2026年05月26日

建設費高騰、構造設計者にはチャンスです。

 日刊建設工業新聞で以下の記事があった。5月21日、不動産協会総会後の懇親会でのデベロッパー各社のトップからの声である。
 https://www.decn.co.jp/?p=184504




 意見を以下の要約と私の感想を記載します。
  • 中東情勢の影響で不動産業界は先行きの不透明感が増している。
  • 建築費はこの20年で5 倍になった。更にこの2 年ほどの急騰は次元が異なる。
  • 不動産業界は10年、20年先を見て、リスクを取りながら事業を進めている。当初の想定を超えて工期が延びたり、事業費が増えたりすることに納得が得られにくくなっている。

  • ⇒誰の納得ですか?自分達が納得しないだけでは。

    物価上昇.jpg
     この状況に対し、「受注者(ゼネコン)に求めるだけでは現状の打開につながらず、発注者(デベロッパー)も協力・協働しながら解決策を探りたい。」として、ゼネコンへの以下の要望がありました。

  • ゼネコンにテクノロジーを生かした建設生産の革新、生産性向上の努力に期待したいが、その成果が見えにくい。
  • ⇒建設費が高騰してるのはゼネコンの努力が足りないと言いたいのでしょうか。
  • ゼネコンらが提示する工事価格に積算上の根拠を求める声は強まっている。
  • ⇒ゼネコンの提示する金額は根拠が不明?デベロッパー側は自分達の利益額を含めた根拠ある金額をクライアントに開示できるのでしょうか?
  • 建設業の担い手である末端まで賃金が行き渡り、処遇が良くなることを望んでいる。
  • ⇒ゼネコンだけが不当に儲けているのではと言いたいのでしょうか?

     そして、「契約変更の適切な協議を促す改正建設業法の規定も念頭に受発注者間で変更の協議はしている。ただし、協議のテーブルに着いて以降の「出口」をどう見いだすかは明確になっていない。こうした受発注者それぞれの利害に直結する課題について、団体間で認識を擦り合わせ、短期的に成果を得たい。




     数年前に原材料費の高騰が始まりました。ゼネコンも受注から工事、引渡しまでの間の原価アップのリスクを背負っています。物価に連動し、発注者に増額を求めるスライド条項の議論もありましたが契約を盾に応じなかったのはデベロッパー側でした。利益を大きく圧迫することも多くありました。
     そして、新規受注は原材料費の高騰に合わせた見積もり提示となっています。

     もう少し前の東京オリンピックの頃、ゼネコン各社は消化しきれない程の仕事があり、選別受注を行っていました。しかし、その前は各社の叩き合いによる不景気に苦しんでいました。その経験もあり、無理な受注は避けるようになっています。

     確かに建設費に限らず、原材料費の高騰以上に値上がっている商品は多数あると感じています。これは値上げ技出来なかった長いデフレ時代が過ぎ、値上げしても売れると分かった販売側の都合と思います。
    デベロッパー側の円安の恩恵を受けている外国人に高値で売っているので同じではないでしょうか。

     さて、ここからは建設業、構造設計者へのアドバイスです。売上、利益は上がっても物価上昇以上でないと実質マイナスです。販売価格は上げられます。これは原価に拘らなくてよいと考えるのではなく、原価を抑えることが出来れば利益はより大きく上がります。今までのVEは受注のためでしたが、今後のVEは自らの利益をより増やすために行えます。
     構造設計においてもコストを抑える設計が出来る設計者は優遇されます。

     以下を参考にして、今まで以上に経済設計に取り組みましょう。

    建築構造の経済設計│経済性(コスト)は建築構造の重要な性能
    https://arc-structure.sakura.ne.jp/cost01.htm




    posted by 建築構造設計べんりねっと at 05:38| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム

    2026年05月11日

    土の間隙比とは

     地盤の沈下計算を行う時に間隙比と言う計数を使用します。この間隙比について、解説します。




     土は土粒子、水、空気にて構成されています。
    土の構成.png それぞれの比重は土粒子2.0程度、水1.0、空気0です。地下水位以下の比重1.6の土の場合、土粒子の体積が60、水が40となっています。
    (2.0×60+1.0×40)/(60+40)=1.6



     間隙比とは土粒子の体積Vsに対する間隙(水、空気)の体積Vvの比率です。
     間隙比e = 間隙の体積Vν/土粒子の体積Vs

     上記の比重1.6の土の事例ですと間隙比は0.67(=40/60)となります。



     圧密沈下とは土に荷重が作用し、間隙水が抜け、体積が減少する現象です。事例の土にある荷重が作用し、間隙水の体積が30になりました。この時の間隙比は0.5(=30/60)です。合計の体積は90(=60+30)ですので10%減少することになります。
     これに層厚Hを掛ければ、その層の沈下量になります。この計算を間隙比を用いると下記の式になります。
    elog.png
     これを事例の土の当てはめると
    (0.67-0.50)/(1+0.67)×H=0.1(10%)×Hになります。

     ある荷重に対し、間隙比がどの程度変化するのかは圧密試験にて測定します。結果は下図のように対数のグラフとします。作用する荷重ごとのグラフから間隙比を読み取り、計算します。

     土も理論上は降伏点を有します。しかし、鋼材などと違い、鋼材点が明確でないので対数を取ることで、その変化点を分かりやすくするのです。この降伏点を圧密沈下の場合は圧密降伏応力と呼びます。
     初期(荷重作用前)の間隙比と圧密降伏応力時の間隙比を直線で結び、その角度をCcと言う圧密係数に設定すると下記の式で圧密沈下量を計算することか出来ます。
    cc.png
     logによるややこしい式ですが、Ccを求めるにあたり、対数を取ってるのでlogが必要になるのです。

     間隙比と似たような係数で含水率があります。含水率は土粒子の重量Wsに対する水の重量Wwの比率です。
     含水率(%)= 土粒子の重量Ws/水の重量Ww✕100

     上記の比重1.6の事例ですと含水率は33%となります。
     (1.0×40)/(2.0×60)×100=33%

     軟弱な地盤だと下記のように含水率が100%を越えることかあります。
     (1.0×70)/(2.0×30)×100=117%
     この事例では70%が水であることになります。
     尚、圧密係数Ccと含水率Wlの関係式として、Cc=0.009×(Wl-10)がありますが、これはあくまで参考値、一つの事例とのものです。正確には圧密試験の結果によります。

     沈下量を求めるのは非常に難しいことですが、圧密沈下のメカニズムを考えると以下となります。
     「水が少ない土は圧密沈下が少ない。→水が少ないと比重が大きくなる。→比重が大きい土は強い」





     

    posted by 建築構造設計べんりねっと at 21:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 構造設計メモ

    2026年04月18日

    指摘の数で建築確認、適判の手数料を決めたらどうか

     週刊ダイヤモンドにJ建築センターの記事があった。この中で手戻りによる社員の負担を軽減するために指摘ゼロを推進とあった。具体的な取組みは分からないが不備があっても指摘しないと言うことではないだろう。
    建築確認、構造適判で指摘があると修正したものを確認する手間が掛かる。手間とは社員に掛かる経費であり、審査機関の利益や審査手数料にも影響する。
    IMG_0067.png

     審査でどのくらいの指摘が発生するかは申請者側の問題が大半であると思う。十分なチェックもせずに申請し、チェックするのが審査機関の仕事と思ってる設計者も居る。審査は法律(建築基準法および関係規程)に基づいて行われ、審査図書も法律(施行規則)で定められいるが、建築基準法関係規程を理解していない設計者も居る。また、事前審査と言う任意の取組みが行われていることも審査者側が「指摘があったら直せば良い」と思い、チェックが甘くなる要因の一つだと考える。
     指摘が多く、増えた審査の手間が全体の審査手数料の増加となる。




     そこで指摘の数によって、申請手数料を決めるのはどうだろうか。指摘内容の正当性について、審査機関と審査者で揉めることになるだろうか。明らかな不整合や明らかな建築基準法関係規程への不適合であれば問題ないが構造モデルや設計条件の妥当性については判断が難しいこともある。
     では審査手数料のベースを予め上げて、指摘ゼロであったら、20%オフなどと減額するのはどうだろうか。設計の精度は向上しないだろうか。

     申請手数料より重要な問題は設計の品質である。建築確認審査は全てをチェックし、設計に対しては責任を持つものではない。指摘が多い設計者は必ず、他に不備がある。


    posted by 建築構造設計べんりねっと at 18:27| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム