考えることがあるかと思います。ここでは経済的な高強度鉄筋の使用方法について、説明します。

1.高強度フープ
 柱や大梁のせん断補強に高強度せん断補強筋(KSS785)を使用する事は良くある事と思いますが、材料単価は220,000円/tとSD295A(70,000円/t)に対し、3倍以上の金額となります。材工ではそれぞれ、271,000円/t、121,000円/tです。
 価格比2.24倍に対し、材料強度の比は2倍(590/295)ですのでコスト的には不利な材料です。

 以下に高強度フープを使用した場合とSD295Aを使用した場合の柱の短期許容せん断耐力、金額の比較を示します。
高強度フープ.png

 ケース@は片方向が耐震壁付きを想定した場合、ケースAは両方向とも耐震壁無しとした場合、SD295Aにおいて、Pwを上限まで増やした場合と高強度フープを使用し、同等のせん断耐力とした場合の比較です。
 ケース@では1.34倍、ケースAでは1.12倍の金額差があります。

 つまり、SD295Aで本数を増やして対応出来る範囲では、高強度フープは使用しない方が経済的なのです。梁についても同様です。

 尚、中子筋を増やすために主筋本数を増やすと逆転してしまう場合があるので注意が必要です。(D25:486円/m・本、D29:620円/m・本)また、せん断補強筋にSD345を使用する方法も考えられますが、現場での管理が煩雑になるので避けた方が良いでしょう。






2.柱梁の主筋
 柱、梁の主筋は通常、D22〜D32を使用し、D25以下はSD345、D29以上はSD390を使用します。この使い分けについて、説明します。
 材料単価はSD345:71,000円/t、SD390:72,000円です。強度の差は1.13倍(390/345)ですのでコストの上昇分以上に強度が上昇し、コスト的には有利な材料です。
 ただし、1本あたりの強度が大きくなるので、部材耐力を細かく調整する事が出来なくなります。では、どこから、切り替えるべきか。以下にD25(SD345)とD29(SD390)の鉄筋本数ごとの引張強度、単価をまとめました。
柱梁主筋.png

 7-D25と5-D29など、同じ色を付けた部分を比較してみて下さい。D29(SD390)の方が強度は上がり、コストが下がります。鉄筋本数が4本以下となると梁でカットオフにより、本数を減らす効果が減りますので、D25からD29に切り替えるのはD25で鉄筋本数が7本以上となる場合が経済的です。

 鉄筋本数を減らすと圧接コストも下がるでの更に有利になります。

≪まとめ≫
●高強度せん断補強筋は、SD295Aで本数を増やし、対応できない範囲では使用しない。
●柱、梁の主筋は7-D25以上となる場合は、D29(SD390)を使用する。





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2019年10月23日

構造の経済設計「配筋の増やし方を知る」

 次に簡単な構造の経済設計手法は「配筋の増やし方」です。

 柱や梁の主筋は径と本数の組み合わせになり、検定比を見ながら、1本づつ調整が出来ますので大きく変わることはありませんが、ピッチで指定するスラブや梁スターラップ等はその増やし方により、数量に与える影響は少なくありません。なんとなく決めている組合せをコストを算定してみれば、経済的な選定が出来ます。

1.スラブ配筋の組合せ、増し方

 スラブ配筋を決定するにあたり、クリティカルになるのは主筋方向の上端筋です。下端筋は計算外で決定されている事が多いと思います。また、施工性のために上下の配筋は同じピッチか倍ピッチとします。

 以下に各スラブ上端筋の鉄筋量、下端筋との組合せ、1uの金額の一覧を示します。尚、複筋比は0.40%以上となるようにしています。また、施工時のスラブ筋の乱れ防止のために最低配筋はD10,D13@200としています。
スラブ.png

 例えば、上端筋がD13@100となる場合、下端筋をD13とし倍ピッチ、D10で同ピッチが考えられますが、D13倍ピッチの方がコスト的に有利になります。また、D10,D13@125、はD10,D13@100の配筋は下端筋との組合せを考えると上端筋をもう1ランク上がてしまった方が経済的になります。
 その他、上端筋を125ピッチ、下端筋を倍の250ピッチとする組合せも使用しましょう。施工時にスラブの上を歩く時は主筋方向上端筋の上に乗るのが現場の基本です。下端筋はスラブ筋の施工時の乱れには影響しません。
 また、通常はD13@200で足りないとD13@150に上げるかと思いますが、鉄筋量ではその間にD10,D13@150があります。D13@150とは、175円/uの差がありますので積極的に使用しましょう。配筋の手間が気になりますが、D10,D13@200は普通に行いますのでそれほど手間は増えません。鉄筋屋さんも慣れたものです。

 以上をまとめると上記表の灰色の部分を除いて、順番に増やしていくと経済的なスラブ筋の選定が出来ます。

 尚、配力筋も最低配筋をD10@200ではなく、D10@250とすると1u当り、136円の差が出ます。コスト比較例の建物全体では577,722円の差が出ます。

136円/u×42.0m×14.5m×7層 = 577,722円

 こちらもスラブ筋の乱れを気にする方も居るかと思いますが、上で説明しましたように施工時に乗るのは上端筋ですし、養生のために通路にはメッシュが引いてあります。特に問題はありません。




2.梁スターラップの増やし方

 次に梁スターラップの増やし方を考えてみましょう。通常は200ピッチ、150ピッチ、125ピッチ、100ピッチと増やし、100ピッチで足りない場合は3-D13@100、4-D13@100と中子筋を増やしていく方が多いと思います。

 ここでスターラップの加工形状を見てみましょう。せん断補強として機能するのは縦方向の鉄筋です。上下の横方向の鉄筋は閉鎖型とするためのせん断補強として機能しない部分になりますが、スターラップのピッチを増やすとこの機能しない部分の鉄筋量が増えます。中子筋は全てが機能する鉄筋です。
中子.png


 以下にスターラップの組み合わせとせん断補強筋量(cu)、1m当りの金額を示します。金額は梁断面を 550×800、地中梁を想定した550×2000で比較しました。
STP.png

 せん断補強筋量としては、2-D13@100、3-D13@150、4-D13@100も同じ25.40cuです。しかし、上下部分の鉄筋量の差があるのでコスト的には4-D13@100が一番有利になり、1m当り、609円の差が出ます。コスト比較例の建物でX方向の梁に対して、考えると約30万円の差が出る事になります。
609円/m×42.0m×2×6層 = 307,036円

 以上をまとめると上記表の灰色の部分を除いて、順番に増やしていくと経済的な梁スターラップの選定が出来ます。
 尚、梁せいが大きくなり、幅とせいの比が2倍以上となると逆転する部分がありますので注意して下さい。

≪まとめ≫
●スラブ配筋はD13@200の次はD10,D13@150を使用する。
●スラブの主筋方向下端筋及び配力筋は250ピッチを使用する。
●梁スターラップは、ピッチを増やす前に中子筋を増やす。







さて、まずは簡単な経済設計手法から、スタートしました。特別な知識、技術も必要なく、こんな簡単な事で100〜200万円のコストを下げる事が出来ます。手間もかかりません。是非、実施すべきです。
大切なのは、どちらを採用するかと考えた時になんとなくではなく、コスト比較を行う事です。

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2019年10月20日

構造の経済設計「最低配筋、計算外配筋の決定方法」

 構造の経済設計手法の一つとして、最も初歩的な手法は「最低配筋、計算外配筋の決定方法」です。
鉄筋コンクリート造の各部材については日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準(RC規準)」で最低配筋が定められています。
この“最低配筋、計算外配筋”をなんとなく決めていませんか?本当に必要最低限の配筋となっていますか?

各部材の最低配筋を見直してみましょう。




 尚、コスト差が判りやすいように以下の建物を想定し、試算してみます。
≪コスト比較例≫
構 造 :鉄筋コンクリート造
階 数 :6階建て
用 途 :共同住宅
階 高 :平均 3.0m
床面積 :約 3,700u
総建設費:9億3,000万円
コスト比較プラン.png

1.壁配筋:最低配筋 Pw=0.25%以上
 RC規準では壁のせん断補強筋比 Pw=0.25%以上となっています。壁厚150mmの場合、D10@250ダブル配筋でPwは0.379%になります。
 なんとなく、D10@200としたり、壁厚が上がるにつれ、配筋を増やしていませんか?以下、各壁厚の最低配筋と各配筋の金額の一覧を示します。
 壁配筋.png

 壁厚200mmでも、D10@250ダブル配筋でPwは、0.25%以上となります。マンションでは遮音性の問題で構造耐力上で必要な壁厚以上となっている事が多いので、最低配筋で足りる事も多くあります。

 コストの比較をしてみましょう。D10@250とD10@200では1u当り、271円の差が出ます。コスト比較例の建物でY方向を全て、耐震壁とした場合、約30万円の差が出る事になります。
271円/u×11m×(3.00-0.60)m×7枚×6階 = 300,529円
D10@150で約80万円、D13@200で約150万円もの差になります。

 尚、RC規準ではチドリ配筋とした場合、300ピッチ以上ですので、ここまで許容すれば更にコストは下がります。

2.梁配筋:主筋0.80%以上、スターラップ0.20%以上

 梁主筋については、柱梁接合部の検討や保有水平耐力検討の崩壊形に影響するので不要に増やす人は少ないでしょう。また、最低配筋で決まる事も少ないですが、計算外で決定する耐震壁付き梁に着目しましょう。

@主筋
 以下に梁断面ごとの最低配筋と金額の一覧を示します。
 耐震壁梁主筋.png

 3-D19と3-D22では、1m当り578円、3-D19と3-D25では1,266円、3-D22と3-D25では688円の差が出ます。尚、3-D19で不足する場合に3-D22ではなく、4-D19とすると鉄筋量は減りますが、圧節数が増える事で金額は逆転してしまいます。
 建物全体でコスト比較してみますと以下になります。
・D19とD22の差
 578円/u×11m×7本×6階 = 267,165円
・D19とD25の差
 1,266円/u×11m×7本×6階 = 585,058円

 尚、耐震壁付き梁の梁せいは取り付く小梁せいに影響しますが、梁せいが大きくなると不要に鉄筋量が増えてしまう事があるので注意が必要です。特に鉄筋量が切り替わるせいの変更は注意しましょう。

Aスターラップ
 以下に梁幅ごとのスターラップの最低配筋と金額の一覧を示します。
 STP.png

 D10@200で足りるものをなんとなく、D10@150とすると1m当り103円、D13@200とすると261円の差が出ます。建物全体では47,479円、120,656円の差になります。少ないように思えますが、性能の差は出ない部分なので、このコストには拘るべきです。経済設計とするには積み重ねが重要です。

 尚、梁幅400mm以上となるとD10@200ではPwが0.20%を下回るため、配筋を上げなければなりませんが、D13を使用するよりもD10でピッチを細かくした方がコスト的には有利です。

≪まとめ≫
●計算外配筋は、なんとなくではなく、必要最低限で決定する。
●耐震壁の配筋は、D10@250から、スタートする。



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