2019年10月30日

構造の経済設計「RC造は型枠数量を減らすこと」

RC造構造躯体に占める各工事の金額を概算で算定すると以下になります。
概算数量は単位面積当たりの歩掛を使用します。




●RC造のコスト比
コンクリート:0.89×14,920=13,280円/u
鉄筋:0.12×121,000=14,520円/u
型枠:4.95×4,900=24,260円/u

合計:52,060円/u(172,320円/坪)

以上のように上部構造躯体で最もコストが掛かっているのが型枠です。1/2弱が型枠工事です。つまり、構造の経済設計、コストダウンをするには型枠数量を減らす事が最も効果的です。これは各部材単位で考えた場合も同じです。
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まず、この事を頭に入れておきましょう。各部材の経済設計手法は別の所で説明します。

では、型枠はどの部分が多いかと言うとずばり、壁です。

壁が取り付いている柱、大梁だと断面形状を変えても型枠数量は変わりません。柱や大梁の断面を絞るよりもRCの壁を無くしてしまう方が経済設計には効果的です。極端に言うと外壁を全て、サッシ、内壁を全て、乾式とすると構造のコストは大幅に下がります。但し、サッシの価格はRC壁よりも高いので、建物全体で考えるとコストは上がってしまいます。また、構造で必要な耐震壁もあるでしょう。

結論としては、外壁と構造で必要な耐震壁以外は全て、乾式壁とする事が最も経済的な計画です。計画を見て、乾式に出来るRC壁があるようでしたら、積極的に乾式にする提案をしましょう。
また、階高が上がるような計画を行うと壁型枠が大幅に増加します。階高は極力、抑える計画とする事が重要です。階高が上がると躯体以上に高い壁の仕上げも増え、更にコストがあがります。

次に型枠が多いのはスラブですが、スラブ型枠は床面積で決まるので減らすことは出来ません。

その他、RCから変えられるものとしては、手摺りなどがあります。

こう考えると壁式構造はコスト的には効果が良くない構造形式だと言う事も分かると思います。

尚、補足ですが、この事は鉄骨造でも同じです。外壁サイディングの場合は壁下地のC形鋼がかなりの数量になります。非構造部分をなくした方がコストは下がります。



≪まとめ≫
●上部構造躯体で最もコストが掛かっているのが型枠
●構造コストを下げるにはRC壁を減らすのが一番効果的



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posted by 建築構造設計べんりねっと at 08:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済設計手法

2019年10月28日

構造の経済設計「間違った経済設計手法」

一般に良く聞く構造の経済設計手法について、考えてみます。
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『躯体断面は揃えた方が型枠の転用が出来、コストが下がる?』
答えは×、間違いです。

柱、梁の断面は各階、同じ断面とする方が数量は上がっても、型枠の転用が出来、単価が安くなるのでコストが下がると言う人が居ます。確かに型枠が転用出来れば、型枠大工さんは加工も少なく楽です。
ですが、実際のところは単価は下がりません。型枠工事費は、1u当たりの単価の市場動向が他の工事費、材料と同じように出されています。
建設ナビ https://www.kensetu-navi.com/

もちろん、建物形状や技量によって、各会社の型枠工事費は変わりますが、この市場単価が基準となってしまいます。また、取引先ごとに単価もある程度決まっています。

誰だって、手間が通常よりも多い事をアピールして、単価を上げたいものです。競合になっていれば別ですが、敢えて、単価を下げる会社はありません。

コストは下がりません。

構造設計の設計料金もそうですよね。大変さをアピールして、設計料金を上げようとしますよね。

また、階数が少ないと型枠の転用もたいして出来ません。大工さんも断面が小さくなれば、同じ型枠をずらして、建て込むなどの工夫をします。手間もたいして変わりません。

各階で断面を変えた図面で見積りを取り、断面を揃えたら、単価を下げられるかと値交渉すれば下がるケースもありますが、構造計算をやり直す事になり、そこまでは出来ません。


『柱を減らすとコストが下がる?』
答えは×。間違いです。

「柱を減らすと杭が少なくなる。だから、安い。」と考える人が居ると思いますが、逆になる事が多いです。まず、柱を減らしても基本的には建物の重量は変わりませんので基礎、杭に対する負担は減りません。柱を減らしてスパンを大きくすると柱に係る数量以上に梁が大きくなり、重量が増えます。場合によっては梁が大きくなった分、階高が上がります。むしろ、建物重量は増えます。上部構造のコストは確実に上がります。
杭本数は減るかも知れませんが、杭径が大きくなるか、杭配置を分散させただけで安くはなりません。
また、地中梁には杭頭曲げモーメントが大きな影響を与えますが、杭箇所を集中させると地中梁の負担が増え、断面が大きくなります。それにより、根切り、山留が増える事がもっと大きなコスト増になります。
柱が少なくなると意匠屋さんは喜び、一見、コストが下がるようですが、逆です。

『部材符号は全て別符号とすれば、各部で必要最低限の断面、配筋が選定出来、経済出来る?』
答えは×、間違いです。

断面検定を行う部材が増え、頑張って感がありますが、このような設計をしていてもコストは下がりません。むしろ、上がります。

例えば、連続する大梁で柱の左右で主筋本数を変えても、引き通して、定着させる事になるので対して、数量は変わりません。また、全ての部材に別符号を付けても、結局、ほとんど同じ配筋になっていると言う事も多くあります。

何よりもこのような設計をする人は、応力をチェックする、調整するとの構造設計に必要な作業を放棄しているのです。一貫構造計算プログラムの解析結果で部材がNGの場合、配筋、断面を増やすだけが、OKにする方法ではありません。架構モデルや部材剛性を調整して、部材を納めるのが経済的な設計にもなるのです。
このような事をしていると不経済になるだけならまだしも、モデル化のミスも発見出来ません。

確実に増えているのは、図面の枚数、つまり、構造設計料金でしょう。


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posted by 建築構造設計べんりねっと at 21:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済設計手法

2019年10月26日

「さくら構造インターンセミナー」動画を見て思う。構造設計事務所は人材を大手に売り込む事業をしたらいい

YouTubeでさくら構造のインターンセミナーがアップされています。

田中社長が構造設計業界について、語っています。さくら構造の内部の事については私は判りませんが、構造設計業界、各業種(構造設計事務所、総合設計事務所、ゼネコン、ハウスメーカー)についての実状はまさにその通りと思います。



・総合設計事務所では構造設計の部署は少人数。
・ハウスメーカー、中小ゼネコンでは育成環境がない。中途社員に頼らざるを得ない。
・審査機関も中途社員が中心。

なぜ、これらの会社で育成環境がないと言うとコスト(経費)を考え、構造設計は外注が中心であり、自ら設計する機会が皆無だからです。

業務は協力構造設計事務所への発注、構造設計内容のチェック。

ですが、自分で構造設計が出来るスキルを修得していないのに他者の設計をチェック出来るわけがありません。決められた項目について、チェックリストに従い、確認するだけです。大きな会社ほど、業務効率化に対する取り組みが進み、チェックリストのようなものが充実されます。工学的判断、技術力を養うよりもこのようなものを作る事が業務として、優先されるのです。

若手技術者もチェックリストがないと何も出来なくなるのです。むしろ、チェックリスト、マニュアルを作って下さいとの要求をするようになっています。



構造設計業界に関らず、どこの会社も人材育成は重要な課題です。経営課題です。人材育成が出来ない会社は衰退していくのは明らかです。
ですが、ハウスメーカー、中小ゼネコンでは構造設計者の人材育成が出来ない。若手を育成しようにも働き方改革とかで十分な時間も確保できない。

このような実状を考えると構造設計技術を身に付けるには構造専業設計事務所が一番の近道。と言うか、他では、かなり困難と言わざるを得ません。働き方改革とは無関係な組織で。

いっその事、構造設計事務所は人材を育成し、大手に高値で送り込むことを事業にしたらいい。


posted by 建築構造設計べんりねっと at 22:20| Comment(1) | TrackBack(0) | コラム